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まだみていだからかかない
「これは、とても大変なことになった……!」
長い腰まである金髪を揺らし、碧眼の美丈夫が大袈裟に溜め息を吐く。
彼の名は「ゼウス」。
オリュンポス12神の主神にして、世界でも比肩する者のない最強と名高い全能の神だ。
そんな全知全能たる彼を、ここまで悩ませている問題。
それは――、
「ゼウス様?今月に入って、もう異世界に転生してしまった者が10名を越えております……!」
増加する異世界転生者達のことであった。
「もう、10名だと……?!」
側近たる武勇の神「ビアー」の言葉に、つい声を荒らげるゼウス。
彼は、徐に純白の大理石で出来た椅子に腰かけると、同じく真っ白な大理石製の机の上に羊皮紙を広げ始める。
そうして、何やら文をしたためながら、ビアーに鋭い声で指示を出した。
「ビアー!ヘルメスを呼べ!至急、この文を全世界の全ての神々の元へ届けさせるのだ!!!」