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なんかすごい性能の宇宙船を拾った  作者: 工具
04_Indestructible-Fortress

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04-16

 インプラントデバイス使用禁止期間にも皆慣れ、あっちこっちからわんにゃーぎゃーぴーひょろじゃきーんと聞こえてくるのが日常と化している。たまに明らかに爆発音みたいなのや金属をひっかくような音も聞こえてくるが、調べてみるとちゃんとそういう鳴き声の動物がいる。その度に宇宙は広いと感嘆する。めっちゃうるさい。

 いつぞやムチムチ美人さんが愚痴をこぼしていたように、インプラントデバイスが使えないとまともに研究ができず、なんかもうちょっとうるさいくらい別に良いやでインプラントデバイスを使う人が増えてしまった結果だ。

 今のところ人が集まるところではインプラントデバイスを使わないように皆が気を付けているものの、とっくのとうにペナルティがペナルティとして機能していないため、暫定的に違反者周辺の区画で鳴き声を撒き散らす措置がとられた。そのうえでインプラントデバイス使用禁止期間を終了するか、動物の鳴き声とは別で集中を乱す様なバリエーションを盛り込むかでだらだら議論が進んでいる。


「そろそろ刺激的なイベントを催したいですね」


 未だにインプラントデバイスの使用禁止を厳密に守っている数少ない一人である先輩さんが唐突に切り出した。

 先輩さんの他にインプラントデバイス使用禁止期間をちゃんと過ごしている人は、俺とか、人にお世話されるのに苦痛を覚えないし基本的にのんびりしているエルフ四姉妹さん達くらいしかいないんじゃないかな。


「刺激的って言ってもなー。なんかある?」


「そうですね……なにも思いつきませんね」


 先輩さんもなんとなく話題として提供してみただけで具体的な案の持ち合わせはなかった。ゆるーい。でもまあ、そういうものらしい。

 インプラントデバイスを使えないとちょっと空いた時間でちょっとあれやってとかが無くなるし、そもそも時間を確認できないので時間というのをあまり気にしなくなるとかで大らかになるというか、端的に言えば大雑把になる傾向があると誰かが言ってた。惑星住みだとまた違うんだったかな。そうでもないんだったかな。何でも良いか。


「刺激的といえば農業ではありませんか?」


 一緒にだらだらしていた駐在エルフさんがふと気づいたように刺激的ななにかの例をくれた。くれたんだけど。


「農業って刺激的なの?」


「もちろんですよ。なんたって、失敗すると銀河系まるごと飲み込むような宇宙怪獣が誕生したりするんですよ」


 ああ、いつぞやのシミュレーションゲームで駐在エルフさんが生み出して世界樹って呼ばれるようになったアレね。


「でもアレは一応、まだ、現実には存在していないんでしょ?」


 現実並みに現実を再現するギフトのシミュレーターを使ったシミュレーションゲームだから、シミュレーターの中にデータが存在するものは現実でも再現できるとはいえ、銀河系を飲み込む樹木の形をした宇宙怪獣は危険すぎるってことでデータは厳重に封印されたはずだ。


「今のところ現実には存在を確認されていませんけれど、存在しうる可能性は立証されたわけなので……」


「今ここに存在しなくても、今どこかには存在するかもしれないし、今どこにも存在しなくても、いつかどこかに存在するかもしれない」


 金属光沢のある黒い液体をちびちび飲んでいたツルスベさんがあんまり聞きたくない結論を言ってくれた。


「つまり、農業どうこうを別にしても、あの宇宙怪獣な銀河規模樹木との付き合い方を模索しておいて損はないということですね」


 なんらかの形でコミュニケーションが可能なら宇宙怪獣の定義から外れて人種(ヒトしゅ)になるかもしれないし、そうじゃなくても有効利用する方法だとか、最低でも撃退する方法や、できれば駆除する方法を知っておくべきだと。

 先輩さんがさっくりまとめてくれた。


「そんな感じですね」


「避けて通れない」


 にっこり駐在エルフさんと、無慈悲な無表情ツルスベさんがどちらも頷く。


「確かに刺激的な話だわ」


 ちょっと喋ってただけですごく疲れた気分になった。

 あ、でもすでに誰かが何かしら計画を立ててるかもしれない。あとで≪金剛城(こんごうじょう)≫内ネットワークのパブリックスペースでも確認しておこう。


「よし。刺激的な話は棚上げして、むしろもっと穏やかな、それこそ宇宙怪獣とは無関係な農業とかの話をしよう」


 俺みたいなハビタット生まれハビタット育ちからすると、農業っていうのは金持ち向けの娯楽品を作る仕事ってイメージだ。でかいプラントで、空間に対して生産量が少ない非効率なやりかたで、摂取の労力に対して得られる栄養価が少ない非効率な食用植物を作る。もっと別のことにそのリソース使えよみたいな。

 でも、惑星生まれ惑星育ちのエルフさん達的には違うって前に聞いたような気がする。そこのところ詳しく。


「そうですね……富裕層向けの娯楽品ではありませんが、生産性や効率とは無縁なので、趣味みたいなものでしょうか。私達の種族は、食用植物を作らなければならないほど食事の必要もありませんから。あ、でも同じ星の他の種族の人達にとっては食料を作るのは集団形成において必須だったはずです」


 そういえばエルフさん達はほとんど恒星光と水で生きられるんだっけ。


「趣味でやるならのんびりした感じ? やっぱり実際の農業は刺激少ないんじゃない?」


「どうなんでしょう? 趣味でやってる人達はほぼ機械を使わずに、日照時間や天候や土の成分比率などの計算をして育てる植物を決めたり、土を耕したり植えたり収穫したりを手作業でやっていたので……頭脳労働も肉体労働もどっちもガツガツやっていましたよ」


「(脳細胞にも筋肉にも)刺激的なんだねー」


 でも駐在エルフさんが例に挙げた人が、趣味でやるからこそ機械を使わないって人だったなら、その辺りは自分でどのくらいやるかを決めればそんなきつくないかも。植物がにょきにょき育つ映像は見てて面白かった記憶があるし、その内ちょっとやってみようかな。


 とりあえずいまは、先輩さんとツルスベさんがいつの間にか始めてるカップでボール隠したり手で握りこんで隠したりする遊びに混ぜてもらおう。さっき左端のカップに入れてたのになんで真ん中のカップにボールがあるのか気になって仕方ない。

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