第一幕 4話 月城紗白
その大人気な後ろ姿をした少女は、フェンスに腕を置きながら夕空を見上げていた。星を見に来たとでも言うのだろうか?この屋上からは星がより一層澄んで見える、天体観測にはうってつけの場所と言っても過言ではない。
でも、天体観測をしに来たのなら少し時が早い気がする。
涼しい風が屋上に流れて、彼女の白く綺麗な髪を揺らす。
白髪に、ショートボブによく似た髪型。
「月城?」
思わずそう声に出してしまった。
「!?」
驚いている様子でこちらに顔を向ける。……宝石のような目に整った顔立ち。横髪には黒いヘアピンを漢字の「ニ」の様な形で付けている。この付け方をなんというのか、男の俺には到底理解できなかった。
「確か零さん。だよね?」
「あぁ、よく知ってたな。学園の有名人とはかけ離れている人の名前を」
「知らない訳ないよ?同じクラスの隣の席に座ってる人なんだから。」
彼女は、柔らかい笑みを浮かべた。……なんか変な事を言ってしまったのだろうか。人との交流関係が致命的に少ないせいで全くわからない。
「月城は、なんでこんな所に?……というか此処は立ち入り禁止の場所のハズじゃ」
そう言いかけた途端、頭の中から腹を抱えて笑っているかの様な声が聞こえる。
そこまで言ったあとで自分の言動を振り返り、やらかした事に気づいてしまった。月城は少し笑いを堪えている様に見える。
「その言葉、そのままお返しするね?」
そうニッコリとした顔で言うと、堪えきれなかったのか小さく笑いだしまった。
俺は目の前の光景にただただ唖然と立ち尽くしていた。その様子を見たからか月城は笑いを抑えて「こっちに来て」と手招きしたのでそれに応じる事にした。
この学園のフェンスは誰でも乗り越えられるほど低い。それこそ腕をのせることが出来るほどだ、ただそれには少し訳がある。
***
少し前、この学園で飛び降り自殺を行なった生徒が居た。その後屋上のフェンスの高さを上げるか、屋上そのものを立ち入り禁止にするか、という会議が先生達によって開かれ、後者に決まったらしい。その決断は、屋上で遊んでいた生徒達からかなりブーイングを貰ったという。
……前までは生徒達で賑わっていた屋上は、今では少し殺風景に思えてしまった。
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