エピローグ~おもらしからはじまる恋
沙織は、涼を抱きしめたまま、彼がおしっこをしてくれたことがうれしかった。無理やり自分が巻き込んでしまったこの場面においても、涼が自分を受け入れてくれたと感じ、自分もまた涼を受け入れることが出来たと感じたからだった。
《おしっこを漏らして感じあえる気持ちって、女の子や男の子の差なんてなくて、男女共通なんだ》
《だからふたりでおもらしすると、同じ気持ちを共有しあえるんだ》
その気持ちを大事にしたくて、沙織は誰もいない保健室で、涼の濡れた衣服を先に脱がせ、先ほどしてあげたのと同じようにタオルで丁寧に拭いてあげた。
そして今度は、涼は沙織のブルマーのウエストゴムに手を掛け、前後に少しずつ引っ張り下ろすようにして、沙織のおしりからブルマーを脱がせていた。
「でも・・・、涼くんが漏らしたほどたくさんじゃないと思うよ」
「ほら、沙織のパンツ、こんなに濡れてるから」
涼は、沙織のブルマーを太腿まで下げた手を止めて、おしりの上までぐっしょり濡れている沙織のショーツを触りながら、そう言った。沙織自身も、濡れたショーツのおしりが風に包まれて冷える感じと、ほのかなおしっこの香りを感じた。沙織は、自分がおしっこで濡れたショーツ1枚のまま、涼の前に立っていることに急に恥ずかしくなった。
「それは・・・涼くんがしちゃったのも、あって・・・」
「はやく脱がさなくちゃ」
涼は、沙織の脚を片方ずつ持ち上げるようにして、ブルマーを彼女の足首から外した。そして、これから起こるはずの、もっと恥ずかしいことを沙織が予感した瞬間、涼の手がすかさず沙織の濡れた白いショーツに伸びてきた。
「ちょっと、待って、私・・・」
《もう大人なんだから》
と言おうと思った矢先、彼の手が、自分のショーツを勢いよく下げた。
「大人なのに、おしっこ漏らしたんでしょ? 僕もだけど」
と涼に言われて、沙織はそれ以上言葉が出なかった。
《脱がされるのって、やっぱり恥ずかしい》
最初はそう思った沙織だった。しかし、おもらしをして惨めなはずの自分なのに、好きな人の力強い手で濡れたところを拭いてもらいはじめたとき、幼稚園のときに感じたのとは比べ物にならないほどの暖かさを沙織は感じた。
さっき自分が涼の服を脱がせたとき、この恥ずかしいはずの格好で立たせても、涼は背筋を伸ばして凛としていた。沙織は、涼がどれほど恥ずかしいのを隠していたのかを悟り、涼のことを尊敬するとともに、さっき涼の身体が素敵だと思ったように、自分も涼からそう思われるように、背筋を伸ばした。
「沙織、大人になったね」
涼の言葉に沙織は頬を上気させた。涼が沙織の裸を見つめる視線を感じながら、彼に堂々と身をゆだねることで、沙織は女性としての気持ちを高ぶらせていた。
そして大人の身体になった沙織は、そのことで彼に自分の身体の魅力を伝えるとの同時に、彼の身体にやさしく包まれているような、そんな気持ちにさえなった。
「じゃあ、タオルを敷いて、いっしょに足を拭こうよ」
沙織は涼といっしょに、タオルの上に乗って、足をバタバタさせるようにして濡れた足を拭いた。互いに無造作に身体の向きを変えると、ふたりの手足や素肌が触れあった。互いの身体の温もりを感じながら、彼の気持ちが高揚するのを沙織は見て感じ取った。
子どものとき、ふたりでおもらししたときから、いつかこうしてまた彼と触れあってみたいと、潜在的な自分の心がそう思っていたのかもしれない。そして、自分があのとき感じた、そしていま感じている悦びを重ね合わせ、沙織は幸せな気持ちで心を高ぶらせた。
「ねえ、こんどは、いつ、おもらししようか?」
「まさか、また学校で? 沙織、本気?」
「もう、みんなからきっと噂になってるから」
「気にしないで・・・しちゃう?」
「今日は涼くんが先だったから、今度は私が先に漏らすね」
「じゃあ、沙織のあとで、僕も漏らす」
「そしたらまた、こんなふうにしようね」
「うん」
幼稚園のときは忘れてしまったけれど、今日の出来事は絶対に忘れない。
ふたりの恋が、幼稚園から10年の時を経て、やっと始まろうとしていた。
(終わり)