01B-08(01-26~01-28)
01-26
人型ロボットを用いたスポーツの観戦には興味がなかったものの、自分で動かしてみると思いの外楽しくて設備や機体の改良に力を入れ過ぎてしまったかもしれない。
青年も楽しんでたし許容範囲だ……よね……。
ギフト3つ目なんて、これはもう青年の言う通り狙い撃ちされているとしか思えない。
ギフトを持つこと自体稀で、それがトゥルーギフトとなるとギフテッドの20分の1にも満たない。
更にもう1つギフトを得たギフテッドなんて、帝国の記録にある限りでは歴代皇帝の数とどちらが多いのかというレベルだ。
そして現れた強敵。
――と思ったら、青年の死角からハンドサインで即座の協力体制を提案してきた。
秒とかけずに淑女協定加盟者によるオンライントークを展開。
ギフトだからなのか、青年の幼馴染ちゃんも≪金剛城≫製インプラントデバイスと通信ができた。
青年に疑念を抱かれないように口頭でも当たり障りなく会話をしておく。
エルフさんが慣れてなくて少し慌てていたけどすぐに順応したあたりに年の功を感じた。いや、年は関係ないか。
エルフさんといえば。
長い帝国の歴史上では一例しか確認されていない安全航路の航行中にワームホールが進路上に発生した幼馴染ちゃん。
母星が無機物も容赦なく貪るタイプの回遊性宇宙怪獣による襲撃を受けたエルフさん達。
どちらが不運なのか。
01-27
ギフトがギフトを生み、ギフトがギフトを呼び、ギフトがギフトを強化する。
下手な勢力に知られたら誰も得をしない争いが始まるんだろうなぁ。
あれ? 青年所有の≪金剛城≫でギフト並というかもうギフトその物を作れるなら、青年もギフトを配る側のギフターと言える……?
……暴論ね。なにせ青年はワームホールの向こう側にいる訳じゃないんだし。こうなると『ギフト』の再定義が必要なのかしらん?
それにしても、反エルフ派を気にも留めず放置するなんて政治家でもないのに即決できるのはすごい。
善悪はさておき、その決断力はむちっとポイントが30点は固い。むちっとポイントってなんだろう。
青年は私の種族特長の肉感が好きらしいしアピールしていくつもりではあるけど、むちっとポイントはどうかなぁ……。青年の反応を見て続けるか決めよう。
幼馴染ちゃん、我等淑女協定加盟者による援護は万全だ。
撃ち落とせ!
01-28
今回のMVP選手に拍手。
とりあえず一度経験してみて悪印象はないようなのでプランAに則り淑女協定加盟者が畳みかける。
一連のスキンシップとそれに伴う感情に対して青年が悪印象を抱いては本末転倒なので、繊細なスケジュール調整を入念に組み立てた。その甲斐もあり、見事一巡。
私が予てから計画していた通り、私の種族特長を全面に押し出したダブルな私による攻勢もなかなか青年の好評を得られたのではないかと思う。
なに? 多対一における青年の奮闘が知りたいと? よろしい同胞諸君。聞かせてさしあげようではないか。
いやごめん青年。わざわざ複製身体を増やしてまで特定のスキンシップに応えようとしなくて大丈夫だよ。
私達も……同胞達はその辺の欲求が大して強くない個体ばかりだしね。
私? 私はホラ、種族的というかなんというかね? でもでもプラトニックな感じも嫌いじゃないからっ。
メインコンピューターを管理してるAIのアバター娘とのスキンシップはアレ多分、全部青年の脳内における感覚信号だけで完結してるよね……。無駄に高度だなぁ。
ん? でもあのアバター娘さん、飲食してるよね? てことは実際に物理的な干渉ができるの?
……生育食材の調理はたーのしーなー。
青年はやっぱりお隣の銀河で発生した文明との交流に乗り気じゃない。
うん。面倒くさいもんね。私達が帝国から離脱したことで、青年所有の≪金剛城≫も所属がどこなのか曖昧だし。
分かり切ってる議題でもしっかり意思の統一をしておこうとする幼馴染ちゃんはえらいなぁ。
青年の≪金剛城≫ありきなら衣食住に困らないし身近な欲求の大抵のものは叶うし、ちょっと大きな行動指針は出てこない。
あ、それでね青年。酒池肉林って言葉知ってるかな?




