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横島さんは気付かない  作者: スタイリッシュ土下座
5/5

学園生活はソシャゲとともに

 僕の名は片山。今日の自分は悪に染まろうとしている。そう、ソシャゲ欲が止まらないのだ。周回しても無限に湧いて出てきてしまうスタミナを消化するのに必死であった。


「シゲ、お前またスマホやってんのかよ。楽しいけどさ」


 僕の同級生の男友達から注意を受けた。本名が片山重月なのであだ名で「シゲ」と呼ばれている。


「ごめん。最近ハマりすぎているんだ」


「またあのゲームかよ?ほどほどにしとけよ」


 そう言って彼は去っていった。だが僕は止められない。折角の休み時間なのだ。厳しい勉学を耐え抜き、生きている僕の安息の地に何人たりとも入れる訳にはいかない。


「片山君、何してんの?」


 僕は咄嗟にスマホを隠した。横島だ。僕の安息の地がこの女によって脅かされている。


「なんでもないよ。分かったなら早く向こうに行きたまえ」


「絶対何か隠してるじゃん」


 そう言って彼女は僕の手元を覗き込んだ。しかしそこには何もない。


「本当に何も無いって」


「ふーん」


 そう言って横島は去っていった。スマホを隠した時ついでに机の中にしまっておいて正解だった。


「さて、続きでもやるか」


「片山君こんなゲームやるんだ」


 さっき去っていったはずの横島が僕のスマホを覗き込んだ。


「なんでお前がいるんだよ」


「だって気になるじゃん。変な感じだったし」


「仕方ない。少しだけ見せてやる」


 そう言って僕は彼女にゲーム画面を見せた。名前は「クリロワ」。自分自身やクリーチャーを操作して敵の塔を崩壊させるタワーディフェンスゲームだ。


「あっこれ見た事ある!面白そうだよね」


「だろ?実際面白いんだよ」


 2人でワイワイと話しているとあの青髪ツインテの子がやって来た。根向田である。


「ほう.......クリロワですか.......たいしたものですね」


「ルミちゃん!お前もクリロワやってるのか?」


「まぁね~。ランクマでキングまで到達した事あるよ」


「凄いな.......上級者じゃん」


 こうして趣味の話で盛り上がっていた僕は二人にある一つの提案を持ちかける。


「折角だし僕と勝負しないか?」


「えー、でも私やった事無いし……」


 横島が断ろうとしたが強引に続けた。


「じゃあ横島さんはルミちゃんと同じチームでいいよ。2対1になるけど」


「いいよ。ボクはゲームやりたいし」


「ちょっとルミちゃん!?」


「決まりだな」


 こうして(半ば強引に)片山 VS 横島&根向田の決闘が始まった。画面いっぱいにプレイフィールドが構築される。


「わぁ.......結構本格的だね」


「横島さん、君が初心者だからと言って僕は容赦しないよ」


「楽しくなってきたね~!ボク、負けないよ」


 こうしてゲームが始まった。防衛側である僕はすぐさま城の建設を始めた。このゲームにおいて最強の一角であるヴァンパイア城の建設に成功する。


「え!?いきなり強そうな城出てきたよ?ルミちゃんどうする?」


「おやすみ~」


「寝るのめっちゃ早ッ!?」


 あれだけやる気に満ちていた根向田は既に眠りに落ちていた。ここまでの会話で集中力を切らしていたらしい。


「えー!?どうしよう?私だけじゃ片山君に勝てないし」


 僕は勝利を確信していた。このまま城を構築続けて吸血鬼を大量展開できれば相手は為す術がなくなる。


「横島さん。この勝負貰ったよ」


「えーい!なんとかなれ!」


「何ィッ!?それは.......!」


 序盤装備の中でも低確率でドロップする聖なる炎。彼女はそれを駆使しヴァンパイア達を焼き払っていた。

 再生力が強みである彼らも炎となれば対処が追いつかないのである。


「まさか……そのアイテムで僕の城を!?やめろ、やめてくれッ!」


「片山君。ごめんね」


 こうして放火魔と化した横島は僕のヴァンパイア城に火をつけた。朽ち果て乾燥しているそれは燃え易く、たちまち燃え広がっていった。

 第一ラウンド、片山敗北。


「クソっ、やるね!横島さん」


「片山君こそ。実力者だね」


 こうして眠っている根向田を除いてお互いのボルテージが高まっていた。第二ラウンドのゴングは既に鳴っている。


「ならこの城だ!氷城建設!」


 僕は魔法の力であっという間に氷の城を造り上げた。これはメタ読みという戦略である。

 先程はあえて聖なる炎を使わせたのだ。その炎は燃え尽きて次のドロップでは滅多に発生しない。弱点属性である炎のケアをした訳だ。


「さぁどうする?氷の精霊の攻撃に絶えられるか?」


「どうしよう.......!何か出ろ!」


 こうして横島が宝箱から取り出したのは金色に輝くハンマーだった。これも低確率で宝箱から入手できる武器である。


「嘘だろ.......?そのアイテムはヤバいッ!」


「再びごめんね?片山君」


 文字通りハンマー状態となった彼女は氷の精霊達を粉砕し、城を粉々に打ち砕いた!こうかはばつぐんだ!

 第二ラウンド、片山敗北。


「ならば最終手段を使うまでだ!」


「最終手段.......?」


「いでよ!最強無敵要塞!」


 第三ラウンドが始まった瞬間、僕は城を空中に浮遊する大要塞へと変貌させた。


「片山君!?ちょっとやり過ぎだよ!」


「横島さん。僕はどんな手を使ってでも君に勝ちたいんだ!」


 僕は砲台から一兆度もの火球弾を繰り出し、地上を蹂躙する──はずだった。その弾は発射されない。"何者か"がこの要塞のコントロールを奪っていたのだった。


「何でだッ!?動け!動け!」


「ボクね、このゲーム得意なんだ~」


「根向田ァ!貴様ァァーーーッ!」


 僕と要塞は爆発四散!ナムアミダブツ!僕が横島との対戦に夢中になっていた間に根向田が目を覚まし、要塞をハッキングして完全耐性を無効化したのだった。

 第三ラウンド、片山敗北。


「また負けた.......どうしてだ?」


「ふふん。これがボク達の実力だよ~」


「やったね!ルミちゃん!」


「いぇーい」


 確かに僕は負けたが、横島と根向田の満足そうな笑顔を見てホッとした。ゲームとは本来こういうものなのかもしれない。


「お前ら、休み時間中に何やってんだ?」


「「「げっ!?担任!?」」」


 ゲームに夢中になっている間、担任がやって来てしまった。この時三人とも説教を受け、一週間ほどスマホを没収されたのは言うまでもない。


「スマホ取られちゃったね.......」


「でも楽しかっただろ?」


「まぁそうだけど。遊びに誘ってくれてありがとね、片山君」


「別にいいって。僕のせいでお前らまでスマホ取られたんだし」


「いーじゃん。ボクも楽しかったよ」


 三人で廊下に立たされながら、お互いに笑い合った。

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