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なんかすごい性能の宇宙船を拾った  作者: 工具
04_Indestructible-Fortress

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04-09

 亜次元限界深度チャレンジで発見してしまったモノは、端的に言えば生産性の皆無な迎撃要塞らしい。国家規模の戦略的に重要な宙域を塞ぎ、敵性宇宙艦隊を迎撃するための防衛型建造物。

 控えめに表現して食指が動かない。


 色んなプラントを内部に抱えることができ、プライマリーヒューマン換算で数十万だか数百万だかの人種(ヒトしゅ)が永住できる、我らがお(うち)の≪金剛城(こんごうじょう)≫。

 ≪金剛城(こんごうじょう)≫と比べると機動力や永住できる人種(ヒトしゅ)の数がぐっと少ないけど、色んなプラントを抱えている点では差がない、ツルスベさんがデザインした≪日長城(にっちょうじょう)≫。

 あとなんかほかにも結構沢山あった気がする、製造型だったり研究型だったりの≪金剛城(こんごうじょう)≫や≪日長城(にっちょうじょう)≫の兄弟みたいな姉妹みたいな、でっかい建造物。


 今まで俺が作ってきたモノを列挙すれば明らかなように、正直なところ、純粋な兵器とか持ってても使い道がないから生産性がないならあんまり興味がない。でも危ないものなので一度しっかり確認して管理下に置きなさいってみんなに言われてしまった。

 仕方なくぱっと行ってさくっと回収することが決定。現時点ですでに無機質美人のホログラムが迎撃要塞の制御を掌握しており、機械的知性達が一応の安全確認も済ませているので≪金剛城(こんごうじょう)≫で移動を開始。


 なお、海老シリーズは基本機能として各種コンテナ式プラントを抱えられるので生産性があるし、蟹シリーズは純戦闘用のモノも母艦という枠組みなのでセーフとする。何がセーフなのかは自分でも分からないが、蟹シリーズもコンテナ式プラントを接続できた気がするからたぶんそんな感じでセーフ。

 コンテナ式プラントが生産性を有しているだけじゃないかという疑問は気づかなかったことにする。


 あと純粋な兵器で思い出したけど、無機質美人のホログラムが姉からもらったとか言ってたどこぞの帝国のレガリアみたいな扱いを受けてた戦艦ってどこにやったっけ? まあ、一度存在を思い出せたならその内また思い出すだろう。その時考えればいいか。俺じゃないんだし、貰った当人の無機質美人のホログラムがちゃんと管理してるでしょ。


 思考は逸れたが、今は技術の吸出しくらいでしか生産性を見いだせない迎撃要塞の回収だ。


「ぶっちゃけ、機械的知性に任せて持ってきてもらう方が無駄はないよね。当人たちもそういうお使いは任せてもらいたがってるし」


 しなやかスレンダーさんがほんのり暖かいカーペットを敷いた食堂のリラクゼーションスペースで寝転がり、傍に座る俺の足を手でてしてししてくる。

 いつものごとく俺の両足の間に座り込んで俺を背もたれにする小さい方のダブルで一番さんが、逆にしなやかスレンダーさんの手をてしてしし返している。

 いつものごとく俺を抱え込むように座っている大きい方のダブルで一番さんは、我関せずと握力を鍛えるグリップをぎゅっぎゅぎゅっぎゅしている。


 遊んでほしいのかなと、指の半分くらいの太さのよくしなる棒に指2本分くらいの長さ太さのふわふわクッションをくっつけたような、しなやかスレンダーさんお気に入りのオモチャを揺らしてみる。

 ネコジャラシとかいう名前だったか。猫系由来人種(ヒトしゅ)の必須アイテムだと聞いたことがある。ネコジャラシのネコは猫由来人種(ヒトしゅ)の猫となにか関りがあるのかもしれないと唐突に気付いた。これは大きな発見だ。


「別に大した発見じゃなーい」


 小さい方のダブルで一番さんがなにやらホロウィンドウにデータを開いてくれた。

 エノコログサ? 犬の尻尾に形が似ていることから犬の尾草と呼ばれ、そこから発音の転じたエノコログサが、猫が良くじゃれるということでネコジャラシの俗称を持っていると。

 つまり、このしなやかスレンダーさんお気に入りのオモチャは猫と直接的な関りがなく、エノコログサを模した形だからネコジャラシであって、猫をじゃらすためのものだからネコジャラシというわけではない?


「いやいや、別にお気に入りってわけじゃ――あ、ああ……」


 しなやかスレンダーさんが何かほざいたので目の前でネコジャラシを揺らすと、思わずといった様子で手がゆっくり伸びてくる。

 小さい方のダブルで一番さんはネコジャラシではなく、ふらふらするしなやかスレンダーさんの手を邪魔するのが楽しいらしい。愉悦って言葉が似あう横顔してらっしゃるのが一瞬見えた。


「そんなに深く考えなくても、猫をじゃらす形状を追及したらエノコログサと似た形になったのでネコジャラシという名前になった、とかでも良いのでは?」


 グリップをぎゅっぎゅぎゅっぎゅしている大きい方のダブルで一番さんが順当に考えればそうだろう意見をくれた。


「ネコジャラシはさておき、さっき話に挙がったように、わざわざ≪金剛城(こんごうじょう)≫で行く意味も薄いのではありませんか」


 ぎゅっぎゅぎゅっぎゅしていたグリップを俺がまばたきする間に片付けた大きい方のダブルで一番さんが話の流れを修正。


「一番頑丈なのは≪金剛城(こんごうじょう)≫だし、もしあの砲撃? を受けても≪金剛城(こんごうじょう)≫ならシールドすら()かれないないらしいし、安全第一でいきたいなと」


 ≪金剛城(こんごうじょう)≫の設備は常に一番良いものを揃えるように無機質美人のホログラムや機械的知性達に頼んであるため、何をするにしてもとりあえず≪金剛城(こんごうじょう)≫を使っておけばたぶん大体問題ないの精神。


「うぅん……こうなると、なんでも≪金剛城(こんごうじょう)≫で片付けられるというのも良くない気がしてきますね」


 大事なものは大体≪金剛城(こんごうじょう)≫に置くようにしてるから、何かあったら一瞬で全部失うことになりかねないリスクがあるのは無視できない。

 でも≪金剛城(こんごうじょう)≫が破壊されるって、もうそれ俺達にとってはどうしようもないよね。


「複製身体を制御できる範囲がもうすこし広ければ万事解決するんだけどね」


 ネコジャラシに手を伸ばしては小さい方のダブルで一番さんにぺしっと邪魔されてるしなやかスレンダーさんが、それができたら苦労しないよねって誰しも望む解決策を話題に持ってきた。大雑把な単位でいうと、複製身体は本体を中心に恒星系一つ分くらいの直径内でしか動かせない。複製身体は便利なんだけど、便利過ぎてもっと上を望みたくなる不思議。


 ≪金剛城(こんごうじょう)≫でおでかけするリスクには関して現実的な話は終わりな雰囲気になり、そのままだらだらあれほしいとかこんなんあったらいいなとかダベってる内に、目的宙域に到着して迎撃要塞の回収が終わっていた。うん。結局は機械的知性達に丸投げしちゃったわ。

 今回一番の収穫は迎撃要塞そのものよりも、そのエネルギージェネレーターだったと思う。≪金剛城(こんごうじょう)≫で使ってるのよりもかなりすごいらしい。なにか面白いことできないか考えてみよう。

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