プロローグ
この世界には特殊体質、と称されるものが存在する。
大抵の場合、特殊体質か否かは生まれた時から決まっていて、そんな特殊体質の人間の事を人は「異能力者」と呼ぶ。
だがソレの大半は手から炎を出したり、サイコキネシスで空を飛ぶ、と言ったものとは遠くかけ離れており、特殊体質であろうがいまいがさほど変わらないのである。
特殊体質の人間が持つ能力に例を挙げるなら、脳の回転が人より2倍高くなる、果物の皮を綺麗に剥ける、身体のリミッター上限が無い、とか……ただ、人生において有利になるのは確かだ。
「…はぁ」
俺は墓石の前に立ち尽す。
目の前の墓石に掘られた名前は、父さんのものだった。
「特殊体質とかなんだとか、本当に馬鹿げた話だな」
返事は勿論返ってこない、返って来たら返ってきたで怖いけども
「父さんは、特殊体質だったのかなぁ」
人気の無さがどこか寂しさを感じさせる墓地に、声が消し去られてしまった様な感覚がした。
『さぁな、だがきっと父はお前の事をいつも見守ってくれているだろうな』
頭の中からそんな声が聞こえてくる。
「居たのか、お前」
『そろそろ昔みたく兄さんって呼んでくれてもいいんだぞ?』
……俺には父と兄が居た。二人ともとても優しくて、俺の事をとても大事にしてくれた、大切な家族だった。
「お前はあくまで俺が生み出してしまった幻聴だ。それ以上でもそれ以下でもないよ」
『……どうだかね〜』
俺は他の誰よりも、お父さんと兄さんの死を知っている。だからこそコイツは、兄さんの声をしただけの、ただの幻聴であると兄さんではないと、知っている。
「お父さん、また来るね」
目の前の墓石にそう言って背中を向ける。
「俺は必ず、目的を果たすから」




