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おもらしの約束

ステージへの入場のため、男の子の列が先に動いた。紺色のブルマーを穿いた彼のかわいらしいおしりが、サオリの目の前を通過していった。


《リョウくんとおそろいのパンツ》


鍵盤ハーモニカを吹きながら、サオリは両手の先に見える自分のブルマーに何度も視線を落とした。恥ずかしいVのラインをかもし出しているパンツ。そしてサオリは時おり遠くのリョウを探した。講堂に差す柔らかな陽の光の中で、人の間から垣間見える彼の紺色のおしりを。演奏中も帰りの会のときも、サオリは自分のパンツに目をやりながら、彼のパンツを探していた。おもらしして心細いので、自分と同じ仲間を探したい、もちろんそういう気持ちもあったが、それ以上に彼への親近感があった。



おもらししたのが午後だったので、濡らしたショーツや短パンはまだ乾いておらず、ふたりはその格好のままバスで帰ることになった。家にはその旨連絡がされていた。


いつものように、リョウの右隣にサオリが座った。フェルト張りのざらっとしたシートの感覚が、1枚だけのブルマーを通してサオリのおしりに伝ってきた。目を落とすと、座った姿勢のため自分のブルマーのVのラインがさっきよりずっと深く切れ上がって見えた。サオリは改めて今日自分がしてしまった失敗と、いまの自分の格好を恥ずかしく思った。でも隣に目をやると、リョウのブルマーも同じだったので、サオリには淋しかったり、辛かったりする気持ちはなかった。


サオリはリョウに話しかけた。


「おしっこ・・・、漏らしちゃったね」


「漏らしちゃったね」


「うん・・・」


「あのとき、サオリ、どうして漏らしちゃったの?」


「先生の声に、びっくりしちゃった。そしたら、おしっこしちゃった・・・」


「びっくりすると、おしっこ出ちゃうもんね」


「・・・ごめんね、リョウくん」


「どうして・・・?」


「だって・・・私のために・・・」


「僕も、おしっこ我慢できなくて漏らしたんだから、サオリといっしょだよ」


「いっしょなの・・・」


「いっしょだよ・・・」


「リョウくん、恥ずかしかった?」


「恥ずかしかった・・・けど」


「けど、何?」


「サオリの前でおしっこ漏らしたとき、パンツ、すごく温かかった」


「うん、あったかくて気持ちよかった」


「でもすぐ先生に叱られて、脱がされちゃったね」


「リョウくんといっしょに脱がされたとき、楽しかった」


「そして僕たちだけ、このパンツ」


「おしっこ漏らして、このパンツ穿かせてもらって・・・」


「おもらしって、しようと思ってもできないからさ」


「ふつう、できないよね。私、漏らしたの、今日がはじめてなの」


「僕もはじめてだよ。パンツ穿いたままおしっこするのって、不思議な感じがした」


「今日おもらしして、よかったのかな」


「なんだか、楽しかったね」


「うん、すごく楽しかった」


「そうだ、またいっしょにおもらししよっか?」


「うん、きっとまたそのうち、私、漏らしちゃうかも・・・」


「じゃあそのときは、僕も漏らす」


「ほんと? じゃあ、もしリョウくんが先に漏らしちゃったら、私も漏らすね」


「ありがと」


「うれしい。そしたらまた、こんなふうに帰れるね」


「うん」



沙織は、自分が幼稚園のときにおもらししてしまったらしいことは知っていた。それは洗濯して乾いた自分の短パンとショーツを後日先生から渡されて持ち帰った記憶があったからだった。


でも、おもらししたときの一部始終はこのときまで思い出せなかった。それはとても恥ずかしくて衝撃的な出来事だったため、幼かった沙織の心の奥に仕舞われていて、それが今、記憶の糸を手繰り寄せるようによみがえって来たのだと沙織は思った。


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