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なんかすごい性能の宇宙船を拾った  作者: 工具
04_Indestructible-Fortress

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04-29

「子供を育てるなら、なにかこう……ちゃんと仕事した方が良いよね」


 ゆるくてふわふわさん、ムチムチ美人さん、先輩さんに相談を持ち掛けた。


「急にどうしたんですか? たまってるんですか?」


 ムチムチ美人さんにこの件を相談するのは間違ってたんだろうか。


「皇帝は立派な仕事だと思いまーす」


 ゆるくてふわふわさんが多分特に意味もなくばんざーいした後、俺の目の前で腕をうねんうねんと関節があるのか怪しい動きをする。わしっと掴んでにぎにぎ。いつものスキンシップだけど何十年にぎにぎしても飽きない。掌からなんか注入されたりしてない?

 あえて触れないけど俺はまだ皇帝じゃないです。


「えーっと……異次元での資源採集を金剛経済圏で事業登録しますか? そのためのワームホール探査や、採集した資源の運送および保管なども含めた事業とすることもできますし、その後の製造まで含めることも可能です。ただ、金剛経済圏は全て個人の所有物と捉えることもできるというか……そうなると金剛経済圏での活動は全て一個人の趣味の活動……? 」


 先輩さんが具体的かつ俺の求めていた提案をしてくれたが、途中から真っ当な社会と現状との擦り合わせに失敗して頭を抱え込んでしまった。ギフトは人の生活を豊かにしてくれるけど、同時に常識を破壊する諸刃の剣だってことだね。


「資源採集事業の事業主ってのはかなり良い感じなんだけど、その活動の中で俺が何をしてるかっていうと、俺ってなんもしてないんだよね」


 ≪金剛城(こんごうじょう)≫の機械的知性さん達のコミュニティが完全に自動化してくれてる。たまに面白い異次元に繋がってたりしたら教えてもらって見物に行くくらいだ。


「だから前に何人かで話してた農業でも始めようかと思って」


「話の途中が抜け落ちてません?」


 ムチムチ美人さんがきょとんとしてる。つぶらな瞳がくりっとして普段よりちょっと幼げ。


「プランクトン養殖業も良いと思いまーす」


 プランクトンってそんなに需要あるもんだっけ……あったかも?


「どの程度の規模でどういった形態の農業を行うんですか?」


 先ほどの悩みは解決したのか、それとも保留したのか、先輩さんがしょうきにもどっている。


「何も決まってないです」


 三人にしかたないなーって顔された。俺が一人で事業計画なんて立てられるわけないでしょ。


「事業と言える規模というか、子供にこんなお仕事してるんだぞって胸を張れる規模を目指すとして……子供に胸を張れる規模ってなんなんですかね?」


 ムチムチ美人さんが本質に切り込んできた。


「答えが出なさそうなのでそれは一度脇に除けて置いて」


 立方体をホロウィンドウで表示して、それを手の動きに合わせて脇に置く。

 その辺を考え始めるとね、要・不要で論じるならまず間違いなく要らない農業してるのをお仕事してるって子供に言うのは胸を張れるのかってところに行きついちゃうからね。


「まずはドンブリで育ててみますかー?」


「最初の一歩って言うならそれも間違ってない気もするなー」


 ただ、植物育てるのに使う容器ってドンブリで良いんだっけ?


「正直なところ、≪金剛城(こんごうじょう)≫の技術とリソース量からすれば、惑星規模の農業をとりあえずで試して失敗してもなんの問題もないとは思いますが」


 先輩さんの大胆な『とりあえず』には驚かされるが、ぶっちゃけそれはそう。貯蓄されてる資源の量を示す数字が大きくなるのを見るのが趣味と評しても過言ではないからね。使う当てのない資源はダダ余りしてる。


「規模以外にも、惑星上でやるのか、≪金剛城(こんごうじょう)≫の中でやるのか、専用のプラントストラクチャーでも作るのか、宇宙空間でなんやかんやするのか、その辺も一緒に決めないと駄目かな」


「宇宙空間でなんやかんや」


 ムチムチ美人さんがコイツ何言ってんだって顔してる。


「なんやかんやー」


 ゆるくてふわふわさんは何考えてるのかなんも分からない。


「宇宙で植物を育てるなんて、世界樹を生み出してしまうのでは?」


 先輩さんはシミュレーションゲームの件を思い出しているのか口元が引き攣っている。


「世界樹も、現実に存在する可能性がある以上は遭遇した時のことを考えないとって保留してそのままだね……」


 銀河を抱え込む規模の樹木とか、現実に存在するなら宇宙怪獣としか思えない。人種(ヒトしゅ)の可能性も絶無ではないかもしれないけど、あそこまでサイズ感に差があったらコミュニケーションとれるほど精神性が近いか怪しいでしょ。

 銀河規模の巨体からすれば俺なんて微生物以下のサイズ感で、俺は微生物とコミュニケーションをとろうと思ったことも実際に試した経験もない。≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーの誰かが微生物とコミュろうとしてるなんて聞いた覚えもない。

 世界樹の個体数がウン億とかだったら、俺達とお話しようとしてくれる個体もいるかもね。世界樹がウン億とか想像もできないってか、想像したくないわ。


「農業って始める前からもう難しいな」


 諦めそう。


「でも他に案ないよー?」


「もう職業皇帝で良いんじゃないですか? 皇帝のお仕事はまず子作りですよ」


 今度はムチムチ美人さんが職業皇帝を推してくる。いや、ムチムチ美人さんが言ってるのは本当に皇帝か? 皇帝の仕事で真っ先に子作りを挙げるのは違うんじゃ……違わない……?


「正直、≪金剛城(こんごうじょう)≫のみんなは経済圏でも帝国でもどっちでも良いと思っているので、気にしなくていいですよ。本質に大差ないですし」


 先輩さんはそれフォローになってるのかなってないのか微妙なラインだと思います。でも俺も正直なところを言うと、名前だけの違いしかないんじゃねって思ってます。

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― 新着の感想 ―
わかりみが深いが、その上で敢えて。 子供育てるなら働いていたほうが良いっていうのは子供が親を見て将来を想像したり、社会を学んだり、だと思うのでー。 子供たちが、社会たる金剛経済圏とはなんぞや、それ…
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