十三、廃屋の秘宝館
お宝っ。
それから車を走らせることさらに1時間、ついにその場所へと辿り着いた。
この秘宝館が閉館したのは3年前で、現在は解体もされずに放置されているために廃墟と化している。
近くに住んでいる元オーナーに挨拶をすると、売れるものはすべて売り払ったとのことだった。
なので、中にあるもので気に入ったものがあれば好きに持っていいと言われた。
明は上村オーナーから預かった手土産を渡すとお礼を言って、心とかつての秘宝館に向かった。
闇夜に浮かび上がる不気味な廃屋、明と心は懐中電灯を照らす。
「なんかバイオハザードみたいね」
「まあね」
なんだかんだで時刻は夜の9時を回っていた。懐中電灯を照らしながら、鎖で繋がれた門の南京錠開け、さらに入口の扉には不法侵入、またいたずら防止のために、厳重に鎖でぐるぐる巻きにされている鎖を外し、古ぼけた鍵をドアノブに入れて回す。
ぎぃーという軋んだ音がし、扉が開くと目の前には動かなくなった自動ドアがあり、彼は力を込めてそれを開く。
室内へ入ると、すえた匂いに湿った空気がたちこめていた。
「さてと、まず一階からだ」
「ね、明日にしない」
「俺バイト」
「ほー、無計画ねって・・・バイトもしてるの?」
「まあね、秘宝館の思いだけじゃ、今のところ食ってはいけない・・・」
「でしょうね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「さっ行くか」
お茶を濁すように明は言うと、足元を照らし周りを確かめながら歩いた。
館のオーナーが言った通り、売れるものは売り払っただけあって、中は目ぼしいものはなく閑散としていた。
「探す手間はないようね」
「うーん」
一階はお世辞にも広いとは言えず、あっという間に見終わってしまった。
「まあ、とりあえずこのチ〇コを椅子はゲットかな」
明は目の前で無雑作に転がってる男根椅子を指差した。
「趣味悪っ」
「それが秘宝館というものでござるよ」
「はあ」
妙なやりとりをしつつ二人は2階へと足を進めた。
最後の階段を上る前に明は足を止めた。
後ろから来ていた心は明の背中に頭をぶつける。
「いたっ」
「これは・・・」
闇の中を電灯の一筋の光が、黒光りするそいつを照らした。
怒張する男根を持つ男性ブロンズ像、それを真っ裸で恍惚の表情で見る女性ブロンズ像である。
しかもこの2体、どちらもボタンがあり何か仕掛けがあるようだ。
明はそれを押してみるが反応がない、それもそのはず、当然電気は通ってないし、壊れてるようだった。
だが彼は、探し求めたものをついに見つけた、そんな興奮を覚えた。
「きっと、こいつ動くぞ!おそらくこいつたちは館のシンボルだったんだ!」
「どうでもいい」
「こいつはすごいぞ」
「ね、明君こんなバカでかい物、どうやって持って行くのよ」
「為せば成る。やればできる!」
激しい高揚感のなせる技か、明はこれより2時間半、死に物狂いで2体のブロンズ像と戯れながら、ようやく車の荷台にお宝を乗せることに成功した。
それは火事場の馬鹿力というほかに言葉は見つからない。
呆れる心をよそに、明はついに起死回生の展示品をゲットすることができたのだった(自身の心の中で)。
ゲットだぜい!




