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29話:休日


今日は週に一度の貴重な休み。


ブレイバー学校の休みは日曜日のみで祝日も授業が存在する。

というか法律上、仕方なく休みを定めたと東雲先生が言っていた。


入りたての俺達1年生はまだ経験してないが2年生、3年生と上がるにつれて野外研修という名の遠征がある。

期間は短いもので半日、長いものになると数ヶ月なんてのもあるらしく、全生徒に合わせた休みを決めることが困難というのが主な理由になる。


遠征と聞くと大人数での行動を想像しがちだが学年毎やクラス毎で行う遠征は稀らしく、それこそモンスターパレード発生時や発生後くらいしかないみたいだ。


この遠征は学校が出した依頼や民間企業から受けた依頼を貼り出し、学生達が自分で判断してパーティーを組むなどして受ける。


これは在籍している学生達にとって成績の代わりとなる学内ランキングポイント、略して[RP]に直結しており怠たり最低基準を下回った者には厳しい補習が待っている。


依頼の例を上げると常設依頼と呼ばれる低級魔石の提出や薬草や鉱石、魔物素材の採取などだ。

討伐系の依頼はごく僅かでその危険度から学校からの完全指名制で他の戦闘系のジョブの生徒は補助職業や技術職業の生徒の護衛が最も多い依頼になる。

この依頼だと戦闘職以外のジョブはRPを稼ぐのが厳しいと思うかもしれないがちゃんと技術職には技術職専用の依頼があったりする。


低級魔石を機関銃の弾頭にひたすら加工するという不人気な依頼とか武器や防具の作成や整備などだ。



話が飛んでしまったが2、3年生がせかせかと依頼を受けている中、俺は日頃の疲れを癒す為、昼間から寮でゴロゴロしている。


もし、もっと頑張れよとか言う奴がいるのなら言ってやりたい。

俺はまだ15歳だ。誕生日を迎えていないからね。

家庭を小さな子供を持つ親でもないので部屋でゴロゴロするのは当たり前なのだ。


そんなリラックスした時間帯にスマホの着信が鳴り、確認すれば親友の徳井からだった。電話とは珍しい。


「もしもし、どうした?」

「たまには電話でもしてみようかと思ってな」

「ふ〜ん」


特に大事な用事でもないようなのでそっけない挨拶をしてしまうが内心では久しぶりに聞く親友の声は懐かしく感じる。


「おいおい、親友からの電話だぞ。もっと喜べよ」

「ワー、ウレシイナー」

「よし」

「いいのかよ!」


軽いノリで始まるのはお互いに相変わらずのようだ。

通う学校は変わっても俺達の関係は変わらない。


「ところでクラスアップしたのか?全然連絡寄越さないから気になってるんだけど?」

「いやいや、まだ入学して2週間しか経ってないから基礎トレーニングの毎日だよ」

「そうなのかよ」

「でもダンジョンには2回潜って、レベルアップしたな」

「まじかよ!レベルアップするとやっぱり強くなったって実感するのか?」

「どうだろう?1レベルだと強くなったかな〜くらいかな?」

「そっかー、でも順調にいってるみたいで安心したぜ」

「そういうお前はバスケはどうなの?」

「俺はなんとかベンチ入りした感じかな」

「おお!すげぇじゃん!1年でベンチ入りとかしかもまだ2週間だろ」


徳井の通う高校は県内では強豪と言われる学校だ。

そこで早々にベンチ入りとか余程、頑張ったのだろう。親友として誇らしいぜ。


「まあな、俺の実力なら当たり前みたいな」

「あんまり調子に乗ってると先輩にボコられるぞ」

「今時、そんなのブレイバー学校しかないだろ。てゆーか、久遠はボコられなかったのか?」

「なんだよ、そのボコられる前提みたいな言い方。まあ、似たようなことはあったけど…」

「あったのかよ!詳しく話せよ」


聞きたいという親友の為に俺は入学式の日から始まった闘争の日々を聞かせる。

教室で悪漢の2人から姫川を助け出したこととか、食堂で魑魅魍魎に絡まれる姫川を救い出して、コロシアムで決闘に勝利して1年で最強になったこと等を話す。


「へぇ〜、姫川さんと同じクラスなのかよ、俺れいれい推しなんだよな〜良いなぁ〜」

「感想そこかよ!てゆーか、姫川ってれいれいって呼ばれてんの?」

「れいれいをバカにするなよ!そもそも明らかに話を盛っただろ、お前」

「さ、さぁなんのことやら?」


ちょうど、助け舟のように放送が鳴る。

ピンポンパンポーン!


「敷地内にいる2、3年生に告ぐ!今年も1年から脱走者が出た!速やかに脱走者を確保し教員室に連れてくること、捕獲した生徒には20RPを付与する」


「おいおい!電話越しに脱走者って聞こえたけど、思ってた以上にブレイバー学校って物騒だな」

「・・・そうみたいだな」


噂では聞いていたが本当に脱走を試みる奴っているんだなというのが俺の率直な感想だ。


「なお脱走した生徒は1年補助科の浜口亨、繰り返す…」


「「・・・」」


俺は今、言葉では言い表せない感情に押し潰されている。

それは親友の徳井もなのだろう。この沈黙が何よりの証拠だ。


「なあ、れいれいの写真とか送れないか?」


さすが我が親友、切り替えが速いぜ。ここは俺も乗るべきだな。


「それはちょっと難しいかな」

「そうか…同じクラスなんだろ?隠し撮りとかはヤバイか…」

「それはヤバイなんてもんじゃねーよ!レイピアで刺されるよ!」

「おいおい、まるでれいれいがヤバイ奴みたいだろ?失礼なこと言うなよ」

「いや、事実だからな?」


ピンポンパンポーン!


「脱走者は確保された。繰り返す、脱走者は確保された」


「なに言ってんだ?れいれいっていったらお淑やかなんだけど、内に秘めた思いは誰よりも熱い子なんだぜ」


なんとも言えないキャラ設定だが一つだけわかったことがある。

姫川の奴、相当に猫を被ってたんだろうな。


「まあ、聞くだけ聞いといてやるよ」

「サンキュー!持つべき者は友だな!頼んだぜ!」

「あんまり期待するなよ?」

「わかってるって!」


徳井にはこう言ったがなんて姫川に話し掛けようか、悩むわ〜。


「あ、そうそう!近藤さんとは上手くいってるのか?」

「めちゃめちゃ上手くいってるよ!」


こんな他愛もない会話で過ごす休日もたまにはちょうどいい。


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