五、思い願うも
秘宝館への思い。
あれから五日が経った。今考えると何であんなのことを言ったのだろうかと明は思うのだが、彼の情熱により秘宝館は再び走り出したのだった。
明が訴えたおばちゃんがなんと館のオーナーであった。
彼が三日通いつめて直訴した結果その情熱がついに伝わり、とりあえず続けてみようということになった。
だが彼はその代償として大きなものを失ってしまった。
心は何度も馬鹿げたことだからやめようと彼を諭したが一切耳を貸さなかった。
彼女は大きなため息をついて、一人電車で帰ってしまった。
自分の犯してしまった事の重大さに気付いたが後の祭り、リストラのショック失恋のショックと二重苦だったが不思議とやってしまったことに対する後悔はなかった。
必ずなんとかなるそう信じて・・・が、夜は悶え苦しんだ。
日中、明は秘宝館で手伝いをする。
熊本のアパートを大家さんに今月いっぱいで解約することを告げ、とりあえずここでの生活はネットカフェで落ち着き、夜間のコンビニバイトも見つけた。
ついこの間まで引きこもりだったとは信じられないくらい彼は精力的に動いた。
秘宝館の再建、それは思った以上に険しい道のりだ。昭和の良き時代の産物とも言える温泉町のスポット、みたいけどみれない、当時の閉鎖されたエロ魂の救いの場かここであった。
しかしエロに関する情報がいつでも無雑作、無尽蔵に見られる現在の環境下では、はっきり言って無用のもののようにも思える。
では秘宝館はその役割を果たしてしまったのか・・・否!明は確信している。自分のようにこの素晴らしい正解かに心を熱くした人もいるはずだ。
だが現状はより厳しい、ネットカフェのパソコンで秘宝館と検索してみると、ずらっとヒットしたが、かつては全国に分布していたほとんどの秘宝館が閉館へと追い込まれているという辛い事実も知ることとなった。
明は頭に両手を回し唸った。
(どうしたものか・・・)
目を閉じ思案にふけるが、何も思い浮かばない。
(明日オーナーに話してみるか・・・)
パソコンをシャットダウンして、彼は机に置いた単行本「まんが道」を手に取った。
貫けるか。