2話 酒の味は仲間がいると美味い!
「おっ、目が覚めたか」
灰猫は逃げようとした。
知らぬ人間など全員敵みたいなものだからだ。
「待て待て、こんな夜中に山へ逃げようとするな」
凄い速さで手を掴まれてしまった。
爪をたて、赤髪の手を引っ掻いたが傷一つも付いておらず、なくなく逃げることを諦めた。
「なんなんだお前」
「いきなり引っ掻いてくるとは、ずいぶんな挨拶じゃねぇか獣人でもしねぇよそんなこと、まぁいい俺の名はゴッチェ・インペリアルだよろしく」
「そうか、手を離せ」
「嫌になってきたな」
灰猫は死ぬことを覚悟した。こんな屈強な男に手首を掴まれて逃げれる気がしない、おまけに傷もつかない、
「まずは名前でも教えてくれ」
ここで本名を明かしてもよかったのだが、そんな勇気、灰猫にはなく。狐の面をした神に言われた名をそのまま言った。
「灰猫だ」
「ハイネコね、家名か?お前の名前か?」
「知らん、周りのやつはそう言ってた」
「そうか、年齢と性別」
「16の男だ」
ゴッチェはびっくりしていた。
自分と2歳の差しかないことに、それにこの体の小ささに、女としか見えない顔立ちの良さ、足りない頭を使い導き出した結果は多分逃げたした奴隷だと考察した。
しかも綺麗で傷一つもついていない奴隷だ。
ゴッチェの読みではものすごい高価な奴隷だと踏み、
「そうか、俺の冒険者メンバーになれ」
「嫌だが」
「住む当ては?金は?」
「なんとかなる」
転移した灰猫に、そんな物用意できるはずもない、ただ灰猫には一つ生きる術を持っていた、
「どうするんだ?」
「秘密」
「どうせ盗みだろ」
灰猫は内心びっくりした。
もちろん当たりだ灰猫はここでも盗みをして生活をしようと思っていた。
「逃げ出した奴隷の多くは盗みをしてまた、奴隷に戻る。奴隷に戻るくらいなら俺のメンバーになれ悪いことはさせん、衣食住つきだどうだ?」
灰猫は考える。こいつが信用に値するかどうか、
答えは決まっている信用はできない、だが思惑はすべて見透かされて、この世界のことも何も知らないならこの男を利用すれば良いと、どうせ1人でいてもなぜだか野垂れ死にをする未来しか見えないからだ。
「分かった諦める」
「なら?仲間になるのか?」
「一時的だ」
「さっそく2人で飲むぞ!」
「は?」
ゴッチェは運と人を見る才能だけはあった。
こいつがいると旅が楽しくなると思ったそれに他にもなにかあると踏んでいる。
少なくとも、こんな綺麗な奴隷みたことがなかったから珍しさも相まって仲間にしたかった。
だが1番の理由は1人で飲む酒より仲間がいる酒の方が美味しいからだ。
1年ほど前に組んでいたエルフとの2人パーティーでの酒の味は凄く美味しく感じれた。
それをまた味わいと思ったからだ、
夜空の下、
2人で酒を交わす。
「乾杯!」
「はぁ〜」
灰猫は嫌々付き合った。
嫌々だったはずなのに、相手のペースに飲まれ完全に出来上がっていた。
もちろんゴッチェもだ。
語る気がなかったのに、酒の席に流されてしまい自分語りをしてしまった。
今までどんなことをしてきたのか、
「そうか、奴隷になる前はそんな大変だったんだなお兄ちゃん涙でるよ」
「だから奴隷じゃねぇって!兄貴でもねぇだろ!」
酒というのは心を開放できるそういう魔法みたいな効果もあるのだゴッチェは知っていたそうやって、エルフとも仲良くなったのだから、
「もう、兄貴みてぇなもんだ!」
「嫌だよ酒くせぇ兄貴」
ガハハハとゴッチェは笑う。
久々に2人で飲めて最高に楽しい夜になったとゴッチェは思った。
「なぁ、なんで冒険者になったんだ?お金なら沢山あるんだろ?」
「そうだ、皇帝陛下から金貨1000枚は貰った」
「どんだけか分かんねぇ」
「ここの街に二つ家を買えるぐらいだ」
「やっぱ、わかんねぇ!」
灰猫はあぐらをかいて、八重歯を突き出し困った顔をしている。
完全に出来上がっている灰猫は様子がおかしくなっていた。
「酒は初めて飲むのか?」
「何度かある」
「盗んだやつか?」
