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13話:祝福はいかに…


教室での話も終わり、入学式も波乱も起きず無難に終わる。

その後は東雲講師案内のもと、人数が少ないので回復科と合同で敷地内の施設を回ることになり、案内中、保奈美と仲良くしている俺に対して、山口が何か言いたそうな顔をしていたが終始、無視していた。

一通り施設を回れば、少し早いが昼休みとなりそのまま食堂へと移動する。

ホントに簡潔な説明のみで次々と他の科を追い抜いていった。


食堂も各学年毎に別れており、メニューは日替わりでAランチBランチのみ。

ちなみにAランチが肉料理でBランチが魚料理になる。どちらも魔物モンスターを使った料理でこの時代ではとてもポピュラーな食材である。


食堂では俺達が一番乗りで(東雲講師の施設案内が雑な為に早く終わった)ランチは好きな方を選び、それぞれがばらけて食べていた。

当然、俺は保奈美と一緒に食べて、今日知り合った真由ちゃんと残りの回復科の2人とも女の子で一緒に食べている様は他者から見れば、まさにハーレム状態。


俺達が食べ終わるのと入れ替えるように他の科の奴らがやってきた。


東雲講師に促され、そそくさと教室に戻る。

午後からはブレイバーの祝福なるものを受けることになっている。


「さて、これから受ける祝福ではお前達にとって、スキルを得られるかもしれない数少ない機会になる」


「それはホントかよ!」


山口が鼻息荒く問いかけているが俺も人の事を言えないぐらいには興奮していた。


「まあ、待て。俺は得られるかもしれないと言ったんだ。お前達はどうやってスキルを得るか知っているか?柴田言ってみろ」


いきなりの指名に驚いている柴田が恐る恐ると言った感じに答える。


「レベルアップで得たポイントと交換する方法とクラスアップ時に自然と身につく方法と…後は努力で身につける?」


「そうだな、その3つの他にダンジョンをソロで攻略するというものがある。今回はダンジョンを攻略してもらう」


「そんな無茶だっ!俺達はまだ初日でレベルも1なんだぞ!」


山口の言うことはもっともだ。俺達はまだモンスターと戦うすべを持っていないし、心構えも充分とは言い難い。


「まあ、落ち着け、ダンジョンと言ってもこの学校が管理しているダンジョンでスライムを一匹倒すだけで攻略できるダンジョンだ」


「そんなダンジョンがあるのか…」


山口は無意識に呟いていたと思う。


「ある。そもそもダンジョンとは何か知っているか?」


ダンジョンとは今では異世界と繋がる特異な場所だとされているが声高らかに公表されていない事がある。

それはダンジョンの力の源となるコアの存在だ。

先人達はこのダンジョンコアの存在を発見すると自分達に都合の良いダンジョンを創ろうとしたが上手く操作することが出来ず、方向の転換を余儀なくされた。

次に試みられたのはエネルギーとしての利用だった。

ダンジョンコアは魔石の最上位互換と考えられており、この力をエネルギーに変えようと色々な国が研究に励んだがいずれも上手くいかず、それどころかある国では無理矢理に力を引き出そうとした結果、魔力暴走が起こり爆心地となったその地域は絶えずモンスターが発生する危険地帯と化し、人が住めなくなった。


こうしたリスクを伴うダンジョンコアの存在は数々の失敗とともに隠された。


「そういう訳で現在は簡易的なダンジョンとしてのみ利用されている。今からお前達にはそのダンジョンに潜ってもらう。重ねて言うがスキルが得られるかは運次第だ。スキルが得られなくてもアイテムは貰えるからあんまり落ち込むなよ」


東雲講師に連れられ、来た場所は敷地内の外れにある一際ひときわ厳重に管理された施設。


「ここがこの学校の中で最も重要な施設の一つ、ダンジョン管理棟だ。ここにはブレイバーの先人達がダンジョンを攻略して持ち帰ったダンジョンコアを利用した訓練用のダンジョンがある。説明した通り低位の魔物しか出ないから訓練用に使われている。行くぞ」


