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なんかすごい性能の宇宙船を拾った  作者: 工具
04_Indestructible-Fortress

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04-26

 リーダーさんをトレーナーにちょっと体を動かそうとトレーニングルームへやってくると先客がいた。大きい方のダブルで一番さんがトレーナーとして苦労人ぽい三女エルフさんが運動していた。

 俺の方は短時間で高強度みたいなメニューだったので、大体同じタイミングでクールダウンまで終えて転がる俺と苦労人ぽい三女エルフさんのお世話をしていた奉仕過激派系の子が呟いた。


「好きな人の看病をしたいって性的嗜好があるそうですよ」


 近くでサンドバッグ殴ってる大きい方のダブルで一番さんまで聞こえるかどうかな声の大きさだったが、しっかり聞こえていた大きい方のダブルで一番さんが興味を惹かれたらしくサンドバッグを片付ける操作の後こちらへやってきた。


「続けてください」


 興味を惹かれたっていうか興味津々らしかった。

 リーダーさんはもう少し遠くでホログラムターゲットを蹴りつつ走っていたが、面白そうな雰囲気を察知したのかクールダウンしつつ寄ってきた。いや、大きい方のダブルで一番さんがインプラントデバイスの通信で呼んだのかも。


「あまり掘り下げるほど詳しくありませんので、(わたし)がその性的嗜好を知った経緯でも?」


「かまいません」


 リーダーさんが答えた。大きい方のダブルで一番さんはうんうんと軽く頷いている。


「金剛経済圏内のネットワークにそんざいする『近しい人には言えない・近しい人には理解されなかった性癖を曝露しよう』というコミュニティで見かけた書き込みなんです」


 しょっぱなからツッコミどころがあると感じたが、理解者を得たいのは人種(ヒトしゅ)の本能みたいなものだろうし、そういったガス抜きの場は必要な物かとすぐに納得した。

 苦労人ぽい三女エルフさんは虚ろに目を開いたままぐったりしている。そんなにハードなトレーニングしたのかな。


「奉仕家系の者としてはそういうシチュも良いよねくらいの話かと思ったのですが、書き込んだ人の周囲ではあまり一般的ではない嗜好だそうで」


「我々は日常的な体調不良は基本的にナノマシン治療で解消できる環境に居たので、看病というと専門施設の専用ロボットか専門職によるものという認識ですが……」


「もっと範囲を広げて、ちょっとした世話を焼きたいくらいになると一般的な感性と言えると思いますよ」


 リーダーさんも大きい方のダブルで一番さんも看病したい性的嗜好に理解を示している。でも……。


「『性的』嗜好なんだよなぁ……」


「ああ……つまり看病により性的快感を覚えているという一点を無視してはいけないと」


 だいぶ体が落ち着いてきてぽろっとこぼれてしまった俺の呟きをリーダーさんがすかさず拾う。

 え、もしかしてこのまま話に巻き込まれる?


「確かにその要素を無視してはいけませんね。『好きな人の看病をする』と『好きな人の看病をすると性的快感を覚える』では全く別物になってしまいます」


「どっちも気持ち良いということですし、細かいことに構わずとも良いのでは?」


 細かくはないだろ。マッサージと性感マッサージはどっちも気持ち良いけど、気持ち良いの質が違うじゃん? 奉仕過激派系の子はなんかもう、奉仕過激派系っていうか頭ピンク系だよ。


 ぼーっと眺めている内に大きい方のダブルで一番さんとリーダーさんと奉仕過激派系の子はある程度の共通見解を見出した。

 やってみなくちゃわからない。


 三人そろって俺を見るので、ほどほどに動けるようになっていた俺は苦労人ぽい三女エルフさんを介護するフリで時間を稼ぐ。

 寝込むなんて、生まれ故郷のハビタットで一人暮らししつつバイトしつつスクール行ってた頃に一回あった記憶がなくもないって程度だ。

 トレーニング後のぐったりしてる時は運ばれたり脱がされたり洗われたりもあるけど、体調不良で寝込むって経験がはるか昔のことになってるし、その時にお世話さえれた経験なんてない。流石に体調悪くもないのに看護されるプレイは事前の心の準備が要る。


「お加減いかがですかー」


「あぉ……ごほぇ……どぅほっ……」


「大丈夫じゃなさそうですねー」


 大きい方のダブルで一番さんはどんなトレーニングを苦労人ぽい三女エルフさんに課したんだ。何か入ってるボトルを苦労人ぽい三女エルフさんが握ってたのでそれを口元に宛がい飲ませようとしたら、ちょっと角度付きすぎたのはきっと関係ないはず。ごめんね。反省してます。


「あり……ありがとう、ございます……」


 息も絶え絶えの苦労人ぽい三女エルフさんにお礼を言われてしまった。


「いや、寧ろ溺れさせてごめんなさい」


 居た堪れなくなって正直に謝るしかない。だって俺だったら……俺だったら……相手が≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーの誰かなら大して気にしないけど、へばってるところに溺れさせる追撃をかけたのが他人だったらキレ散らかすと思うもの。


「些細な事故ですので、気にしないでください。それに、気持ちが嬉しかったので、やはりありがとうございました」


 俺はそれ以上何も言わず、そっと苦労人ぽい三女エルフさんに膝枕をすると頭を撫でさせてもらった。


「性的興奮も性的快感もないけど、看病とか介護するのにハマる気持ちはなんかよく分かった」


 じとーっと見つめてくる三人にきりっとした顔で新しい扉を開けたことを報告した。


「機会均等ルールの履行を求めます」


「求めます」


「求めます。求めてください」


 なんか最後一人違くない?

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