「あぁ」
「どっちが美味しい?」
「なんかこっちの方が美味しいな!」
「そうだろ!」
そこから二人は寝落ちをして、朝を迎えた、
ゴッチェはなにやら肉を焼いていた。
「起きたかハイネコ」
「あ、うん」
「飯を作ってやる」
昨日のことを思い出して少し恥ずかしくなってきた灰猫、
あんなに馬鹿みたいに騒いで逆にどう接したらいいかよく分からなくなってきた、
「今日はお前の装備を街で買おうと思う」
「何が欲しい?お前は盗人だからな短剣とかおすすめだがどうだ?」
「任せる」
「分かった朝飯食べたらさっそく行こうか」
「後、冒険者協会で身分も作ろう」
意味の分からない単語の羅列にハイネコは驚く、シーフと冒険者協会、装備。
そんなことを考えていたら、
ベーコンに似たお肉と目玉焼きが出てきた、味付けは凄くしょっぱい。
灰猫は思わず舌を出してしまう。
「これさ、しょっぱくない?」
「俺料理下手だからな、」
「早死にするぞ!明日は私が作る」
「おぉ!それはありがてぇ」
しょっぱい朝ごはんを食べて、さっそく街に出かけた。
この街は大きな石の壁に囲まれてあり、5メートルはある大きな門をくぐり街に入れるようになっていた。
街にはいろんな人がいる。
普通な人、耳が長いやつ、獣の耳が生えているやつ、全身獣なやつ、他にもいろんなやつらがいた。
「まずは装備からだな」
「装備ってなんの?」
「魔物から守ったりする様のな」
「魔物ってなんだ?」
「そこからなのか!?」
「魔法を使ってくる獣だよ後普通の獣より好戦的だな」
「美味しい?」
「朝食べた肉は前に1人で狩りに行ったときの魔物なんだけど」
「レッドカウっていう草食の魔物だけどけっこうでかいぜ」
「そういえば、魔法ってなんだ?」
「お前、今までどうやって生きてきたんだ…」
「まぁ、魔力量も適正魔法も冒険者協同組合のカードで分かるはすだその時にでも考えよう」
灰猫はファンタジーについて本当に知らない、知っているのは盗みと家事ぐらいしかない、
故に今の状態がどういうことなのかまったく理解できていない。
ただここが地球ではないことは、分かっていた。
どうやって今まで生きてきたのか不思議なほどだとゴッチェは思った。
とりあえず鍛冶屋に足を赴き、軽めの胸プレート、短剣と弓を渡す。
「ハイネコ弓を覚えてみないか?」
「分かった」
「後短剣だ。本当にこれでいいのか?」
「うん、これがいい」
「ダガーでいいのか」
予備のダガーも買って貰い装備はダガー2本、弓、軽めの胸プレートになった。
次に訪れたのは冒険者協同組合だ。
「初めましての方ですね、冒険者協同組合にようこそ」
「こいつに1枚作ってほしい」
「銀貨2枚ですね」
「ちょうどお預かりします」
「ではそのナイフで人差し指を軽く刺して血を出してその血を自分の冒険者カードの端にある緑の四角枠に垂らしてください」
「ハイネコ自分でできるか?」
「いける、馬鹿にするな」
ぷるぷるとナイフの先端が揺れながら灰猫の人差し指に切っ先が刺さる。
「おぉ、派手に出したな」
ぴゅ〜と噴水のように血が出ていた。
「お、お、落ち着け心臓より上に手を持っていけば止まるはず」
灰猫は正直足が震えるほど焦っていた。
今までに見たことないぐらいの出血をしているからだ。買った冒険者カードは灰猫の血で真っ赤に染まってしまった。緑の四角もどこにあるか分からないぐらいになっており、多分灰猫の血は読み込まれているだろう。
「すべて万病、怪我、傷、いかなる者も、いかなる怪我も我の魔法は癒すヒール」
「どう収まったじゃろ?我に感謝しなさい!」
「え、あ、」
謎の言葉で傷口を治すことに驚きながら、また変な人に話をかけられてしまい、灰猫は完全に言葉を失ってしてしまった。
銭貨10円、大銭貨50円、銅貨100円、大銅貨500円、銀貨1000円、大銀貨5000円、金貨1万円、
大金貨5万円、白金貨10万円
ゴッチェが皇帝陛下から貰ったのは日本円で約1000万円です。
遊んで暮らせるほどはありませんね。