沙織の決心
「沙織、ありがとう。拭くの上手だね。すごく気持ちよかった」
「うん・・・じゃあ、これ穿かせてあげるから、足を片方ずつここに入れてね」
沙織は備え付けのブルマーを取り出し、裾を片方ずつ広げて涼の足をくぐらせると、それを両手で持ち上げて涼の丸いおしりをやさしく包み込んだ。
「涼くんのブルマー、やっぱりすごく似合う」
「今日、そんな話をしたら、ホントになっちゃった。恥ずかしい」
ここまで涼の世話で無我夢中だった沙織は、そこではじめてあることに気づいた。
「そういえば、私のブルマー・・・」
沙織は涼のおしりから手を離すと、あらためて自分の穿いているブルマーを触って確かめた。
「私、すごくおしっこしたかったのに、どうしたんだろう?」
涼の世話に夢中になっているうちに、あれほど激しかった沙織の尿意がうそのように消えていた。おしりを触ってみても濡れていなかった。
「涼くん、これどういうこと? それに、ここはどこなの?」
涼はしばらく黙っていた。沙織が続けた。
「涼くん・・・もしかして、さっき」
「それは違うよ。僕が我慢できなくて、漏らしただけ」
「うぅん、きっと違う。涼くん、私に隠してる」
「何のこと・・・?」
「私を体育館から出すために、わざと?」
「・・・」
「私が今にもおしっこを漏らしそうだったから、助けるために、わざとおもらししたの?」
沙織の問いに、涼は穏やかな表情になって、話しはじめた。
「沙織がすごくおしっこを我慢しているのは分かってた。幼稚園のときから見てるからね・・・」
「そうなの?」
「うん、僕もすごく我慢してたから。ほら、僕と沙織って、いつも同じようにおしっこ近かったから、きっとそうだって思って」
「覚えててくれたんだ・・・」
「そうするうち沙織が片ひざで立つようになって、いよいよダメだって思った。なんとか沙織を連れ出す方法はないかって考えてた。そのとき先生の怒鳴り声がして、あたりが静まり返って・・・今だと思った。そう、僕がここでおしっこを漏らせば、沙織を保健委員としてここから連れ出せるって」
「だめだよ・・・だめ、涼くん、そんなことしちゃ」
「でも、そのとき時空を飛び越えて、昔の思い出をよみがえらせながら、幼稚園の園舎に来てしまったみたい」
「それはどうして?」
「分からない。でも、沙織と僕の心の叫びの作用かも」
「どういうこと?」
「ほら、あのとき沙織も本当におしっこを漏らす寸前で、みんなの前でおもらししてしまう恐怖心や羞恥心で、沙織の心が断末魔の叫び声を上げていたでしょ?」
「うん」
「そして僕も、沙織を助けるためにおもらしする怖さや恥ずかしさで同じように叫んでいた。これほど近くにいるのに心を通わせて来れなくて、結ばれずに来たふたりの激しい心の叫びが作用した結果かもしれないって」
「戻るにはどうしたらいいの?」
「今はこうして沙織と心を通わせることができたんだし、たぶん時間がたてば少しずつ元の世界に戻れると思うよ」
「すぐに戻ることはできるのかしら?」
「僕たちがより強く結ばれれば。たとえばキスをして愛を確かめられれば、その作用はすぐに解けると思うよ。でも、それはダメ」
「どうして?」
「そんなことをしたら、一気にあの体育館まで戻ってしまうよ。そしたら沙織がおもらししちゃうじゃない? みんなの前で。それは絶対ダメ」
沙織は少しの間目を伏せた。自分を思いやってくれているようで、自分を遠ざけている、そんな涼の気持ちを測りかねていた。そしてしばらくしたのち、思い切って涼を見つめて言った。
「涼くん、私のこと好きじゃないの?」
「もちろん、好きだよ・・・でも」
「じゃあ、キスして」
「でも、そしたら沙織・・・」
「約束したでしょ? 涼くんが漏らしたときは、私も漏らすって」
「沙織・・・」
「この幼稚園にいるとき、ふたりで約束したんだから」
沙織は視線を落として、ブルマーのおなかのあたりを右手で撫でた。不意に尿意を感じはじめたからだ。
「どうしたんだろう、私、なんだかおしっこしたくなってきちゃった」
「きっと沙織と僕が、互いの気持ちを確認しあえたから、時空のヴェールが解けはじめたんだと思う」
「そうなんだ・・・」
「だから、この間にトイレに行けば、沙織は恥ずかしい思いをしなくて済む」
「いや・・・どうして涼くん自分ばっかりいい格好するの? そんなのいや!」
沙織は涼の肩に抱きついた。脚を少し広げ、背伸びをするように下腹部を引いておしりをつき出した美しい姿勢で涼を見つめ、そして涼にキスをした。
幼稚園の教室の光景が、霞がかかるように遠ざかっていき、高校の体育館に戻ろうとしていた。それと同時に、沙織の尿意が猛烈な勢いで高まっていった。
「私・・・おもらしするのね、みんなの前で」
「怖い?」
「涼くんとこうしていれば、何も怖くない」
「うん、男子も女子もみんな固唾を呑んで、僕たちを見守ると思う。沙織、脚が長くて、おしりだって魅力的だから。きっと沙織に告白する男子も出てくるはず」
「それ、涼くんの告白?」
「僕の告白は、これ」
涼は沙織の背中を強く抱きしめ、ふたたび沙織に口づけした。
沙織は太腿をゆっくりと擦りあわせはじめた。それに伴って、乾いたブルマーとショーツの圧迫が衣擦れとなって、沙織の身体をいっそうくすぐるように疼かせていた。
「沙織、おしっこしたい?」
「うん・・・すごく」
そして沙織に動悸が走った。尿意が一線を越え、沙織の身体が「我慢できない」ことを予感したからだ。沙織はもう涼の前では素直だった。そして涼を切なく見つめたまま思いきり身体をくねらせながら、おしっこを我慢していた。
「もう・・・だめかも」
「このまま、しちゃう?」
「しちゃいそう、でも、怖い・・・」
「沙織・・・」
「分かってる、恥ずかしいけど・・・しなくちゃいけないってこと」
「もうすぐおもらしするって分かってて、今こうしている沙織、素敵だよ」
さっき涼に穿かせたブルマーは、元の短パンとショーツに変わり、その布地が元通りに濡れはじめた。沙織の胸が激しく高鳴った。尿意の絶頂が波打つのを感じた。そしてもうすぐそれが弾けることを予感した。
「僕が漏らした直後の場面に、いよいよ戻るよ。沙織」
「涼くん、このまま抱きしめて守っていて」
「うん」
ふたりの腕が、お互いを強く抱きしめた。
「あ・・・、あ、あ」
沙織がそう叫んだのと同時に、ふたりを包む時空のヴェールが完全に解けた。
そこは体育館の出口に近い場所だった。涼を連れ出そうとして歩いていた沙織が立ち止まり、彼と抱き合っていた。キャットウォークから差し込む暖かな陽射しに包まれていた。止まっていた生徒たちのざわめきが戻った。