第一幕 9話 目的or友情
目的をとるか友達を取るか、……今までの俺なら迷わず目的を選んでいた選択肢。
ただ少し、今は迷いが頭をよぎってしまう。怜と月城は、人との友情関係を拒み続けた俺なんかと仲良くなってくれた唯一無二の友達だ。そんな奴らの優しさを踏みにじらなければならない程、目的を果たさなければならないのだろうか。
「零、大丈夫?そんなにぼうっと外の景色なんて見て……何かあったの?」
月城はそう言って様子を伺ってきた。まったく、鋭い洞察力の持ち主である。月城はこの学園の中でも怜と肩を並べられるくらい頭がいい、だから分かってしまうのだろうか……
「外の景色を眺めたかっただけ。特に何もないよ」
……今この瞬間、俺は言うことができるだろうか。
「今日をもって金輪際関わらないでくれ」なんて、
きっと言えない、その言葉を口にできる傲慢さも、冷酷さも、生憎持ち合わせてはいない。
それなら、残された選択肢は一つ。怜や月城と友達になっていても当然と思われる人間になればいい。それなら、奇襲されることも無い最も平和的な解決方法だ。まさかこんな日が来るとは思ってもいなかった。
……自らの意思で平凡の仮面を外す日が来るだなんて
いつからだろうか、目的より仲間を優先したいと思うようになったのは。
***
学園での時間はあっという間に過ぎ、放課後になった。
決まった結論はこうだ、怜や月城のような天才達のそばに居てもおかしくない人間になる。そうすれば周りからの不満は最小限にまで抑えられる。それでも不満を抱く奴らは、……どうしようもない。そういう奴は何処まで行っても不満を抱く。放っておくのがベストな策だろう。
ここからが問題だ……どうやって下校すればいいか、多分だけど相手も馬鹿じゃない。下駄箱や校門で、もしかしたら下校時を狙っている可能性だって大いにある。
それなら、一つ誰も知らないであろう場所、旧校門を知っている。新しい校門が出来る前まではそこが下校時使われていたと聞く。
『……気を付けろよ。相手に《特殊体質》の人間が混ざっていてもおかしく無い』
心配してくれているかの様にそう言われると、本当に兄さんなんじゃないかと、兄さんが生まれ変わって俺の頭の中に入って来てくれたんじゃないかと……都合の良い解釈をしてしまう。
周りの雰囲気が少し変わったように感じた。辺りの設備は苔に覆われて、更には錆びて廃れていっていた。まるで人々から忘れ去られたのを嘆いているかのように。
「案外、すんなりいったな」
それは確かに錆びていたが、威風堂々と校舎を守っていた。
「よかった、開いていなかったらと少し焦ったけどちゃんと開き……」
そう最後まで言いきろうとした直後、ドンッ!!……と言う鈍い音と共に後頭部が激しい痛みに襲われた。
……最近、いい事ばかりで、すっかり忘れていた。
俺が新たな道へと歩もうとすれば、
《運命》はそれを嫌うかのように……叩き、折れさせて、諦めさせようとするんだった…………………




