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16話:称号


午前中の授業を終えた俺達は昼休みなので食堂でランチを食べている。

メンバーは昨日と変わらず、回復科プラス俺の組み合わせだ。

話はなんと言っても保奈美の回復魔法について、みんな興奮した様子で話している。

俺と保奈美は話題にされ、恥ずかしさで居心地がちょっと悪いが…。

そんなことお構い無しと言った感じで女子の話は盛り上がっていく。


そんな中、食堂の一角から怒声が上がる。


「職業なしの分際で俺達に逆らうのか!」


「なんであんた達なんかに指し図されなきゃいけないのよ!何様のつもり!」


聞き覚えのある声のする方を見れば、姫川が案の定絡まれていた。

昨日は山口達で今日は戦闘科の奴らか…。

アイツも大概に運がないのか。


「ねぇ、久遠くん、助けてあげた方がいいんじゃない?同じクラスだし…」


これはつまり、俺のカッコイイところを見たいという保奈美からの要望だ。聞かないわけにはいかない。


「そうだな。じゃあ、行ってくる」


一言、告げると席を離れて台風の目に近付く。

姫川は戦闘科の奴らに取り囲まれている。

正直、保奈美には行ってくるとは言ったがどう収めようか…まあ、ここではあれしかないんだろうけど…。


「おいおい!女の子1人を相手に寄ってたかって、戦闘科の奴らってジョブはあっても玉なしなのか?」


「誰だっ!舐めたこと言った奴!」


全員が一斉に俺を見る。


「俺だけど、お前らみたいなのがいると飯が不味くなるから食堂から出てけよ。玉なしくん達よ」


「「んだとぉ!!」」


一斉に怒声をあげるが人垣を掻き分けて、大声をあげていた奴が出てくる。


「その灰色のバッジ、お前も職業なしか」


「だったら何だって言うんだ?女相手にしか威張れない玉なし君?」


「てめぇ!無能のくせに俺達に舐めたこと言ってんじゃねぇぞ!」


ぞろぞろと揃いも揃って、姫川の次は俺を取り囲む。


「そこまでだ、お前達」


止めに入ったのは担任の東雲先生。

さっきまでニヤニヤと俺達のやり取りを見ていたことは知っている。

(教師も同じ食堂で食べている。)


「どちらが上か、ここはブレイバーらしく、決闘で決めたらいいだろうが?」


「こんな奴、決闘するまでもない!今決めてやるよ!」


馬鹿が言った瞬間、俺の直感が働く。

あっ!来るな、これ!ってね。

一瞬で食堂の空気がなまりのように重くなる。

さっきまで騒いでいた戦闘科の奴らは全員黙らせられる。

正直、ここには保奈美がいるから威圧を使うのはやめてほしいんだが。


「大口叩くのは結構だが調子に乗りたいなら結果を出せ。口だけで実力がないブレイバーほど無能な奴はいない」


まだ、威圧は解いていない。有無を言わせない気だ。


「そういう理由わけなんで午後から大訓練場コロシアムで決闘しませんか?小山先生?加藤先生?」


威圧を解き、戦闘科の剣士クラスと戦士クラスの担任に問う。


「東雲先生の言う通り、生徒達がジョブの優劣を知るのは大事なことですからお受けしましょう」

「私も構いませんよ」

「では午後からやり合いましょう」


先生同士の短い会話だが聞いた感じ、戦闘科の教師も職業なしをあなどっている。いや、東雲先生の存在があるから認めたくないと言ったところか。

東雲先生も自尊心の塊のような教師を毛嫌いしている節がある。

午後からやる決闘は上下を決める他にも教師同士の代理戦も兼ねているといったところか。

あ〜、東雲の奴、プレッシャー掛けてきそうだな。


昼休憩を終えて、コロシアムに向かう途中、東雲先生が肩を組んで保奈美達から俺を引き離してくる。


「(御堂、わかってるよな?)」


小声でみんなに聞こえないように言ってくるので心配そうにこちらを見ている保奈美に大丈夫とアイコンタクトしておく。


「(わかってるとは?)」

「(はぁ〜、この決闘に負けると3年間、戦闘科の奴らに頭にが上がらなくなるぞ)」

「(それは先生もでしょうが)」

「(なんだ!わかってんじゃん!)」

「(あの態度を見ればね)」

「(だったらあいつ等の鼻を明かしてやれ!)」

「(ならアドバイスくらいはくれるんですよね?)」

「(アドバイスか…気合い?)」

「(はぁ〜)」


呆れて離れようとする俺をガッチリ掴んで離さない。


「(まあ、待て!相手を合理的に観察しろ)」

「(合理的に?)」

「(ああ、そうだ。相手はド素人)」


俺も戦いはド素人なんだが?


