表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クローバーには「裏」がある  作者: せつな
第二幕 素敵なあの子も『裏』がある 1〜
24/25

第二幕 11話 凡人学生には『裏』がある


 「ねぇ、ちょっと。もしもーし……零さん?」


 「……えっ、あぁ!ごめん」


 気がつくと月城が首を傾け、こちらを覗き込んでいた。


 「大丈夫?体調悪いなら一緒に保健室までついて行くよ?」


 心配そうな表情を浮かべながらそんな事を言う月城に慌てて首を横に振った。


 「全然大丈夫!少し眠いだけだから」


 嘘偽りなくそう答える。


 実際依頼が終わった後の片付けは組織の人が引き継いでくれるのだが、組織の人が現場に来るまでこちら側が現場で待機していないといけないと言う謎ルールにより、ようやく家に帰れた頃には午前2時くらいになっていた。


 「零が眠いなんて珍しいね〜?何かあったんだね」


 椅子の背もたれに右腕を引っかけてコチラに振り返った怜はいつもの()()()()()()()()()()()を向けていた……これが多くの女子生徒を一方通行の恋に堕とす原因の一つである。


 疑問系で聞いてくるのではなく確信を持って言ってくるあたり、怜の洞察力は果てしなく鋭い物だと改めて実感する。


 「それで、どうかしたか月城?」


 何か言いたげな顔を月城がしていたので、その心情を汲み取って訊いてみる。


 「あっ、いや、そんな重大な事じゃなくてただ最近気になった事が起きて」


 「へぇ〜、月城さんが気になったことか〜」


 怜が前のめりな姿勢になったのが一目で分かった。


 「少し前に、色々あって夜遅く外を歩いていた時、拉致されそうになったんだけど……」


 あの日のことかなぁ。と考えていた俺の横で、唐突なリアル拉致られ宣言を聞いて怜が驚愕していた。


 どうやら天才でも驚くものには驚くらしい。


 「その時、黒い狐さんが急に現れて、私を拉致しようとした男の人達を一瞬で薙ぎ倒していって……二人は黒い狐さん見かけたことない?」


 「黒い狐さん……ってなに?」怜がそう疑問を問いただす。そうか、それが普通の反応なのか。


 ここで「あぁ!黒い狐さんってのは俺のことだよ!」なんて口が裂けても言えないので「狐って動物の?」とすっぱ抜かす。


 「人だよ、黒い狐の仮面を付けてたから()()()()()って呼んでるだけ」


 机に腕を置くと、頬を手で添えるようにしながらクスリと、真隣の席に座っている彼女は笑った。


 「僕はそもそも、あまり外出をしないから人を見かける機会が少ないんだよね」


 もっとも、そんな特徴的な格好をしているなら、一度でも見かけていたら忘れてないと思うけど。そう付け加えると、頭を人差し指でコンコンと軽く叩きながら怜は深く考え込んでいた。


 ……これは、かなりマズい状況なんじゃないか?その様子を見ていながら、そこでようやく気づいた。


 「他にその人の特徴は覚えてない?背丈とか、どのくらいの年に見えたかとか」


 「年は多分私達と同年代か一つ上くらいで、背丈は確か……」


 ゴクリ、と唾を飲み込んだ音がやけに大きく感じる。辺りには張り詰めた雰囲気が……いや、辺りを見回すがどうやら張り詰めていたのは俺だけだったらしい。


 「丁度零さんと()()()()()()()()()()()気がする」


 ギグッ!?心臓を突然射抜かれた様な感覚に一瞬、戸惑った表情が生じてしまい、急いで冷静さを取り戻す……が。


 ……恐る恐る怜の方へと顔を向けると、その一瞬すら見逃さなかったと言わんばかりに、コチラを横目で見つつニヤリと笑いながら「へぇ〜、零と同じくらいの背丈で、僕らと同年代か〜」とペラペラ喋る。


 「そうなんだけど、顔が仮面で見えなかったから誰かは分からなくて」


 「……だよな!俺らと同年代でこのくらいの背丈の奴なんて沢山いるよな」


 月城が無意識に出してくれた助け舟を有難く使わせてもらう。


 「……まぁ、確かにそうなんだけどね」


 何処か腑に落ちなさそうにうーん、と怜は静かに唸り声をあげた。


 「そもそも、どうして()()()()()と言う人にもう一度会おうとしているのかい?」


 「それは……もう一度、しっかりとお礼を言いたくて。黒い狐さんのおかげで、他にも色々助かった事もあるから」


 嬉しそうな様子を見せながら月城は微笑んだ。


 他にも色々助かった、と言うのは以前俺に相談してきた親バカ疑惑が浮上している父親のことについてなのだろうか。


 「なるほど、それじゃあ色々調べてみるよ。友達を救ってくれた命の恩人さんのこと……でもやっぱり僕の見立てでは」


 「俺も調べられる範囲で調べテミルヨー」


 ニヤリとした表情を表に出した怜が何か言い出す前にその言葉を遮る。


 「い、いや……これは私の問題だし二人にそこまでしてもらうのは申し訳ないよ」


 月城がバツな顔をしながら両手のひらをコチラに向けてくる。


 「黒い狐さん……その正体に興味が湧いてしまったからね、それに友達が困っていたら助けてあげるのが筋ってものだよ?ねぇ、零?」


 「そう、だな……友達を助けるのは当然だよな」


 絶対に正体を暴いてやると言わんばかりの怜の表情に押し負けてしまった。


 「友達……そっか、ありがとう。嬉しい」


 思いのほか嬉しそうに笑う月城を見て、何処か今までに感じたことのない不思議な感覚になってしまった。


 怜が本気で黒い狐の正体を暴こうとしてしまっている現状、その正体がバレるのも時間の問題だろうな。


 そして黒い狐の正体がバレると同時に……俺が人殺しだと言うことが確定してしまう。


 ……人殺しだと知られたくない、けどこのまま自分から言わずに隠し通しいていいのだろうか。


 人殺しだと知って尚、俺の人生を学生らしいモノにしてくれたこの二人は、友達でいてくれるだろうか。


 本当に、バカバカしいな。今までは気にも止めていなかったと言うのに。


 『バカバカしい、それだけか?今まで気にしてなかった事を気にして……悩んで、そんな()()()()()()()を送っていて感じているのは?』


 そうだな……父さん、兄さん。俺はこの生活。


 ──凄い楽しいよ──


 教室の窓から見える外の風景は、いつのまにか静かに雨の雫を纏っていた──


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