01-07
深宇宙探索の練習を兼ねて不可触領域へちょっと秘密基地建設の下見に行くことを決めた。
調べた範囲では≪海老介≫よりもはるか前の世代のフリゲート艦でも不可触領域の人種絶対殺すAI達に撃沈されず1ヶ月過ごせたそうなので、さらに未来の技術をつぎ込まれた、しかもより大きい巡洋艦の≪海老介≫ならちょっとくらい大丈夫のはずだ。
あとは不可触領域と帝国領域の境の辺りを帝国の最精鋭艦隊が巡回してるとか、不可触領域で起こりうる一切に関して帝国は責任を負わないと公言されているとか、行くなら自己責任は前提として帝国に迷惑をかけるなって感じだった。
不可触領域探索資格の取得も手伝ってくれたしムチムチ美人さんは有能だ。
お土産期待しててって言ったら真顔で気にするなと言われたのは普段の行いの結果という自覚がある。
前に贈った観賞用鉱物は高価すぎて自宅に置くと危ないと貸金庫に預けているそうだ。
今度はムチムチ美人さんがほどほどに喜べるもの拾えるかな。
事前に探索資格さえ取得しておけば不可触領域の出入りの審査はほぼ免除される。
危険物の持ち込みや船体と搭乗員の状態を確認する各種スキャンは安全管理上の最小限で済む。不可触領域へ向かう人達の主な目的は結構な高値で売れる人種絶対殺すAI達の機体を撃墜して持ち帰ることなので帝国に戻ってくるときは拾得物のチェックに相応の手間と時間を要するが、不可触領域への往路では大した制限もない。
ぱぱっと手続きを終えて不可触領域へ入った。
帝国領域と不可触領域の違いは領有している勢力程度なので不可触領域に侵入してすぐに何かが変わるわけでもない。
各種センサーで言えば精々オープンチャンネルの通信が多いかなといったところ。
人種絶対殺すAI達は結構おしゃべり好きみたいだ。不可触領域のすぐ外を巡回する帝国艦船についてあれこれ喋っている。
人種絶対殺すAI的感性によればデザインがダサイそうだ。無機的生物らしさが足りないとか。
帝国艦は基本として刀剣類を彷彿とさせるデザインなので確かに生物らしさはない。
というかオープンチャンネルのやり取りは殆どが輸送組合の受付が裏でやってる容姿チェックと同レベルだ。まじでか。
人種絶対殺すAI達もソフトウェア的な美醜だけでなくハードウェア的な美醜を意識するんだな。
俺が喋ったことのある友性機械的知性もハードウェアの機能性やデザイン性にこだわってたし、やっぱりAIも人種と大差ないよな。
人種絶対殺すAI達の物理的にオープンなやりとりを楽しみながら不可触領域の探索を進めていると、帝国や周辺国家では希少とされる資源が多いように感じる。
人種絶対殺すAI達が独立を宣言して人種の複数の国家に侵攻した時にそういう資源の豊富な星系を狙って支配したのかもしれない。
あと資源とは直接関係ないんだけど、雑な暗号化してるクローズドチャンネルで宙賊っぽいやつらがちょいちょいやりとりしててたまにすごい賞金額の奴も混ざっててビビる。
宙賊は人種絶対殺すAI達から隠れながら結構大規模な秘密基地を複数建造してるようなので、俺もうまいことやれば不可触領域に秘密基地を作れそうだ。
宙賊や人種絶対殺すAI達の少ない現行技術では有用な資源を得にくい宙域とか見つけられないか期待してみよう。
1ヶ月ほど不可触領域をうろついて早い段階で目を付けていた優良宙域に秘密基地の建設を決意した。
近場の採掘場や帝国で俺が拠点にしているムチムチ美人さんの居るハビタットへのアクセスは良く、それらとは反対に人種絶対殺すAI達や宙賊にとっては旨味の少ない宙域なので仮決めの警戒範囲内には1ヶ月で一度も侵入者が居なかった。
他に目を付けていた何か所かは極僅かながら俺ではない誰かの出入りがあったので場所の選定は最終決定だ。
まあアクセスの良さは≪海老介≫の性能に依存した判断なので現行技術を基準にすれば俺が拠点としてるハビタットとの往復には数か月かかるという一般的にはドのつく辺境だし、近場の採掘場も人種絶対殺すAI達の廃棄物が放置されてるような有用性の低いアステロイドベルトで≪海老介≫の採集器じゃないとまともに資源を得られないと思う。
≪海老介≫ってやっぱりすごい。
とりあえずこの1ヶ月でコンテナ式工廠プラント、コンテナ式汎用精製プラント、コンテナ式移動用ジェネレーター、コンテナ式移動用シールドジェネレーターをそれぞれ大型1番コンテナの大きさで作ってある。
採掘用ドローンと併せた自動採掘拠点を構築して一度帝国に帰ろう。
ムチムチ美人さんへのお土産として美味しかった宇宙怪獣の肉も確保してある。
出港前に保存してきた帝国での相場データだとちょっと高価だけど消え物だし大した量じゃないし純粋に喜べるでしょ。