厳重な扉の脇には軍服を着た2人の守衛が立っているがその肩には機関銃が掛けられている。

それを見て俺達の緊張は急激に高まる。

講師が守衛にひと言二言話し掛けると守衛が操作盤に触れる。

重く厚みのある扉が音もなく、ゆっくりと開いていく。


「ここは研究棟も兼ねている正式には軍の施設になる。勝手にうろちょろすると捕まって牢屋にぶち込まれるからな」


俺達は緊張した面持ちで無言のまま頷き、講師の後をついていくのであった。

中は頑丈に作られているのか外気の影響も希薄きはくでひんやりする。

入り口の傍に堅牢な窓口があるが外からの脅威に対してというより、内からの脅威に対する造りに思えた。

ここでも講師がひと言告げると電子扉が開き、奥に進めるようになる。


「ここにあるダンジョンは低位とはいえ、人類がコントロール出来ていない以上、細心の注意が必要になる。また、このダンジョンの存在がおおやけになれば、反対団体からの反発は避けられない。他言無用だぞ。いいな?」


電子扉を3つ程、進んだ先に俺達の目的であるダンジョンがあった。

ダンジョンのある部屋は教室にそっくりでダンジョンの入り口はテレビや教科書で見たことがあるものと同じで縦横2メートル程の黒いもやが不規則におごめいる。


最初にこの中に入ろうと思った人の気が知れない。

これからこの中に入るのかと思っていると後ろから声を掛けられる。


「ようこそ、新入生諸君。私はここの研究棟で研究員をしている山田だ」


振り向けば、ヒョロヒョロとした体格に白衣を着た男が眼鏡を人差し指でクイッと上げていた。

その仕草は神経質そうなイメージを俺に与えた。


「お世話になりますね」

「ああ、今日はこれから忙しくなるから早くやってくれたまえ」

「わかりました」


研究員の棘を感じる言葉に東雲講師の表情筋が強張った気がした。

この部屋は教室程の広さで奥の壁に張り付くようにダンジョンの入り口がある。

入り口の脇には掃除ロッカーの様な物が置いてあり、講師は開くと鉄の棒を取り出す。

鉄の棒の先端は尖っており、長さは1.5メートル程。


「柴田、こっちに来い」


いきなりの指名に柴田はゆっくりと近付く。


「遅い駆け足!ついでだ全員来い!」


誰だって叱られるのは好きじゃない。全員が駆け足で東雲講師に駆け寄る。


「これから中に入って、この鉄槍でスライムを刺してこい終わったら速やかに出てこい。以上だ」


言い終わるなり、柴田に槍を渡す。

柴田は戸惑っているが有無を言わせない気配を東雲講師が出しており、恐る恐るダンジョンの入り口に近付き、その姿は飲み込まれていった。


30秒も経たないうちに笑顔の柴田は帰ってきた。


「スキルを手に入れたぞ!槍術スキルだ」


まだ、先天性技能スキルしか持っていない俺達3人は驚きと羨望の眼差しを無意識に向けていた。


「柴田、さっさと山口に槍を渡せ!それから自身のスキルを喋るな!」


柴田の結果を受けて、山口も意気込んでダンジョンに入っていく。

山口は10秒も経たずに笑顔で出てきた。


「次!」


山口は槍を俺ではなく、姫川に渡す。

面倒臭いヤツだ。姫川もいきなりでイラッとしたのかぶん取るように受け取ると両手で抱えて、ダンジョンに入っていく。

姫川もすぐに出てきたが表情は優れない。


それでも悪いが今は自分のことだ。

槍を受け取り、ダンジョンの中へ。

ダンジョンの中は外と変わらない広さと様子で床にはスライムがぷよぷよと動いている。

手に持った槍でスライムを一突き。

水風船が割れるように床には染みができた。

何も起こらないことに不思議と思うが気付けば、左手を握りしめており手の中に違和感を感じた。


ゆっくりと手を開けば、指輪が一つ。

どうやら俺は外れたらしい。


やるせない気持ちのまま、ダンジョンから出るのであった。


「全員終わったな」


東雲講師に槍を返していると研究員が待っていましたと言わんばかりに話し出す。


「みなさん、お疲れ様。この中でアイテムを引いた方は見せてください」


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