「(剣士というだけで剣なんてまともに使ったことがない連中だ)」

「(ちょっと、待って!?相手、剣使ってくるの?)」

「(なに当たり前なこと聞いてんだ、当然だろ?)」

「(いやいや、学生のケンカだよ?)」

「(ケンカじゃなくて決闘な?)」

「(何が違うんだよ!)」

「(それは、お前あれだ。殺しても死なない)」

「(はぁ!?)」


大訓練場コロシアムはダンジョンコアを使った唯一の成功技術。

正確には偶然できた副産物なのだが決められた範囲内でのみ、死んでも生き返るという機能を持つという。

範囲は闘技場の舞台の上のみ、死ぬと舞台外で復活するという。


東雲先生の話を聞いても俺は半信半疑だったが絶対に死なないようにしようと思った。


「(いいか?さっきも言ったが合理的に観察しろ。そして、お前の直感を信じて徹底的に相手を打ちのめせ!情けは無用だ!)」






コロシアムの中央、食堂で姫川に絡んできた戦闘科の剣士と対峙する。


相手は剣士だからと鉄剣を持っている。

対する俺は手を保護するグローブのみ。

端から見れば、ハンデは一目瞭然だが不思議と負ける気がしなかった。

どころか自分が負けるイメージができない。


「俺はお前と違って、ジョブが剣士だからな。これを使わせてもらうぜ」


嫌らしい笑みを浮かべたまま、鉄剣の切先を向けてくるが相手を見ても微塵も怖くない。

東雲先生の言っていた合理的に観察しろという意味がわかった気がした。

相手が持つ鉄剣、普段から鉄剣で鍛えてもいない奴が上手く振れる訳がない。

下手したら振った瞬間に肩が抜けるんじゃないかと思う。


「久遠くん、頑張ってぇー!」


それと俺の後方で信じて応援してくれている保奈美のおかげか。


審判を務める東雲講師がゆっくりと腕を上げる。

その動作で相手の身体が強張るのがハッキリと見えた。


「はじめっ!」


合図とともに相手が手に持つ鉄剣を振り上げながら走り込んでくるが剣を持ったまま、走ったことなどないのだろう。

ぎこちなさしかない。


その動きに合わせて、最初はゆっくりとだけど間合いが縮まるにつれて俺は迫る速度を上げる。

急に速度が上がったことに惑わされたのか相手は剣が振りやすいように速度を緩めるか躊躇した。

ジョブが剣士だからと使ったことがない武器を使うとか馬鹿丸出しだ。


「(今だっ!)」


俺の持てる最高速度で接近すれば、間合いの内側に入り込まれた相手は剣を使おうとするこだわりからか剣を振れる間合いに必死に下がろうとする。

だがそんなことを許すはずもなく、正面からお腹に向けて、ショートアッパーを放つ。

俺の放ったショートアッパーは見事に相手の腹を捉えて、深くめり込む。

まだだ!そこから持ち上げるように拳に力を入れて、強引に押し出す。

俺が着けているグローブには少量だが砂鉄が入っている。

拳を握れば、砂鉄が固まり鉄の衝撃と拳の形で固まる為、手を保護してくれる。


素人の拳とはいえ、グローブと体重が乗っていれば、それなりの威力になる。

現に殴られた相手は鉄剣を手放し、地面で尋常じゃない程、もがき苦しんでいた。


「そこまで!」


あっという間だったな。

俺の後方から黄色い歓声が聞こえる。振り返り、応援してくれた保奈美にブイサインを送る。


ピコン!


[称号:大物喰い(ジャイアントキリング)]を獲得しました。


*自分よりもクラスが一つ以上、格上の相手に勝利した場合に獲得。

効果:相手が格上の場合、ALLステータス+20%


なんだ?称号?格上の相手?


そうか!俺のクラスは0次職、それに対して相手は1次職の剣士。

クラスが上だから格上になるのか!


「たまたま、勝ったからって調子にのるなよ!」


俺の考察を邪魔するように戦闘科の奴が負け惜しみを言ってくるがこの称号の効果を試すにはちょうどいい相手だ。


「じゃあ、次はお前が相手してくれるんだよな?それともこいつと同じで口だけか?」


「舐めるな!相手してやるよ!」




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