9話:成長
中学校を卒業して数日、俺は感慨に耽っていた。
まさかあんなにも充実した中学校生活が送れるとは思っていなかった。
かけがえのない友人に思い出。願わくば、ブレイバー学校でも同じように充実した学園生活を送りたいものだ。
「久遠〜、準備できたの〜?」
いかんいかん。また、脱線してた。
「もう、終わるよ〜!」
「早くしなさい〜!」
気持ち的に吹っ切れた日から俺は思春期を卒業した。
それからは両親とも普通に接することができ、関係は良好だ。
「もう!お父さん車でずっと待ってるわよ〜!」
「今、行く!」
そんな両親との良好な関係だが当分はお預けだ。
今日はブレイバー学校の学生寮への入寮日。
寮に入ってしまえば、夏休みと年末年始合わせて15日しか実家に帰れなくなる。
ブラック企業ならぬブラック学校だ。
「これは持っていくか」
卒業式でみんなと撮った写真をスーツケースに詰め込む。
父親の車に乗り、後部座席に座る。助手席には当分会えないからと言って、母親が乗っている。
行き先は愛知県の豊田市にあるブレイバー学校。
「シートベルトはしたか?」
「したよ」
車はゆっくりと走り出した。
「3人で遠出なんて久しぶりね!」
遠出という程、遠くはないと思うのだがモンスターがいつどこで現れるか解らない今の時代では車で1時間以上も走れば遠出となる。
年々、ブレイバーは増えて、モンスターの討伐は進んでいるがそれでも中部地区だけでも年間数百件はモンスターによる事件が起きており、政府からも遠出、不要な外出は控えるように注意喚起がもう何十年と出されている。
特に都市部から離れれば離れる程、自然が豊かな程、討伐が遅れておりその被害は多い。
その中でも特にモンスターが多い地域は激戦区と呼ばれ、日夜一進一退の攻防が行われていると言う。
愛知県内では東三河の北部が最も激しくなる地区と言われており、ブレイバー学校はそんな地区と目と鼻の先にある。
これには理由がある。
東三河の北部にはモンスターの大量発生地点があり、魔物大量発生が発生した際にブレイバー学校は前線基地の役割を担うことになる。
俺達学生もその際には派遣されるが当然、前線には自衛隊や有名クラン、有名ブレイバーが派遣され、俺達1年生は雑用を担当する。
これが2、3年になると討伐に参加するとのことで危険が伴う。
学生達の間では試練といわれ、文字通り死亡する者が毎年出ているという。
まだ見ぬ場所に思いを馳せていると名古屋市から出て景色に違いが出てきた。
車の中では母が父と楽しそうに会話している。俺を寮に送るのが目的のはずなんだがどう見ても母は父とのドライブを楽しんでいるようにしか見えない。
寧ろ俺を送り出すことを良い口実ぐらいにしか思っておらず、ドライブを正当化しようとしている感が否めない。
仲が良いことだと達観し、車の窓から外を見る。
壊れた家屋に荒れた農地が増えてきて、ドライブには適さないと思うが母の楽しそうな表情は変わらないので父と一緒なら何でもいいのかもしれない。
寝よう。そして、気配を消そう。2人でどうぞ仲良くね。
「久遠!久遠!ついたわよ!」
気がつけば、車は停止していた。
ひとつ大きな伸びをして周りを見渡せば、うちの他にも結構な台数の車が止まっているが駐車場にはまだまだ余裕がある。
駐車場だけでこの広さは流石、戦時の際には前線基地として使われると言ったところか。
「久遠、父さん達はここまでだ。ここから先は残念だが手伝えない」
今まで見たことないくらいに真剣な顔で喋り出すから驚いたよ。
「ブレイバー学校は厳しいと聞く。だけど、お前ならやり遂げることが出来ると信じてる。なんせ俺達の自慢の息子だからな!」
「頑張って久遠!お母さんも応援してるからね」
「ありがとう、父さん母さん。俺頑張って学校で1番になるからさ!2人とも怪我とか病気には気をつけてな!」
「生意気いうようになったな」
「父さんの子だからね」
「ふふ、じゃあ久遠気をつけてね」
「ああ、行ってくる」
俺はスーツケースを引き、学校の門に向かっていく。
「(次会う時はもっと成長した姿を見てくれよな!)」
新たな生活が始まるにはぴったりな蒼天だった。
「ねぇ、あなた帰りは違う道で帰りましょ!」
「そうだな、せっかくだし遠回りして帰ろうか」
「やったー!」
これは帰ったら母親のお腹が成長してるかもな…