女子高生H2
フィクションです。私の思ったことです。何かを批判してるわけではありません。
目が醒めると私はどっかの国の大統領だった。
秘書とおぼしき人が目の前で今日のシュケジュールを確認しつつ淡々と告げる。
口を閉ざすと目を合わせ「行きましょう」と促す。
私はどこへ?状態だったが、身体は勝手に動き口が「ああ」と声を出す。
一体どこへ行くのだろう。
気付くとカメラの前に立っていた。多くのカメラと人に囲まれている。この状況に臆する私とは反対に私ではない自分はマイクに向かって平和とはなにかを語っている。ああ、大統領とはこんなにも恐ろしい、様々な目線が突き刺す中でも堂々と自分の意見主張を雄弁に述べるのだなと、私は知ることの無い感覚を味わった。
いつの間にか話題は核についての事柄に移っていた。
「核は恐ろしい」
「核は排除しなければならない」
「平和に核はいらない」
私もそう思う。
私は実際に見聞きしたわけではない。
が、過去に使われた戦争を授業で何度も学んだ。毎年ニュースで追悼番組が流れその事を考える機会があった。修学旅行でかの地を訪れ語り部を聞いた。その度に恐怖を覚え、平和な今に安堵した。きっと国民全てがそうなんだろうなと、そうであって欲しいと思う。
この目の前のカメラを通して、他の誰かもそう考える瞬間が訪れたらいいなと願う。
突然拍手が起こる。
周りを囲んだ数人の人々の顔に笑顔が見えた。
この人達には伝わったんだ。
ほんのりと暖かな気持ちになった。
次に気付くと狭い場所にいた。
エレベーター?
階数を映す液晶がB1、B2、と数を増やす。
数字がピタリと止まると箱も停まり変な浮遊感が消え、目の前の金属の扉が2段階に音を立て開いた。
身体が足を踏み出し薄暗い廊下を歩く。
嫌な空気が感覚を満たす。
後ろを何人かがついてくる気配がする。少し下がった隣を初めに見た秘書が歩く。
嫌だこの先には行きたくない。
病院のような白い扉の前で立ち止まる。
開けたくない。
手が扉を押し開ける。
入りたくない。
中にいた人がこちらに気付き立ち上がる。その人に向かって声をかける。先程のカメラの前で話した声音より軽い口調で。
聞きたくない。
耳鳴りがする。
見たくない。
目の前の人の顔に下卑た笑みをたたえる口許だけを残して真っ黒な油性ペンが走る。視界が大きなガラス窓の向こうにある様々な機械をとらえる。
もうやめて。
とあるマークと記号が目にはいる。
私の嫌いな。
『Pu』
部屋のあちこちにバラけたマークと記号に目が話せなくなる。
気持ち悪い。
ガンガンと鳴り響いていた耳鳴りが突然止んで私ではない自分が口を開く。
「平和を勝ち取るために核は必要だ」
「お前が平和を語るな!!!」
前髪と共に張り付く汗。息をする度に上下する肩。枕元で鳴り響く春に買ってもらったばかりのスマホ。
とても嫌な夢を見た。
ひなたはスマホから充電のコードを引き抜き、アラームをとめる。そとでは蝉があついあついと歌っている。
スマホの画面で時間を確認する。
7時30分。
これは不味い。
8時半からの部活に間に合わせるには家を8時に出ればいい。が、しかし1年生である私は早めに行かなくてはならないので10分後には出掛けなければならない。
最短で服を着替え、顔を洗い、身支度を整えていく。
リビングから「あら、ひなた。まだ出掛けてなかったの?」とのんきな声が聞こえる。
荷物を持ちリビングまで駆け足で向かうと母がテレビを見ながら朝食をとっていた。向かいの席には私の分の朝食とお弁当水筒が準備されている。「いただきます」と呟きウインナーを手でつまむ。
「こら、座って食器を使いなさい」
怒られたので仕方なく席に着き朝食を男子高校生並みにかっこむ。
「最近物騒な事件多いわねぇ~。あ、ほらこれとなり町よ?同級生がお友達とその家族をさしちゃったんですって!恐いわねぇ。あら、また政治家の裏金問題?これあれよね。叩いてる政治家は裏金問題ないのかしらって思うわよね~。」
皿を空にし麦茶で喉を潤す。
「ごちそうさま!」
食器を流しまで持っていき、鞄にお弁当と水筒を突っ込む。
「こら、食器は優しく置きなさい!割れちゃうでしょ?」
「はいはーい。ごめんねー。じゃあ行ってきまーす!」
鞄をしっかり持ち歩き出す。
視界の端に映ったテレビ画面には何かの中継が映っていた。
「気をつけていってらっしゃいねー」
母の声の裏で平和を語る男性の声がリビングに広がる。
「はーい」
玄関を飛び出した私の背後で扉が大きな音を立ててしまる。
読んでくださりありがとうございました。
前書きにも書きましたがフィクションです。
読み終わって気分を害された方いらっしゃいましたら申し訳ございません。