十二、車中
ヨリが戻った2人。
助手席に座っているのは、心。今まで当たり前だったことが、再び現実に戻ってきた嬉しさを明は噛み締めていた。
ただ道中への車内は、心からこれまでのことに対して、数多くのダメ出しが行われ、彼は速射砲のような物言いにげんなりとしていた。
しかも行き先は秘宝館である。原因中の原因・・・このことをいつ言おうかと、言葉のジャブを打たれながら機会をうかがっている。
「ねえ聞いてる・・・あれ?こっち大分方面じゃないよね」
「うっ、うん」
「まさか、ご休憩するつもりじゃ・・・」
「・・・」
それもまたご無沙汰で、明は思わずうんと言ってしまいそうになった。
「私絶対に嫌よ。昨日の今日でまだ怒ってんのに」
語気強く言ってくる心に、明は圧倒される。
「・・・いや、仕事で」
「?仕事、何の?」
「うん、ちょっと」
「いいなさいよ」
「・・・はあ」
「どうぞ」
「・・・はい、秘宝館の展示品を受け取りに」
彼は正直に答えた。
「ふーん、そう・・・ひょっとして、私はついで?」
「違うよ!」
「へー」
「・・・・・・」
ふたりはそこからまた無言となった。
しばらくして心がぼそりと呟く。
「まあ別にそれは納得してないけど、自分が決めた道でしょ。堂々としてればいいと思うわ」
彼女はそう言うと、真っ暗な車窓を見た。
「ありがとう」
「どういたしまして」
心は妙に敬語を使ってにこりと微笑むと、ガラス越しにその表情が明に見えた。
彼は小さく頷いた。
ヘッドライトの光が闇を裂きながら、車は進んだ。
尻にひかれそうですなあ。




