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31話:忘れたい日


昼休みも終了間近、姫川や俺に群がっていた女子生徒達が嘘のようにいなくなった食堂で俺はテーブルに突伏していた。


「ねぇ、久遠くん」

「…ん?」


保奈美は笑顔のまま、机に両肘をたてて寄りかかり両手に顎をのせたポーズで問いかけてくる。

一方、俺はと言えば両手を顔の前に持ってきたら某有名アニメの司令官ポーズになるのになんて考えていた。


「6人中、男は久遠くんだけだね」

「・・・」


ガスッ!ガスッ!

机の下で一方的に行われているのは彼氏に対する教育。


「ねぇ、そういうのなんていうか知ってる?」

「・・・ちょっとわからないです」


ガスッ!ガスッ!


保奈美さんやさっきから蹴っているのは椅子じゃなくて俺の足なんですよ。


「ハーレムパーティーって言うんだよ」

「すみません…」


ガスッ!ガスッ!ガスッ!


自分のした事が良くなかったと思う自覚はある為、甘んじて受けようと思う。

何だかんだで痛くならないように蹴ってくれてるようだしね。


一頻ひとしきり蹴ることで落ち着いたのか保奈美は深く溜息を吐く。


「はぁ〜もう、久遠くんならそうなるだろうとは最初からわかってたけど…」


おや?許してもらえるのかなと様子を伺うように顔を上げると睨まれるのでまた顔を下げる。


「ちょっと、不安だよ」


そう俺は断わることが出来ずにただただ了承してしまったのだ。

結果、保奈美の言う通り女子5人、俺1人というハーレムパーティーが誕生した。

内訳は剣士1人、斥候1人、魔法使い1人、鍛冶師1人、荷持ち1人と続けて了承した割には意外とバランスは悪くないと思う。


保奈美の言う通り俺が悪かったと思うがそれでも言い訳させてほしい。

周囲の牽制にも負けず、保奈美のバリアを突き破り勇気を出して話し掛けてきた相手を無碍にできるのか?俺は出来なかった…。

これが怪しい投資話とかだったら間違いなく、断った自信がある。

そもそも稼いでもいない俺にそんな話は来ないが。

決して女子の圧力に屈伏くっぷくしたわけではない。そう決して…。


「・・・ごめん」

「ホントに思ってる?」

「思ってるよ」

「ふ〜ん、来月に回復科もダンジョン見学があるけど、3年生の人達が護衛をしてくれるんだよね」


何だって!?それは聞いてない!

それは初耳だと突伏した状態からガバっと勢いよく顔を上げる。


「カッコイイ先輩とかいたらどうしよう〜うふふ」


保奈美の如何にもな表情(演技)とこのひと言で絶望の表情になった俺はドン底に落とされた気分になる。

いや、保奈美に限って浮気とかない…はず。

でも、カッコイイ先輩がダンジョンで活躍したら保奈美でも、ときめきを感じたり…。

ネガティブな思考に支配され、俺は狼狽する。


「どう?少しは私の気持ちわかった?」


そんな様子に陥った俺を見て保奈美は声を掛けてくる。

最早、涙目だった俺は保奈美の気持ちを本当に理解した。


「ほなみぃ〜、ごめんよ〜」

「わかってくれたみたいだね、よしよし」


優しく頭を撫でられながら絶対に浮気しないと固く決意するのであったが。

この時、周りに見られているという考える余裕がなかった為にこの後、忘れたいと思う日になるのであった。




〜〜〜




チャイムが鳴って、午後の授業が始まる。


「あ〜、お前らに言ってなかったが来月から1年全員がダンジョンに潜る」


俺と姫川からしたら今更何を言ってるんだ、こいつである。


「お前達は他のクラスの奴らよりもかなり早く、ダンジョンに潜ってる。昼休み中に姫川と御堂、ププッ」


こいつ!俺の恥態ちたいを見てやがったな!


「プッ」、「プッ」、「プッ」


柴田!山口!姫川!お前らもか!


「の様子を見ていただろうからわかっていると思うが今お前達は1年の中で最も実力があると思われている。つまり、どういうことかわかるよな?」


ゴクリッ!

唾を飲み込み、喉を鳴らしたのは柴田と山口か。


「無様な姿を晒した日にはどうなるだろうな?」


前回のダンジョンで苦戦した柴田と山口の顔は強張っていた。

先生からしたら上手く発破をかけれたとでも思っているのだろう。


「特に御堂、決闘ではそこそこ派手にやらかしたんだ。情けない姿を見せる理由わけにはいかないよな?」


俺を煽ってやがるな。いいだろうその挑発に乗ってやる。


「あっ!でもお前はやらかしても彼女に頭撫で撫でしてもらえるから大丈夫か!ははは」


「「「プッ!」」」


「俺も今度から褒める代わりに撫でてやろうか?あはは」

「あはは」

「くくくっ」


くっそー!お前らぁ!馬鹿にしやがって覚えていろよ!

いつか全員をぶちのめしてやると固く決意するのであった。


「後、明日の午後は3年生の序列ランキング戦があるから見学するぞ。内容は1位と3位の対戦だ」


「・・・1位と3位の対戦」


序列ランキング戦と聞いた瞬間、無意識に言葉が出ていたことに気付かないほど、明日の対戦に対して興味が湧き上がっていた。

それは俺以外の3人も同じだったようで頭を切り替えたように興味津々といった感じだった。


「お前らがどれだけ弱いか知るいい機会だ。そして、2年後までに超えられるように励め!いいな?」


「「はいっ!」」


3年生のブレイバー、第1位と第3位の序列ランキング戦。

この学校の頂上に君臨する最上位の者達の戦い。


今の俺ではどんな戦いになるのか想像も出来ないが始まる前から興奮を覚えているのは確かだ。


こんなワクワクするのは何時いつぶりか。

この夜、興奮でなかなか寝付けないのであった。


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