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19話:終結


沈黙が支配する大訓練場コロシアム


物音ひとつ誰も何も言わない。

沈黙に耐えきれなくなった俺は何か思考に耽っている東雲先生に声を掛ける。


「俺の勝ちでいいですよね」


「ん?ああ、勝者!御堂!」


その瞬間、会場が沸いた!


「おお!アイツすげぇ!」

「マジかよ!一撃だぞ!」

「1人で4人抜きだぞ!」

「ちょっと、カッコイイかも」

「今度、声掛けてみよっか?」

「ホントに人間か?ゴリラの間違いじゃないのか?」


会場からは俺を称賛する声が聞こえる。


「御堂、お前…新しいスキルを得たのか?」


興奮で沸く会場に手を上げて応えていると東雲先生の問いが耳に入る。

どう答えようか逡巡していると「いや、答えなくていい」と言ってまた思考の海へと潜っていった。


前にも説明したがスキルは個人の機密情報になるので担任とはいえ、教える義務はない。

効率を考えるなら共有して教えを請うのが1番なんだろうが生憎と俺が獲得したのはスキルではなくて称号だ。


称号についてはネット情報でも少なく、獲得条件が基本的に厳しいものが多く現実的ではないとあって考察はあまり活発ではない。

実際には秘匿している者も多いのだが。

俺が獲得した称号、大物喰いジャイアントキリングは有名で既にネットに上がっている情報ではあるが完全試合パーフェクトゲームの方は見たことがない。

ステータスがALL+20。無傷の状態の時のみと条件がつくがこれは職業なしをレベルカンストさせた時の上昇率と同じだ。

完全なアドバンテージで間違いない。


「貴様っ!何か汚い手を使ったなぁ!」

「そうだ!正当な職業ジョブである我々が負けるのはおかしい!」


会場の空気を完全に壊し、戦闘科の教師の声が場を汚すように響きわたる。


「そ、そうだよな!」

「そうじゃなきゃ、俺達戦闘科が負けるわけがない!」

「卑怯だぞ!」


未だに自分達の負けを認められない奴らが教師の発言に呼応するように騒ぎ出す。


「…うるせぇ」


近くにいた俺だけが東雲先生の声が聞こえた。


「ごちゃごちゃとうるせぇんだよ!お前らぁ!」 


今まで感じた事のない圧倒的な程の圧力。

威嚇というには生温い、殺意に似た圧力が戦闘科に向けられていた。

ある者は口から泡を出し気絶する、またある者は恐怖で漏らしズボンに染みを作り出していた。

戦闘科の教師でさえ、身構えてはいるが全身を震わせている。


「東雲講師!そこまでだぁ!」


その声は凛とした強く意思を感じる声だった。

声の主は戦闘科の生徒の後方から悠然と歩いてくる。

その姿が見えると東雲先生は放っていた圧力を霧散させた。


「理事長、何か用事でも?」


理事長と呼ばれた老齢の男。されど背筋は伸びスーツを着こなして体幹がぶれない歩みは全く歳を感じさせない。


「用事か…いて言えば、今年から増設されたクラスの視察だよ」


そういうと俺達を一瞥するとまた視線を東雲先生へと戻す。


「今の威圧は生徒達に向けて良いものではない」


理事長の発言に顔をしかめる。


「ですが聞き分けのない駄犬にはしつけは必要です」


今度は理事長が顔を顰める。


「確かに躾は必要だが生徒は犬でない。君は教員としてまだ2日目だ。今回はとがめはしないが次はないと思いなさい」


「はい、無礼な発言失礼しました」


ならばよしと一つ頷くと理事長は振り返り、戦闘科の方を見る。


「さて、戦闘科の教師及び生徒諸君」


東雲先生とは違い何も威圧はしてないがその眼差しにはえも言えぬ圧力があった。


「君達、戦闘科が強くなるのはこれからだ。何も学んでいないのに自分達が強いと勘違いするのは感心しない」


言葉を区切るとフッと微笑み、口調を切り替える。


「だがそれも若さだ。この老体には眩しく見える。これから慢心することなく、ここで多くを学びなさい。君達は強くなれる」


戦闘科の生徒達に諭すように言い終わると視線は戦闘科の教師に移る。

その視線を受けて、教師2人はぶるりと震え上がるのがわかった。


「あなた方のとった行動は教員としてこの学校、いてはブレイバーの存在意義をおとしめる行為だ。断じて許す理由わけにはいかない」


理事長の言葉に顔色を青くする2人。


「小山先生、加藤先生あなた達は前線を離れて何年になりますか?」


「わ、私は6年になります」

「わ、私は8年です」


意図がわからないといった風に2人の教師は答える。


「そうですか…環境が人を作る、また環境が人を変える。あなた達には前線に復帰してもらいましょう」


「「なっ?!そんな!」」


「性根が腐った教員はいらない。もう一度、心身ともに鍛えてきなさい。これは命令だ」


その目は東雲講師など比較にならないほど、冷徹な目をしていた。






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