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なんかすごい性能の宇宙船を拾った  作者: 工具
04_Indestructible-Fortress

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04-22

 おっとり長女エルフさんの座るモフっとした椅子の周囲を、デビごっこさんを追いかけつつ奉仕過激派系の子に追いかけられてぐるぐる回る。たまに追いかけるのと追いかけられるのが逆になって逆回りになったりもする。おっとり長女エルフさんはずっとあらあらと微笑ましくアホの子三人を眺めている。


 つまるところ、俺とデビごっこさんは現実を直視したくない現実逃避で、奉仕過激派系の子はなんとなく付き合ってくれていて、おっとり長女エルフさんは細かいことを気にせず日常を過ごしていた。おっとり長女エルフさんつよい。


「そろそろ俺も現実を受け止めるか……」


「そうよな。我らが盟主様が最も……最も……どう言ったら良いんだろうこれ?」


「あ、現実逃避は終わりですか?」


「あらあら」


 おっとり長女エルフさん、頬に手を当ててあらあらって言うの似合うわー。


 俺とデビごっこさんが直視を避けていた、宇宙空間を漂う真っ黒な卵。小惑星規模の大きさがあるので本当に卵だったら成体がどれほどのサイズなのか見当もつかない。

 きっとあんなものが現れたのは、数日前に≪金剛城(こんごうじょう)≫内ネットワークで『スローライフはとても好いものですが、最近はさすがにダレ気味なので何か一発どでかいイベントを催したいと思います。つきましては奮って企画立案にご協力ください』と誰かが募集を始めた所為だ。つまり数日前の俺が悪い。今の俺は悪くない。


「どうしようね」


「どうしましょうねぇ」


 俺の呟きに応えてくれたのはおっとり長女エルフさんだけだった。奉仕過激派系の子はなぜか数人で寛げそうなサイズのふわふわもっちりクッションとサイドテーブルを用意して俺に使うよう促している。飲み物ではないヌルヌルの液体は使わないので片づけてください。


「フッ……向こう側からの接触がなされておるようであるぞ盟主様」


 デビごっこさんが俺に与えられた猶予期間が過ぎ去ったことを教えてくれた。


「言語データがこちらにある文明だったんですか?」


 完全に未知の相手じゃないならちょっとくらいは気分が軽くなるので儚い可能性に縋って一応訊いておく。


「いや、極々原始的な内容を極々原始的な光信号でやりとりしている段階だな」


「おー……最初の一歩がそれってことは、相手方はこっちと未接触だった自覚があるんじゃないですかね……」


 一方が十進数を点滅と色を組み合わせた光で発信し、相手がそのパターンを使い四則演算を発信し、みたいなやりとりをしているという。二進数から始まって交互に増やしている段階だそうだ。

 俺としては何でそんなやり取りをしているか理解できないが、こそっと奉仕過激派系の子に訊いたら、双方が平和的な接触を望む意思があると確認しあっているのだと教えてくれた。


 銀河を超えて……超えてたっけ? みたいなエルフさん達との第一接触は緊急時だったから無機質美人のホログラムがその辺りのハードルを脇に除けてくれてたんだろう。いつでも何でも無機質美人のホログラム頼りはちょっとねと俺も思うし、平和的なやり取りならじっくり時間をかけて良いんじゃないかな。


「そうねぇ。私たちの時とは全然違うものねぇ。急ぐ理由がないならぁ、腰を据えて少しずつ相互理解を積み重ねていくのが良いんじゃないかしらぁ?」


 おっとり長女エルフさんも俺の意見に賛同してくれた、ただ、彼女の時間間隔的に腰を据えてとなると最初の対面まで十年とかかかりそう。




 ――などと考えていたら、あれよあれよと技術的なすり合わせが進んで行き、言語データの解析も相互に(おこな)って突き合わせてと、≪金剛城(こんごうじょう)≫の基準時間で十日もかけず最初の対面がセッティングされてしまった。

 誰だよそんな生き急いで頑張ったの。すごい。えらい。でももう少し心の準備をする時間を俺に与えてほしかった。


「ぶっちゃけ俺が行かなくちゃいけないってわけじゃなくて安心してるんだけど、自分が行かないのに人任せにしてるのってそれはそれでツライ」


「大丈夫ですよー。今回も真っ先に立候補した機械的知性さん達のコミュニティから選抜された方々ですし、相手方も似たような立場の方々で構成された集団とのことですし」


「フッ……己が眷属を信頼してやるが良い。それこそが主人足る者の器故、な」


 相変わらずデビごっこさんのワードチョイスは正しいのかそうでもないのか分かりにくいラインを攻めてくる。


「あらあら。心配で不安なら手をつないであげましょうかぁ?」


 手を繋ぐのってなんかすごい安心できるので(やぶさ)かでない。

 偶然にも十日前と同じメンバーで固まっていたので、十日前と同じ数人で寛げそうなサイズのふわふわもっちりクッションとサイドテーブルを用意してもらって三人とくっついて不安を紛らわせる。

 ≪金剛城(こんごうじょう)≫内では俺の複製身体と同じ数だけ似たような塊が作られているが、未知の文明の未知の集団と接触するなんて機械的知性たちが下手なことにならないかの不安は全然紛らわされない。


 俺の心配に反して何事もなく交流は行われ、互いに作成した翻訳データの擦り合わせやそれぞれがどういった集団であるのかなど伝え合ったらしい。

 銀河を統一した蟻由来人種(ヒトしゅ)の国家とか、相手さん、ちょっと予想以上の規模でした。

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