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24話:浜口再び


素振りの仕方を教えてもらってから3日目。

夕食を食べ終わった後、自室で1人自主練を続けている。

部屋に電気はついているがあえてともさずに素振りをしている。

特に深い意味はないが暗闇の中、外の月明かりだけを頼りに行う素振りは余計な思考を排除して、型に集中出来るような気がしていた。


振れば振る程、東雲先生の動きにだんだんと近付く感覚、されど素振りの理解が深まれば深まる程、遠ざかる感覚。

近付いては遠ざかる悩ましい気持ちを抱えながらもひたすらにサーベルを振る。

確実に日に日に上達はしてると言えるが目に焼き付けたあの動きには到底、足下にも及ばない。

それは称号をオンにして、ステータス値を上乗せしたとしてもだ。

俺はあの人に追いつけるのか不安に駆られる。

その気持ちを振り払うようにさらに素振りへとのめり込んでいくのであった。




次の日、午前中の走り込みを終えて食堂へと向かう途中、第3グランドに人垣ができていた。


何かあったのかと不思議に思い眺めていると記憶に引っかかる名前が聞こえてきた。


「浜口、お前の言うことが本当か試させてもらうぞ!」

「「吉村やってやれ!」」

「浜口のビッグマウスを黙らしてやれ!」


補助科とは思えない程、殺伐とした雰囲気だった。

そんなグランドを気付けば、俺以外のクラスメイト達も見ていた。


「俺が授かったスキル[俊足]でお前らなんて置き去りにしてやるよ!」


えっ?!この声に俺は聞き覚えがあった。


「今日は補助科が祝福を受けた日だったな。それにしても俊足を引いた奴がいるのか」


さり気なく東雲先生も見学していた。


「俊足ってそんなに良いスキルなんですか?」


質問したのは柴田だ。


「ああ、俊敏値を1.5倍にする当たりと言われるスキルだな。ポイント交換の場合は30ポイントが必要だ」


おいおい、浜口の奴マジかよ。まさかアイツ良いスキル引いたからって、ここからハーレムルート突入とか思ってるんじゃないのか。


「浜口、後で吠え面かくなよ」

「ふん!目に物見せてやるぜ!外野の奴らも刮目して見ていろ!」


流石、浜口というべきか自らハードルを上げていくスタイルは変わってないみたいだ。

走る距離はたぶん100メートルか?


「位置について、よ〜い!」


「俺の走りに驚愕するがいい!」


「ドンッ!」

「行けぇ!吉村!」

「浜口になん・て・・負ける・・・なよ」

「・・・」


さっきまでの盛り上がりは何処へいったのか、みんな浜口の走りを見た瞬間、黙った。



「吉村11秒56」






「「・・・」」


「浜口17秒ジャスト」


「どうだ!見たかお前ら風になった俺の走りを!吉村!俺の背中を眺めながら走るのはさぞ悔しかっただろ?はははっ!」


アイツ、明らかに吉村とかいう奴の方が早かったのにひょっとして走ってる時、目をつぶってるのか?

しかも、スキル俊足を得て小学生高学年の全国平均並みだし。


「さぁ!みんな食堂に行くこうぜ!」


俺は見ていられなくなってきたので気持ちを切り替えるようにみんなに声を掛けて誘導する。

ここでも強く生きてくれ、浜口…。


グランドには浜口の高笑いだけが響いていた。


食堂へと着き、いつものメンバーで食事を終えると来る時に見かけた浜口の話を振ってみる。


「そういえば、保奈美」

「何?久遠くん」

「ここに来る前に浜口を見かけたんだが」

「久遠くん、浜口なんて人、私知らないよ」

保奈美なんか顔が怖いぞ。

「えっ?!いや、俺達と同じ中学だった・・・」

「知らない人の話より違う話しようよ!」

「う、うん。そうだね」

笑顔でガチギレしてますって顔に書いてあるわ。

浜口の話題は今後禁止だな。

それにしてもアイツ、保奈美に何かしたのか?


「そういえば姫川さん達のクラス、午後からダンジョン探索なんでしょ?怖くないの?」


そうなのだ!真由ちゃんの言う通り今日の午後からの授業で俺達はダンジョンに潜る。

これは1年生の中では最速で本来は入学から一ヶ月間はみっちりと訓練を積んでからダンジョンに潜るのだが東雲先生の方針で決まった。

職員の中には早すぎるとの意見もあったらしいが職業なしの俺達はクラスアップ出来るかどうかで今後の指導方法が180度変わるからと職員会議で承認をもらったとのこと。

ちなみにクラスアップ出来なかった場合は自衛官学校へと編入してもらうと言われた。

これは職業なしでブレイバー活動は厳しいからとの理事長からの温情だそうだ。


この話が聞こえたのだろう。他のクラス、特に戦闘科の奴らが急に静かになる。

その顔には腹に一物あるといった感じだが俺と姫川相手に派手にやられた事があるからか誰も何も言えない。

休憩が終わって教室に戻ったら自分達もダンジョンに潜りたいと担任に訴えるだろうがそこはもう担任次第らしい。


「全然怖くないし、私なら心配しなくても大丈夫よ。そこら辺にいる男なんかより強いんだから」


姫川のひと言で食堂の空気が重くなった。

最近、わかってきたが姫川は結構な男前だったりする。

これはお世辞でも皮肉でもなく、褒め言葉としてだ。


「私達も来月からダンジョンに潜るからその時は姫川さんについてきてほしいな〜」

「そうだよね、男子なんかより全然頼もしいよね〜」


おいおい、回復科の女子達よ。それくらいにしてやれよ。

戦闘科の男子達、全員下向いてるぞ。

下向き過ぎて、ご飯に顔突っ込んでる奴は…いないけど着きそうな勢いだぞ。


「私は久遠くんと一緒ならどこでも・・・」


「保奈美は俺が絶対に守るから」


「「きゃー!」」

「・・・うざ」


今日も俺達は絶好調だ。



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