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ep.9

「魔法を使えるんだな?」


一応質問の形を取っているがラズさんは確信しているようで、確認するように聞いてくる。


「はい...と言っても家にあった古書から自分のこれが魔法だと結論付けただけなので本当にそうなのかはわかりません」

「なるほどな、...まぁ安心してくれ。お前のそれは魔法だ。変なものじゃないぞ」

「変なものじゃないんですか?」

「あー...次の質問にもつながるんだけど、全く変なものじゃないぞ、魔法は。ここらへんじゃみんな魔力を持ってるし、程度に差はあれど基本的に魔法は使える」


やはりここでは魔法というものは常識らしい。

驚きはなかった。

魔力検知で分かっていたから、というのも勿論あるが、何よりそんな場所に来れた嬉しさが勝ってしまって、私は半ば思考停止のような状態になってしまっていた。


「...思ったより驚かないんだな」

「そうですね。ここの方々が魔力を持っている事は病床で寝ているときに確かめたので」

「......なるほど」

「...えっと?」

「いやなんでもない...わけではないんだが、まぁ後でだな」


ラズさんは急に考え込む仕草をするので何か言ってしまったのだろうかと考えるも、特に余計なことを言った記憶はない。

後でわかるらしいしまぁいいか。


「二つ目の質問、というか確認なんだが、お前、出身は王都から見てどこにある」

「えーと、南側ですね。というかここはどこなんですか?」

「ここは王都から見て北側の地域だ。一般的、というか北側の人間は、王都から南の地域を以南地域、北側を以北地域って呼んでる」

「なるほど」

「これについても話さなきゃいけない時が来る、そん時にまた、な」

「また...」


どうやらラズさんはまた会ってくれるつもりのようだ。

私としても、大きな恩を返すための考えがあるので、今のところ私たちの足並みは一致しているとみて良さそうだ。


「じゃあこれが最後だ。最後はちょっとした実験なんだが...」

「実験ですか?」


おずおずといった様子でラズさんはローブのポケットから透き通った球体を取り出す。

表面の模様は水面のように微かに揺れている。

それは、表面に描かれているというよりかは、透き通った球体の内側にあるように見えた。まず間違いなく魔法関連の産物だろう。それらしく不思議な物体である。


「これを触ってくれ...って言っても何かよくわかんないと思うから先に説明するけど、これは簡単に言えば魔力量を映す鏡だ。これに触れている人間の持っている魔力量を水面に例えて投影する」

「水面ですか?」

「そう。魔力量ってのは言ってみれば川の幅みたいなもんなんだよ。川の幅が狭ければそこに流れる水は激しく動くし、幅が広い川を流れる水は穏やかだろ?それと同じようにして魔力の全体量を図ってくれるのがコイツだ」

「なるほど」


つまり、お前の実力の程度はどこなんだと聞かれているわけだ。

今まではそもそも魔力を持っている人がいなかったため自分がどれほどかなんて考えたこともなかったが、そういわれれば確かに気になる。

これで激流だったらちょっとへこむ。

球はラズさんから私に移った瞬間、模様を跡形もなく消してしまって、うっすらとした青だけを映した。

暫く経たないと出てこないのかと考えながらも、もしかして魔力が全くなかったのかだの、壊してしまったのかだの考えて不安になっていると、ラズさんが深々とため息をついた。


「やっぱりか...」

「あの...何か映っているようには見えないんですが...。壊してしまいましたか?」


思わずビクッと体を揺らして恐る恐る聞くと、ラズさんは呆れたように、それでいて少しだけ嬉しそうにそう言った。


「いやそうじゃない、そもそもその物体には壊れるって概念がない」

「はぁ...」


だとしたらこの球は何故何も映さないんだろうかと考えながらラズさんを伺うと、また一つため息をつく。

仕草はけだるげでめんどくさそうではあるが、声からラズさんが少しだけ嬉しそうな事が分かるので凄くちぐはぐに見える。


「それは何も映してないわけじゃない。見ろ、うっすら青いだろ?」

「まぁ確かに」

「そうだな...さっきは川で例えたが海にしてみるとわかりやすいかもな」

「うみ」

「そうだ、海の真ん中を考えてみてくれ、それは揺れていると表現できるほど動いてると思うか?」

「い...いえ、微々たるものだと思いますが...」


よく見てみれば球はうっすらとした青でラズさんが持っていた時と同じだ。恐らくこの球は普段は透明で、魔力持ちに触れるとうっすらとした青になるんだろう。

そうみれば確かにこの球は正常に私の魔力を映していると言えるが、ラズさんから飛び出た言葉は海というものだった。

その論でいくととんでもないことになりそうな気がするがどこに着地するんだろうか。


「まさにそれだ。お前の魔力は恐らく底がない。ほんの少しでも揺れていたなら海程魔力を消費すれば尽きると思うが、微塵も揺れていないのはつまりそういう事だろう。言っておくが他に例はないぞ。かんっぜんなイレギュラーだ」

「え」


......開いた口が塞がらない。

不時着も不時着だ。つまり私の魔力量は無尽蔵でそんな人間は今までいなかったという事だろうか。

確かに、今までに魔力の使い過ぎで魔法が使えなくなるなんてことは一度もなかった。

どうやら、それは魔法使いの中でもおかしい事らしい。

折角魔法使いがいる場所に来れたというのにその中でも私は異端だと言われ、また孤独を感じるかと思いきやここでも私は達観していた。

それは昔のような諦念とは程遠い、ともすれば楽観というようなものである。

元来、私は楽観的な性格なので楽観視は私が通常であることの何よりの証拠だろう。

なぜかはわからない。

魔力に底がないという事の重大さをよく理解できていないからなのかもしれないし、魔法使いがいないという事実だけが私にとって負担であり孤独のすべてだったのかもしれない。

...もしかしたら目の前に居る、人のことを言えないぐらい球面を凪がせていた青年がそうさせているのかもしれない。


「聞きたい事は山ほどあるだろうが、一旦後に回させてくれ。こっちから一つ頼みというか提案がある」

「何ですか」


ニヤリと笑ってラズさんは続ける。


「俺の弟子になる気はないか?」

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