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九、沈黙

 心との再会。


 翌日、明は熊本のアパートへと車を走らせた。

 改めて口頭で住まいを解約する旨を大家さんに伝え理由を言うためだ。

 およそ5時間の道のりの中、考えることは心のことだった。

(全く、俺は何をしてるんだろうか)

 と思いつつも自分は間違っていないと正当化する考えもある。

 ただ別れるにしても、きちっと謝らないといけないとは感じている。

 彼女の想いに対して期待に応えられなかった・・・けじめをつけないといけないという思い。

 戻る意味はそこにもあった。

 あの日以来、連絡は繋がらない。

 彼女に昨日の夜メール送り、そちらへ行くことを告げたけどやはり返事はなかった。


 高速は使わず下道で帰ると鶴見岳由布岳と景色のいい、山あいを通って車は進む。

 天候もよく5月初旬の緑眩しい山を見ていると、明は落ち着いた気にもなった。

 途中のドライブインで缶コーヒーとタバコを買い、展望所でぼんやりとタバコをくぐらせると、いろんな考えがずっと頭の中に渦巻く。

(いかん、いかん)

 足早に煙草を消すと、ひとまずその思いを押しとどめて、再び出発した。

 それでも車中でわき出す思いと葛藤しながら、ようやく熊本へ着いた。

 大家さんとアパートの解約の話とか細かな手続きは30分ほどで済んだ。

 かつての自分の部屋に戻り荷物の整理片付けを始める。

 チラりと携帯に目を移すが、未だに彼女からの連絡はない。約束の時間まで、まだ1時間あるがそわそわしだす。

 自分が一方的に終わらせたのに、身勝手に何かを期待する自分がいるのに、明は気づき、そんな自分が腹ただしかった。

 指定した場所は、かつていつも待ち合わせに使っていた喫茶店だった。

 結局、明は作業が手につかなくなり早めにお店に到着した。勝手にこちらから言いだしたことだ。やはり彼女はいない。

 小さくため息をついて席に着こうとした瞬間、大きな観葉植物の影から、心が飛び出し彼のほっぺたは強烈につねられていた。

「いたっ!」

「こっちの心の方がもっと痛いわよ!アホっ」

「・・アホって」

「アホでしょ・・・違う?」

「はい・・・ごめん」

「とりあえず、座ろっか」

 二人は向き合って席に座った。しかし、それからお互いに会話がない。

 いつも空気のようなだった2人の空間は、今日は強烈にねじまれたような感じがした。無言がとてつもなく長く感じた。

「・・・で」

 心が沈黙をこじ開け、明の言葉を促す。

「俺は秘宝館を復活させたい!・・・だから」

「なんで?」

「・・・なんでって・・・」

「どうして、それなの、急に湧いてきた、思いよね」

「それは」

 明は心の思いに、少しでも報いるため施術に話すしかないと、

「俺の気持ちが、心がそうしたいと思ったんだ」

 と、真っ直ぐに心を見た。

「そう、わかった・・・私も考えさせて」

「・・・えっ」

「私もしっかり考えてみる。その上で決めさせて」

 心は明からの視線をまっすぐ見つめ、逸らさなかった。



 はたして・・・。

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