4話 ヘビースモーカーは風魔法で飛ばせ
あの後すぐ、冒険者協同組合に戻りメンバー登録と役職登録をし終え、
今は、いつもの平原に向かっている三人だった。
「ハイネコにさ魔法を教えてやってくれよ?」
「なんで我がハイネコに魔法を教えないといけないのじゃ」
「まぁ、あの酒場でおごるからさ!」
「暁の酒場で奢れ、新しい魔法使いを雇うより安かろう?」
暁の酒場ここの街で1番人気の酒場だ、
いつも飲み食いしてるあの酒場とは3倍くらい、値段に差がありゴッチェも数回しか行ったことがない。
だが、魔法使いを雇ってハイネコに教えるよりも安いのも事実、
「分かった、それでいいだろう」
「やったのじゃ!」
ふと、灰猫は気づいた。冒険者カードを見て知らない名前のやつがいることに。
「ゴッチェ、私のパーティーに知らない名前がある」
「ハイネコ!それは禁句じゃ!絶対に言ってはならん!」
ビアーも酒場で見せられたときから気になってはいたのだが、
人には触れてはいけない領域もあると長い人生で覚えたのだ。
「なんで?」
「そんなの別れた恋人に決まっておるじゃろ!」
「二人だけのパーティー何も起きないはずもなく、初めは歪みあってはいたがじょじょに心が砕け、二人はただならぬ関係に…しかもまだパーティーは解散されていない寄りを戻す気じゃ!」
「ちげぇよ!頭ピンク!」
苦笑しながらツッコむ、
そんな酸っぱい関係ではなく、もっと泥臭い関係であったとゴッチェは思った。
「そもそもな、あいつは男だ」
「そう」
「つまらんのじゃ」
灰猫は素っ気なく答え、ビアーは色恋の話を聞けず残念がっていた。
「まぁ、もう会うことはなさそうだが、なんでアイツ抜けてないんだ?」
「だから、ヌシのことが好きなんじゃって」
「私は気にしないしどうでもいい、肉と酒、住む場所が提供される限り着いていくぞ」
「ハイネコ!やっぱ持つべきものは友情だな!」
「えっ?我は?」
そこからしばらく歩きいつもの平原に着いた。
「じゃあ、俺は酒でも飲みながら見てるから二人はお好きに」
背負っているリュックから一本の酒を開け飲み始めた。
「おい、ゴッチェずるい!」
「なに、おぬし1人で飲み始めてるんじゃ!」
「ここの魔物なんて酒が入ってても倒せるわ!」
ビアーは気づいてしまった。
こいつ酒ばかり飲んでるから離れられたのではと?
似たところがあるから分かる。あれは自分と一緒で、辞められないタイプのやつである。ビアー自身それが原因で仲間と別れたのだ。
こんな自由度の高いパーティーないなと思いながら、もう今日で何本目か分からない葉巻を取り出して吸う。
「はやく教えろ私も飲みたい」
こんなよくわからない女と関わりたくない灰猫だったが、ゴッチェから酒をもらうために仕方がなく教えを請うことにした。
「師匠に向かってそんな態度をとるとは我は感心しないな」
「なんて言えばいい?」
「ビアー師匠じゃな」
「ビアー教えてくれ」
「もうそれでいいわ」
ビアーは諦めたこんな野生の塊みたいなやつに礼儀を教えるということを、そして教え方は厳しくしてやろうと、
「我が闇は強大、無限の箱庭に預けるは我が魂、コンファイン、いでよワインロッド」
ローブのしたから一本の杖を取り出した。
ビアーより頭一つ小さいくらいの長さをしており
木製の杖の先端には赤色の鉱石みたいなのがはめられていた。
「では風魔法からじゃ、ちゃんと見て聞くんじゃぞ」
「今どこから取り出した?」
ビアーの懐にその長さの杖をしまえる余地がないのは見てとれたので、灰猫は不思議だった。
「魔法適性10の闇魔法コンファインじゃ」
「ある程度の大きさの物を収納することができる魔法なのじゃが、取る時完全ランダムなので杖だけしまっているのじゃ」
「魔法というのはすごいな」
灰猫はこれがあったら、各地の酒を集められるじゃないか心を躍らせてしまった。
ゴッチェと同じことを考えており、順調に毒されていた灰猫だった。
「そうじゃ、では風魔法行くぞ」
「まぁ、5ぐらいは余裕でやってもらわなきゃじゃなハイネコ」
「あ〜」
「風は自由の象徴、あらゆる形に囚われずに走り抜けろウェントゥス」
杖から暴風がふきでる見えない刃が無数に走り、草原の葉はボロボロ、地面は軽く抉れていた。
「やってみるのじゃ」
「風は自由の、囚われず、抜ける、ウェントゥス」
灰猫の感嘆の声とともに腕から暴風が吹き出る、
「なぁ灰猫その詠唱唱えなくてもいいぞ!」
遠くからゴッチェが叫んでくる。
「いや!言うのじゃ!かっこいいからな」
「面倒だしそんなにかっこよ…」
本能で察してしまった。これ以上口を開けば灰猫はあの地面のようにえぐれると、慎重に言葉を選び言い直す。
「凄く、カッコいいな、でも私は前衛だからすぐ動けるようにしたい、詠唱は無しで撃たせてもらおうかな…」
「それならしょうがないのじゃ、それによく口を閉じれたな偉いぞ灰猫よ」
無言で頷く灰猫にビアーはニコッと気味の悪い笑顔を向ける。
灰猫は数回撃っていくうちに気がついた。
魔力量を少なくすることによって風の強さを調節できることに、すこし怖い思いをしたのでビアーに軽い仕返しを考えた。
灰猫はビアーに手を向け唱える
「ウェントゥス」
強い風がビアーを襲う。
ビアーのはいていたスカートから黒色の布が見える。吸っていた葉巻は風でどんどん燃えて減っていく。
「おぉ、絶景」
呑気にゴッチェは言った。
「灰猫!!お前なにしてるんじゃ!」
怒声にビクッとする灰猫、
「おぬし、この葉巻分は苦しんでもらうからな」
「お手やわらかに」
灰猫は思った、冗談でもビアーの葉巻の煙を消してはいけない減らしてはいけないと、
それとパンツは気にしないんだなと、
「ウォーター、ウォーター、ウォーター」
水攻めにあってる灰猫見て酒を飲むゴッチェ、
遠くから見ていた彼は後にこう語る。
灰猫あいつはいいやつだった。最高の仲間だったと
「分かったか!馬鹿弟子!」
「知るか!」
そこにはあられもない姿で調教されていた灰猫がいた。
灰猫は思ったこの世には逆らってはいけない本物がいることに、
「火!」
「ファイヤ」
調教された灰猫は、火の魔法の調整も上手くなっており、葉巻を完全に燃やすことなく上手く火を着けれるようになっていた。
「体が勝手に…」
「良いぞ弟子よ」
灰猫は魔法を得た変わりになにか大事な物が失ったなと実感した。
「終わったか?」
「この借り高くつくぞ?ゴッチェ」
「まぁまぁ、暁の酒場で勘弁してくれ、でハイネコどうだった?」
「ゴッチェ、この世には逆らってはいけない人間がいる」
「ガハハハそうだな!」
笑い事ではないのにと本気で灰猫は思った。