01-12
深宇宙を放浪しはじめて宇宙標準時間で半年経ち趣味で料理に打ち込んでいた人達が持ち前の能力を発揮して味も見た目も栄養価も大変すばらしい食事を日々ご馳走してくれるようになったのとは全く関係なく、トラブルに遭遇してしまった。
いつものように美味しくて見栄えのする朝食をもらったあと俺の私室みたいになっている≪金剛城≫のコントロールルームに戻って感覚を接続させてみるとワームホールを見つけてしまった。
なんとなく面倒事の臭いがしたので全速力で離脱しようとしたところ、初期設定をいじっていなかった所為で船から一定範囲内にワームホールが観測されたという警告が船内に響き渡る。
ムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達が続々とコントロールルームに集まり、トラブルの種から逃げようとしたと説明すると呆れられてた。
ムチムチ美人さん曰く、ワームホールを発見して即逃げるのは一般的には何も間違っていないが≪金剛城≫には高性能なセンサー類があるのだからワームホールの状態を確認して判断するのでも何も遅くないとのこと。
あとこんなすごい船で深宇宙の探索に来ているのだからもうちょっと冒険心を持っても良いんじゃないかと。
皆さんワームホールの観測に興味津々なので大人しく転進して良い感じの場所を探し始める。
俺もなんとなく面倒くさくなりそうってだけで放置するには惜しいかなとも思ってたし背中を押されたからには楽しんでおこう。
何かトラブルが起こって大変な思いをしたとしても≪金剛城≫に乗っている限り取り返しのつかない窮地に陥るのは想像できないというのもある。
まさかワームホールから恒星が飛び出してくるということはないでしょ。
ワームホールを眺め始めて10日も過ぎれば元々そういった趣味を持っていた一部の人以外は日常に戻っている。
今でも楽しそうにワームホールを眺めてる人達的にはこれほどしっかり安全を確保して高精度なセンサー類でワームホールを観測できるなど現代では考えられないそうだ。
≪金剛城≫もそのセンサー類もどっちもギフトみたいな物だもんな。
俺達がワームホールを発見したのは発生の初期段階だったようで観測を続けること1ヶ月でワームホールは消え去った。
後に残ったのは満足気な数人の笑顔と、直径3メートルで見る角度によって色が変わる透き通った真球っぽい何かと、その真球っぽい何かを見つめる何人かの渋面だった。
とりあえず真球っぽい何かは≪金剛城≫の超高性能解析機材で徹底的に検査する。機材に放り込んで暫く放置だ。
≪金剛城≫の超高性能解析機材での解析にしばらくかかるってのがもうただごとじゃないんだけど気にしてはいけない。
ふと思い立って身体強化措置というものを自分に施してみた。
大した理由はなく、強いて言えば私室と化した≪金剛城≫のコントロールルームと皆で食事をする食堂との往復にかかる時間を減らしたいなとかそんな感じ。
ところが想像以上に身体を動かす感覚の変化が大きく、わざわざ施設ユニットのアスレチックを設置してしてしまうほどはしゃいだ。
あと進路上にあったから大量に採集してしまった氷を活用してみようとプールを設置してみたら泳ぐのがとても楽しく新しい趣味になった。
風呂も金持ちの趣味くらいにしか知らなかったが試してみたら悪くない。
こんな贅沢に水を使うなんて≪千亀≫で運送業やってた頃にはやってみたいとも思わなかったのに人生不思議なもんだ。
プールや風呂は俺だけではなくムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達にも好評なんだが、弊害もある。
巨大な≪金剛城≫とはいえ1年も一緒に暮らしていると遠慮がなくなるものなのか、プールで使うことをマニュアルで推奨されていた水着のデザインに普段着が似てきているのと相まって、俺にとっては女性陣の恰好や振舞いはちょっと刺激が強くなってきた。
以前は各種機器を内蔵しているボディラインの分かりにくい全身スーツを着て行っていたトレーニングも最近は水着みたいな最低限が隠れていれば問題はないとでも言いたげな恰好でやってるし、その恰好のままシャワーを浴びて着替えることもなく食堂でくつろいでいたりする。
回数は少ないものの、下半身の下着だけ身に着けたほぼ全裸で首にかけたタオルがかろうじて胸を隠してる姿も見かけている。
相手は気にしなくても俺はなんとなく悪いことしちゃった気分になるのでやめてもらいたい。




