六、秘宝館で
秘宝館にて。
明の日課は開館前の掃除だ。
特に張形超男根さまはあやかりたいと念入りに触る来場者のもいるので、彼は念入りに消毒して拭き、埃をかぶる蝋人形たちもピカピカにしていく。
その後、可動式の人形や仕掛けに電源を入れる。
(しかし・・・暑い)
老朽化の上、クーラーが壊れたままの秘宝館ではやはり快適さがない。
ま、一種、不思議な空間でもあるので、それもまた味といえなくもない。だが、真夏では溶けてしまう。
本来なら閉館日は今日であった。
だが、この日は今後の秘宝館について話し合いをすることになっている 。
自分の情熱にて、存続に向けてという話し合いの場が持たれることになったが、一時は閉館という結論に至った流れを戻せるのかと彼は気が気でなかった。
そんなことをぼんやりと考えていると、
「おはよう」
オーナーのおばちゃんこと上村がやってきた。
「おはようございます。オーナー・・・あの」
明は上村に昨日ネットで知った各地の秘宝館の現状を伝えた。
彼女は頷きながら勝手知ったる手際で、レジや販売機に電気を入れ、着々と開館の準備をこなしていく。
彼の話が終わる頃、彼女の作業も終わった。
上村は受付兼売店裏の、自分の席にどっかりと腰を下ろす。
「まあそうね、知っているわよ。同業者だもん」
「・・・そうでしたか」
「・・・でも」
「はい」
「残したいんでしょ」
「はい!」
「じゃ、前に進むしかないでしょ」
上村の目はまっすぐに明を見ていた。それは彼の熱にほだされた決意に満ちた表情だった。
こくりと大きく彼は頷く、勿論、変わらぬ思いだ。
(ここが分水嶺・・・)
明がそわそわいろんな事を考えながらも時間は過ぎ、営業時間は終わった。
やがて・・・。
話し合いへ。