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【黒歴史】ジュエル・ハンターズ ~八つの宝石~  作者: 水野 洸也
第二章 運命、選ばれし存在
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10、味方軍スパイの活躍(2)

「さあ、ここの下が……」


 アジトか。ナオの証言通り、北を見ると地平線ギリギリのところにまっ赤な陸が広がっていた。そこだけ空が黒く、時折ときおり雷が落ちているようだ。


「すごいな、ブラット・ワールドってのは」


 ソロイは頭をかきむしってオレに言う。


「ああ、お前はいいよなぁ。もうすぐアジトに入るのに、そんなのんきな事を考えられるんだから」

「そうだった。もうすぐ死を覚悟して戦わなきゃいけないんだ」

「そのブラット・ワールドの伝説がまたおもしろいんだが、話はあとにする事にしよう。ナオ? アジトの入口を開けてくれ」


 ザーロックの言葉にナオはうなずく。サリィはすでに呪文を唱えている。そうか、入口を開けた瞬間に部下が手厚いもてなしをするかも知れないからな。ナオは始動語を言う。


「悪の集団の部下、今戻った。入口を開けろ」


 すると「入れ」という声がして、バタンと音とともに入口が開いた。約束でもしてたかのように、聞こえてくる足音と声。


「殺せ! ボスの命令だ!」

「こいつらを殺せば、金貨はいただきだ!」


 ちくしょう。数々の声は、オレの勇気を吸い取っているようだ。オレは後ろに下がろうとした。サリィの呪文が聞こえなければ、逃げ出していたところだった。


「ボンバーショット!」


 すると、サリィの手に丸い球体が赤い光を発しながら浮かんでいた。そして、彼女は入口にそれを投げつけた。ドカーン。


「ぎゃぁぁー!」

「ぐわー!」


 やったぜ! オレの見た限りでは、三十人ほどがこの爆発にやられた。オレたちは急いで、しかししんちょうに、アジトの中へと入る。


 そーっと足をしのばせながら下へと進んで行く。十分ほど進むと、やけに大きい部屋があった。


「ボスのいる部屋ナンね」


 そうか。室内から出てくる威圧感は強大で、思わず後ずさりしてしまった。ザーロックが言う。


「ボスがいる事は確実なんだが、手下もいるだろうか」


 それにサリィが答える。


「ええ、おそらくね。下りてくる間にも部屋はたくさんあったけれど、音は全く聞こえなかったわ。でも、この部屋の中で話している声が聞こえてくる」


 へぇ。オレも耳はいい方だけど、聞こえてくる声はとうてい確認できなかった。ソロイは扉を開ける。ギギー。


 それは、思わず目をおおいたくなるような光景だった。


 おおよそ百人の人員が手に剣を持って、オレたちをにらみつけている。いつでも動き出せそうな状況だが、なぜか襲いかかってこない。目をこらして手下達を見てみると、武器を持たずに手をこっちに向けているやつもいる。おそらく魔術師だろう。着ているローブを見ても、やはりそうらしい。


 百人を超える人間の後ろには、人間とは思えないでかさの人間が、こっちをギロッとにらみつけている。かなりヤバそうだぞ、ナオ? オレたちは武器を一斉に抜いた。ライジング(ライジングソードの略だ)は、ビリビリさせて動けなくしてやる、と言わんばかりに電撃が流れている。


 後ろの大男が話し始める。


「ふん。約束通り、仲間を連れてきたか、ナオ。オレと戦う前に、まず実力を見せてもらおう。オレの部下百十二人と相手になってくれ。こいつらは今、血に飢えているから、気をぬいていると、死ぬからな。分かったら、せいぜいあがくんだな!」


 その言葉が合図なのか、部下が一気にオレたちに向かってくる。ドドドドド―。百単位の人間が走るんだから、響いてくる音の大きさもハンパじゃない。オレは剣を上に向けて言う。


「オレのライジング! 力を借してくれ!」


 すると剣は今までにない力を放出した。そしてオレたちは、前もって話した通りの陣形をとった。まず、剣士であるオレ、ソロイ、ナオが並び、その後ろでサリィとザーロックが戦いをサポートする、という作戦だ。


 部下が突っ込んでくると、サリィが呪文を唱える。


「ファイヤーボール!」


 火の玉が敵を生きたまま燃やした。この状況を見た部下どもは、少しうろたえたものの、すぐに襲いかかってきた。次にザーロックが言う。


「お前ら、目をつぶってろ! ディバインフラッシュ!」


 目をつぶっていたから、どんな呪文だったのか分からないが、目を開けてみると、目をおさえたままうろうろしている部下たちの姿が見えた。ある者は転び、ある者は壁にぶつかったりしている。しかし、無事だった数人は、目から血を流している部下たちを無視して、こっちに向かってきている。


