14、信じる心
「何だろう?」
「分からないが、この下におそろしいものがいることはたしかだ」
ザーロックは首をかしげながら、石版と下に続く階段を見た。彼は石版に書いてある文字を読んだ。
この階段は山の中心へ行けるたった一つの道なり
力なき者、知恵なき者は帰るべし
階段をおりた先に試練と宝待ちかまえる
「でも、その先に宝があることもたしかだわ」
「ううむ。伝説で聞いたことがある。どこかの山の中心に誰も知らない宝が眠っている、というものだが……まさか、この山なのか?」
「石版の言葉から見ても、間違いなさそうね」
「でも、宝を守るボスが必ずいるナンよ? こっちが死ぬかも知れないナン」
オレは話に参加していなかった。まわりの景色に夢中だったからだ。
いちばん高い、山のてっぺんから下を見下ろす感覚は、ここでしか味わえないはずだ。
本当にすごい……。ここからヘーレゴニー[この物語の冒険の舞台となっている国のこと]全体を見ることができる。オレはあまり地理を知らないから、故郷であるウルベーンとオレたちの力で平和になったターナグの町、そして秘境、ブラット・ワールドを見てみる。ああ、ウルベーン領地の近くにこんなにすばらしい場所があったとは。機会があったら、また来てみようか? 宝を手に入れたら……
「おいソレイユ、なにぼーっとしてるんだ?」
おっと、くだらない事を考えすぎて、口元がだらしなくゆるんでいたらしい。オレはその場をとりつくろうように、にやっと笑った。
「お前がバカしてる間に、ここで少し食ってから中心へ向かおう、という事になったぞ」
「ん? 中心ってどこだ?」
「ソレイユ……。本当に何も聞いてなかったんだな」
「みんな、ちょっと来てくれナン!」
見ると、ナオが興奮した様子で手をふっている。その手には紙がにぎられていた。
「中心部の地図みたいナン、これ。ほら、みんな見るナンよ!」
どれどれ。オレやみんなは地図をのぞきこむ。
「こ、これは、中心部の地図じゃないか!」
「かなり部屋があるな……」
「部屋ごとに名前がついていて、分かりやすいわ。目的地は『財宝の眠りし部屋』のようね」
「お、おい。みんな、そこまでどうやって行くんだよ。だから、確実に進むことができる『宝道』とかに行かないか?」
オレの言葉にザーロックがうなずく。
「たしかに。じゃあ、まず最初に『宝道』に行く。その途中、『?』と書いてある部屋の謎も考えよう」
ふとその時、オレにある考えがひらめいた。
「あのさ、『宝道』はあとまわしにして、『謎解きの近道』って所に行ってみないか? オレ、そこが一番におうんだけど」
「ううむ。そう考えれば、この地図は謎だらけだからな。財宝を手に入れる近道になるかも知れないな」
「しかし、こんなに広大な場所があったなんて、驚きだな、ナオ?」
「ボクは、部屋ごとに名前がついてるのが気になるナン。要注意モンスターってのもあるナンし……。みんな、財宝を手に入れるために、命をかけてまで中に行くのかナン?」
すると、ソロイが口を開く。
「ナオ、お前の言う通りかも知れない。だけどな、今までの苦労はどうなる。こんなところで危険だから山を下りよう、ていう事になっていたら、オレたちは最初っから山なんて登らなかったさ。少なくとも、オレは絶対に宝を手に入れるまで山を下りないぞ」
「悪いがナオ、私も今さら後戻りはしたくない」
「私も、この山の秘密を知るために、何時間もかけてここまで来ました。死ぬかも知れないけど、私も戻りたくないわ」
そして、まだ意見していないオレをみんながにらみつける。
「オレも戻らないぞ、ナオ。山を登る事で、オレはいろんな経験できたんだ。みんなに出会えたし、町を救うこともできた。変な悪魔につかまったり、ガキに殺されかけたりもした。これだけ苦労したけど、最後にみんな死んじゃいました、なんて結末が通用すると思ってんのかよ。オレは、自分を信じて突き進む。ただ、それだけだ」
ここまで言えば、充分だろ。ナオは、降参したように言う。
「あー、分かった、分かったナンよ。みんなが行くなら、ボクも行くナン」
ナオが、むりやり言ったように見えたのは気のせいだろうか。ザーロックがみんなに言う。
「よし。みんな、必ず生きて帰ってくるんだ。あと、全員信じる心を忘れるな。そうすれば、いい結末が待っているはずだ」
こうしてオレたちは、山の中心部へと足を踏み入れた。




