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【黒歴史】ジュエル・ハンターズ ~八つの宝石~  作者: 水野 洸也
第二章 運命、選ばれし存在
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7、事件(1)

 ターナグに着いた。


 ソロイの話によれば、ここの都市は世界でも少ない、本を大量生産している所だという。へぇ。オレもこれを機に、本にも多少興味を持ってみようか。


 今は夜だからなのか、道には一人も見当たらない。サリィが言う。


「この都市、何かがおかしい」


 ふむ。たしかに。オレたち一行はよっぱらったのかと思うほど騒いでいる。そのほとんどの原因はあの勇猛果敢な戦士、ナオ・チャンだが……。これだけうるさいんだから、誰かがオレたちに気付いて、話しかけてきてもおかしくないぞ?


「サリィ、この都市の何がおかしいのですか」


 ソロイがしんちょうに問いかける。すると、サリィがひかえめに答える。


「この都市の明かりを見て。家やお店は数えきれないくらいあるのに、明かりのついている箇所は私の目から見てもせいぜい十五、六箇所ぐらいにしかならないわ」


 そう言われてみると、確かにそうだ。まだ暗くなってからいくらもたっていないのに、暗くなっている家々が目立つ。いったい、ターナグで何が起こったんだ? ザーロックが言う。


「とりあえず、私たちが泊まれる宿を探そう。その宿の主人にこの都市に起きたことを聞いてみよう」


 オレたちは歩きだした。しかしここは、本当におかしい。なんで、明かりがついていないんだ? こんなにたくさんの立派な家々や店が並んでいるのに? オレはぶるぶるっと体をふるわせた。




 やっと一軒目の宿を見つけた。幸いそこは明かりがついていて、主人も快く中へ入れてくれた。


「さあ、どうぞどうぞ。ここに旅人が来るなんて何ヶ月ぶりだろうか」


 ここの宿は「天使の惰眠」というらしい。ここの主人、ホックは「食事でも食いながら話そうや」といい、食堂の方へ行ってしまった。


 ソロイが言う。


「ホックにこの都市で何があったのか聞いてみるか」

「オレも賛成。あ、そういえばソロイ、金は持ってきたのか?」


 するとソロイはうなずく。


「心配するな。金はちゃんと持ってきた」


 そんなおしゃべりを楽しんでいると、ホックとあと数人の下男がうまそうな臭いがする料理を運んできた。すべて運び終わると、ホックが隣にあった椅子をもってきてオレたちに話しかけた。


「お前さんたち、ここで何が起きているのか知っているかい?」


 オレたち全員が首を横に振ると、ホックは静かな声でひそひそと話し始める。


「実はこの前、ある流れ者がこの都市に来たんだ。そいつは恨みを根に持つような性格で、犯罪を犯してつかまった後はここを憎むようになったんだ。そいつは釈放された次の日にここの市民を何千人も殺したんだ。その次の日には、そいつをリーダーとする悪の集団を結成し、市長やその他の市民を捕らえた。その後もたくさんの市民を殺したり捕らえたりしているんだ」


 オレたちは言葉を失った。ホックは言葉を選びながら言う。


「じきにここの宿もそいつらによって終わっちまうかも知れないな」


 そう言ってホックはビールを口に運んだ。ナオが言う。


「こんなひどい都市、見捨てていけばいいナン」

「いいや、そいつは無理だ。この近くに村などない。一番近いカータンの町だって、一ヶ月以上歩かないと着くことができないんだ。そのうえこの一帯はファーザン・ドウアーの山々が広がっているから移動するのは難しい」


 するとサリィが言う。


「馬を使ってカータンの町を目指してみてはいかがでしょう」

「馬やその他の移動手段はみんな取られちまった。どうしようもないんだよ」


 そう言って、ビールを一気に飲んで空にしてしまった。オレたちもとりあえず食べ物やビール、ワインを口に運ぶ。この都市でこんな事が起きるとは……。その流れ者の顔が見てやりたいよ。ちぇっ。


 オレたちの食事が大体済むと、ホックは言う。


「風呂は、お前さんたち以外だれも使わないから、いつでもどうぞ。それから部屋はいくついるかい?」

「一部屋何人泊まれますか」[とソロイは質問した。]