「よし、この剣でも初バトルだ!」


 オレはそういって、向かってくる一人に真上からライジングをふり下ろす。くらった部下は、やすやすと防御したつもりだが、この剣は、雷の剣だぜ? 思ったとおり、電撃が部下の体全体に流れる。


「うぎゃあぁぁ!」


 ソロイは、冷静に剣をふりまわし、すべての攻撃を防いでいる。ナオは呪文を唱えている。


「エヴァージング・ゴースト!」


 すると、魔法剣から霊がでてきた。そいつの顔は、なぜかナオ自身にそっくりだ。


「オオーン、オオーン!」


 部下たちは、霊の叫び声から、必死で逃げている。だがおそろしい速さの霊は部下に追いつき、体をすっと通りぬける。すると、そいつは前に倒れてしまった。


「か、体が、し、しびれて……うぐっ」


 部下全員がしびれて動けなくなった。これで全部か。うめき声をあげている部下の数は、この部屋をうめつくすほどだった。ううっ気持ち悪い!


 ボスも、言葉を失っているようだ。オレはそのすきに剣での突きを試みる。しかし、ボスは岩石のようなパンチをオレの腹にした。


「げほっ!」


 後ろにふきとばされて、壁に勢いよく体をぶつけてしまった。仲間とずいぶん離れてしまった。


「待て! このくそったれ!」


 待てと言われて、待つやつがいるのだろうか。ボスは足でオレをけりとばし、仲間のもとへ送ってくれた。


「げほっ! ちくしょう、もっと優しく送ってくれたらよかったのに」


 ザーロックが呪文を唱えると、傷がすぐに無くなった。しかし、ボスがこっちに向かっている。彼の口がすばやく動く。


「オーバードライブ!」


 光る剣を出す呪文か。ボスはそれをサリィにふり下ろそうとした。ガキーン。


 彼女は自分の持っていた短剣で防いだようだ。そしてそれを受け流し、ボスの頭上に飛び上がった。そして持っていた短剣をボスの首に投げつけた! やったぜ!


 しかし、ボスは倒れなかった。よゆうの表情でそれを抜きとり、地面に落とした。サリィがこっちに戻ってくる。


「ちょっと待つナン」


 ナオがボスに向かって言った言葉だ。ボスは言う。


「お前がオレを殺そうとしているのは理解できない」

「少ない脳で理解できない事を理解できるのか。死はお前にとって必要なんじゃないかナン?」

「そうだ……。オレはすでにあの方にみすてられた。新しい部下が五人きたから、オレはもういてもいなくても同じ。いつかあの方に処分されるだろう。ここでお前に殺されてもいいのかも知れないな」


 ナオはうなずくと、長ったらしい呪文を唱え始めた。いまの会話は何だ? あの二人は知り合いなのか?


「さらばだ、ロジャー。ブラックホール」


 その瞬間、ボスは黒い球体の中に吸いこまれてしまった。それは満足したようにナオの手におさまった。


「何なんだよ、さっきの話は! まるで、知り合いみたいだったけど?」


 するとナオはその場に座りこんで言った。


「ボクとロジャーは数年前に親友だったナン。互いにライバルどおしでいろんな所に行っては剣術をきたえていたナン。そんな時、ロジャーが言ったナン。

『なあ、ナオ。うでだめしに、デスバレーに行ってみないか?』

 ことの始まりは、こんな調子で始まったナン」


 途中でナオは、消えてしまったボスの方を見た。


「もちろん、賛成したナン。あそこなら、強い魔物もいるからだナン。そして、苦労のはてにそこにたどりついたナン。そしてさっそく、二時間でどれだけ魔物を倒せるか、という勝負が、集合場所を決めて始まったナン。しかし、彼は戻ってこなかったナン。五時間も六時間も待ったナン。でも、結局ゆくえしらずだナン」


 何だ? オレの目から出てくる液体は? ナオは少しの間黙っていたが、ようやく口を開いた。


「彼は恨みを忘れられない性格だったナン。だから、宿の主人の話を聞いて、ようやく分かったナン」

[この会話文の意味は不明。中学時代の作者は、ナオが地下牢かどこかで、宿の主人からボスについて聞き、それによって彼がボスの正体に気づく、というエピソードをどこかに加えたかったのかもしれない]

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