第一幕 8話 一時の平和
「紅茶か抹茶なら……僕は紅茶かな?あの香りが落ち着くんだよね〜……零は?」
ひとりでに話始めたかと思えばいつも通り俺に会話が振られた。
「どっちも飲んだことがないから良さとか分かる訳ないだろ。」
そう言うと怜は唖然とした表情を見せてから何かを察したかのように哀れみの目線を向けた。
「そっか、零の家お金ないから」
長い付き合いだからこそ、コイツがかなりの天然で、こう言うはたから見たら煽りにしか感じない言葉を言ってしまう奴だと俺は理解している。
理解してなお、頭に少しカチンと来たがそれをすぐに押さえた。
「いいか怜、大事な事だからよく聞け……飲み物というのは喉の潤いになれば何でも良いんだよ。つまり水、水で良いんだ」
「……なるほど。確かにそう考えると水でも良いのかも知れない。」
まったくといって良いほど、流されやすい奴である。どうやら他の人から見えている怜と俺がいつも見ている怜ではかなり見え方の差が激しいのかも知れない。
「何の話してるの?」
背後からそんな声が聞こえて後ろを振り向くと、そこには月城の姿があった。
「おはよ。怜さん、零さん」
「ああ、おはよう月城さん。丁度今飲み物は飲めれば良いのかの重要な話し合いをしていたんだ」
「違う違う、ごっちゃになり過ぎだ。紅茶か抹茶の話だろ?」
そう諭すと怜はハッとした表情を見せてからまたいつものおしとやかな顔に戻っていった。
「そうだった。……月城さんは紅茶と抹茶。どっちが好きかい?」
「うーん……どちらかと言えば、抹茶?かな。特に甘いやつが好き」
これはマズイ。怜と月城で意見が割れた。このままだとまた前みたいに喧嘩するんじゃないかと内心はヒヤヒヤしていた。
「へ〜、月城さんは抹茶派なんだ。確かに月城さんに抹茶はよく合うかもね」
「そう?私、紅茶の良さをあまり知らないから良ければ教えてくれる?」
そうか、そうだったな。
「……へ?どうしたの零?」
「人間は、進化する生き物だったな。」
「……本当にどうしたの?」