「三人だ」

「そうですか。じゃあ、三部屋お願いします。それでいいですか、みなさん」


 全員がうなずいた。ザーロックがオレに話しかける。


「三部屋って、どういう事だ?」

「ん? ああ、一部屋はオレ、ソロイが使って、もう一部屋はナオとお前が使い、最後の部屋はサリィ一人が使うってわけだ」

「そうか。なるほど」


 ザーロックはしきりにうなずいている。おい、こんなの考えればすぐに分かるだろ、まったく。


 オレたちはその後風呂で体をさっと洗い、すぐに部屋に向かった。ナオやザーロック、サリィと別れて、二人だけになった。心細いな……。ソロイが言う。


「ここはすべてが危険だ。オレたちも殺されないように、だれも入れないようにするんだ」


 よし。オレは部屋にかぎを掛け、窓を閉めて、荷物は全部ベットの下にかくした。これで大丈夫なはずだ。


「これで安心して寝られるぞ」


 ソロイは周りを見渡して、満足そうにうなずいた。そしてオレたちは明かりを消して、ぐっすりと眠りについた。




「あー、よく寝た」


 オレはまず、自分が殺されていないかどうか、自分のほっぺをつねってみた。それを見ていたソロイが言う。


「しゃべってるんだから、少なくとも死んではいない」


 そう言うと、窓から差しこんでくる朝日を見た。そしてオレは、荷物の確認をした。よかった。オレの剣やOSGは無事だ。


「荷物の安全確認は済んだぜ」


 オレのジョークに、ソロイはにやりと笑った。そして、あくびをしながら言う。


「ふあぁー。顔を洗ったら、他の三人も無事かどうか行ってみるとするか」


 よし。オレは顔を洗うと、隣の部屋へ行ってみる。この部屋はサリィが使っている。ソロイはとびらをコンコンとノックした。すると中から「どうぞ」という声がしたので、オレたちは中へと入る。


 そこには、髪をとかしているサリィがいた。ソロイが言う。


「サリィも無事だったんですね!」

「ええ。ということは、あなた達も?」

「はい。大丈夫でした。本当によかった」

「ところでサリィ、荷物は?」


 オレの質問にサリィはベットの下を指差した。


「この下にかくしておいたはず。たしか……あ、あったわ」


 ベットの下から出てきた荷物を見て、オレはにかっと笑う。


 オレたち三人が合流すると、ナオとザーロックの部屋へと足を運んだ。オレ、ソロイも無事で、サリィも安全だったんだ。よっぽどのことがなければ、[彼らが]襲われることはない……。ソロイは部屋に着くととびらをたたいた。


「おーい。ナオにザーロックー。ありゃ、かぎが開いてるぞ?」


 本当だ。まさか……。オレたちはしんちょうに中へと入る。ベットの上は、もぬけのからだった。


「まさか。そんなはずは……」


 体から力がぬけていく。そんな……。すると、ベットの下から顔が二つ、ひょこっと出てきた。


 ナオ・チャンとザーロックだった。


 突然出てきたので、この場がしらけてしまった。ナオがしゃべらなければ、ずっとそのままだっただろう。


「ああ。僕らは自分の身を守るためにベットの下で寝てたナン。窓やとびらのかぎはうっかり閉め忘れたナン」

「ところで、荷物は?」

「それなら、ベットの上だナン」

「ベットの上? 何もないけど?」


 するとナオとザーロックはおそろしい速さでベットの下から出てきて、ベットの上を見たとたん、ナオは絶叫した。


「うぎゃー、荷物がない! ナンとカレーは? 荷物の中だ! ほぎゃー」


 そう言うと、下の食堂の方へと走り去ってしまった。きっとコックにナンとカレーを注文するんだろ。オレたちはやれやれと首を振りながら下へと行こうとした時だ。


「ぎゃー、コックと主人がいない!」


 へっ? オレたちは互いに顔を見合わせた。まさか、「悪の集団」とやらに捕まったのか? 急いで下へ行く。


 そこは、嘆いているナオ以外一人もいなく、ここの階は荒れはてていた。

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