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クローバーには「裏」がある  作者: せつな
第二幕 素敵なあの子も『裏』がある 1〜
15/25

第二幕 2話 静かな夜には『裏』がある


 「土曜の午後9時から出来る事、あるか」


 『いくらでもあるだろ?』


 自分の部屋を見渡してみる。……ふすまが外れた押入れ、所々剥がれている壁紙、歩くだけで軋んだ音がする畳、……うーん。今までは目的だけに没頭していたからか、これほどまでに自分の部屋がボロボロだとは全く気づかなかった。


 シンクとコンロが一式になった、小ぶりなステンレス製キッチンに足を運ぶ。


 キッチンの隣にちょこんと置いてある超がつくほど小型の冷蔵庫を開けて隅々まで探る……え、嘘ぉ、なんにもない。


 「はぁ、……何か食べに行くか」


 その言葉に反応するかのようにお腹がクゥー、という唸り声をあげた。


 ***


 テレレレレレーン♪ テレレレレレ〜ン♪……愉快な音色と共に、今にも張り裂けそうなエコバッグを右手に持ってコンビニを出た。


 エコバッグを覗くと昆布おにぎりとカレーパン、そして今日の大目玉!!炭火焼鳥ももタレ!!……っく、どうしても欲が出てしまった!!食欲という邪鬼に打ち負かされてしまった!!


 紙製の袋を開けて焼き鳥を頬張る。……ハハッ、これが至福というものか。すっかり静まり返った小道を歩きながらそんな事を考える。


 ……美味しいものは最後に食べるという方法もあるにはあるがそれは焼き鳥に対しては邪道である。


 なんせ焼き鳥は味はもちろんのこと、この口の中で広がる暖かさも素晴らしい所なのだから。冷たくなった焼き鳥は、焼き鳥とは別のナニカだろう。


 「学園でのかけうどんも良いけど、焼き鳥の方が絶品だなぁ〜」


 かけうどんは値段の安さも美味さの一部だから少々焼き鳥とは違う存在なのだ。


 『ところで、これは何処に向かっているんだ?』


 「近くの公園」


 家で食べるのも良いが、折角心地の良い風の吹いた夜なんだ……外で食べた方が美味しい気がする。


 という訳で公園のそばまで来たのは良いものの、


 「……まさかこんな夜中に先客方がいるとは」


 4人だろうか。ポケットから懐中時計を出して見ると、もうとっくに0時を指していた。……え、時の流れが少々早過ぎないか?


 『いーや正常だ……なんせ此処は近くの公園の数倍遠くにある公園だからな!!』


 「何で先に言ってくれないかな??」


 ……はぁ、肉体が無いとは随分腹が立つ奴である。この握り締めまくった左拳を自分にぶつけるしか方法が無いなんて。


 『……なぁ、そんな事よりアレ……結構マズイぞ』


 アレと言うのはキットあの先客達のことだろう。

大柄な男が3人と小柄な女子が一人、女子の方は丁度俺と同い年くらいだろうか?男の方は成人だろう。ようやく見てみると男達が女子を押さえつけている様子が見えてきた。


 『誘拐だな、確実に』


 「お前が言うならそうなんだろうな」


 後一つとなった焼き鳥を頬張る。


 此処から公園までは、おおよそ300メートル……これくらいなら。


 『急いだ方がいい……車に乗せられたら厄介だ』


 「高い所の方が、良いかもな」


 コンクリートの床にエコバッグを置く。落ちてた角ばった石を適当に2つ拾って、焼き鳥の串を咥えながら近くの家の屋根へと飛び移る。此処からの方が標的が見えやすい……家の屋根からさっきいた地面までは7メートルくらいかな。


 涼しい夜風が、体を揺さぶる。


 左手の親指で狙いを定め、石を右手で強く握り締めて、標的へと思い切り放つ!!!


 その瞬間、投げ込んだ石は静かな夜に、小さなソニックブームを起こしながら、一筋の軌道を残して大柄な男の頭を貫いていった。


 ……慌てだした残り2名の標的達は、何処からかピストルを取り出して銃口をあちこちに向けていた。


 コチラを必死に探し出そうとしているのだろう。


 ふっと口角が上がりそうなのを抑える。


……次の瞬間、もう一筋の軌道が静かに夜空を裂いた。


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