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なんかすごい性能の宇宙船を拾った  作者: 工具
04_Indestructible-Fortress

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04-07

 俺が顔を覚えてない人が≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーを名乗るのは良くないとの≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーの総意があり、ちょっと面白そうな人だし話してみようという俺の意思とはまた別口でギフテッドの人と俺が顔を合わせて話したりする場が設けられた。


 ギフテッドの人、対、俺アンド悪そうな顔でフォークぺろぺろしてた子アンド奉仕過激派系の子。

 ファイッ。


 って感じで初っ端に盛り上げたらギフテッドの人が気絶して即退場。近場の医務室でメディカルポッドにぶち込まれた。


「よし。直接当人を知ってる人の話を聞きつつ、クルー名簿から為人(ひととなり)を把握しよう」


「最近は忘れていましたけれど、ご主人様は対人コミュニケーション能力に(いささ)かの瑕疵を抱えておいででしたね」


「でもでも、身体的コミュニケーションの一分野では百戦錬磨で熟達の域じゃない?」


 悪そうな顔でフォークぺろぺろしてた子は控えめかつ婉曲的に俺の欠点を指摘しようとして大仰な言い方になってるし、奉仕過激派系の子は本当もう頭の中まっピンクで流石はムチムチ美人さんの後継者だ。

 当人たちに悪気はない分、余計に俺の心をえぐってくる。


「いや、でもほら、あの人が倒れちゃったのは俺悪くなくない……?」


「『さあ、これから三対一で殴り倒すぞ』って雰囲気でご主人様に呼び出されたら私でも倒れますよ」


「傍にベッドがあったら大丈夫だったんじゃないかなって思います」


 頭まっピンクはさて置き、そんな殴り倒すぞって雰囲気あったかな。


「彼女がドアを開いてから聞こえてきた音楽がすでにここは戦場だと示してましたよ。お二人が椅子に座ってから鳴ったカーンという音がトドメですね。人型ロボットで格闘戦やる時使ってる試合開始の合図ですよね」


 お茶会場入場BGMも談話開始ゴングも、気分を高揚させるならこの辺りかなと用意したやつだ。ちょっと盛り上げ方の方向性がまずかったらしい。

 原因はともかく当人不在と相成ってしまったが、当初の予定通り俺が最も知らない≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーに対する理解を深めていこう。


 まず最初は一番のアピールポイントと自己申告している彼女の持っているギフトについて。

 端的に表現すると、電子戦に強い小型コンピューター。小型って言っても家具の隙間とかに手を入れようとすると邪魔くさい大きさのゴツイ腕輪だし、電子戦に強いって言ってもギフトが相手だとあんまり便りにならない程度とのこと。

 このコンピューターはハードウェアとソフトウェアがセットのギフトになっていて、帝国があった銀河の現行技術では解析のしようもないプロテクトがかかっている。

 添えられている注釈によると、無機質美人のホログラムとは無関係な、持ち主が変わり続けるタイプの昔から存在するギフトだと記述されてる。


 そういえば、俺が国家元首? だかになる国も帝国らしいし、もうこの帝国ってワードだけで俺の出身国を指すのはやめた方が良いのかな。もう国家としての体制が崩壊――した? する間際? だし、元帝国とか呼ぶべきかもしれない。

 あとあの銀河の文明の技術レベルを観測して評価してるの誰なんだろう。意味あるのかな? 意味がないならやらないか。


 帝国どうのこうのはさておき、一番便利な点は、完全にシールドされた、外部出力端子やエネルギー供給が断たれた記憶媒体でも非接触で接続して中身を吸いだせること。もちろんこれも大概のギフトには通じない。トゥルーギフトがどうとか書いてあったけど、そう言えばそんな分類も前に聞いた覚えがあるかもしれないと思いました。


 この非接触で記憶媒体の中身にアクセスできるというのは面白そうだ。でも、≪金剛城(こんごうじょう)≫はその辺り結構万全なんだよな。いつぞやの紫色の水晶みたいな梱包塗料がすごい高性能かつ使い勝手が良くて、あの梱包塗料のバリエーションすら開発できていないくらいだ。一つの技術に頼りすぎるのは先々の脆弱性が危ないので一強というのは改善したい所存。


 だが、しかし。そもそも、あれを研究してる人が≪金剛城(こんごうじょう)≫にもういないっぽいんだから応用技術とか新しく作られるはずもないよねーという根本的問題。


 ≪金剛城(こんごうじょう)≫でそういう研究とかやってるのは基本的にムチムチ美人さんとか元レディアマゾネスSPさん達だ。

 ギフト化幼馴染殿や俺は言うまでもなくそんな頭の良い活動はできない。

 旧エルフ星出身者の駐在エルフさん含むエルフ四姉妹と奉仕系家系三人組は、頭は良いけどそういう方向性の頭の使い方には興味がない。

 帝国皇女さん達は≪金剛城(こんごうじょう)≫に慣れて対外折衝関係で自分たちの立ち位置を確保しようといっぱいいっぱい。


 帝国皇女さん達が≪金剛城(こんごうじょう)≫へ来て十年以上経っても日々いっぱいいっぱいなのは、次々に彼女達の常識外の出来事が頻発するからなのでおかしくない。彼女達含む俺と同じ帝国出身者の普通においては恒星や惑星を人工的に作ったりはしないし、その管理を雑に任されたりもしない。悪いのは俺だった。


 俺のことは脇において、ムチムチ美人さんウィズ元レディアマゾネスSPさん達は研究者って気質ではなく、自分にとっての未知を既知に変えたいって人達だ。自分の手で新しいものを発見したり解明したい訳ではなく、知らないものを知って理解したら満足する。

 だから、≪金剛城(こんごうじょう)≫のデータベースで知らないものを見つけると、資料を読み込んで満足することもあるし、ちょっと実証実験して満足することもあるし、更に踏み込んで応用して何かを作ってみて満足ってこともある。


 コンクリートに関して研究を続けて、既存のコンクリートの改善点を見つけたり、様々な用途に特化した新しいコンクリートを何種類も開発したりって言うようなことをやる人は≪金剛城(こんごうじょう)≫に居ない。

 出身ハビタットで運送業をやってた頃に、研究資料として数百種類のコンクリートを運んだことがある所為で研究者と言えばああいう人だって印象が強いものの、たぶんそんなに間違ってないはず。


 つまり、研究者気質の人が居ない≪金剛城(こんごうじょう)≫において、関わってた人達が弄りまわすのにすでに満足しているならば、水晶みたいな見た目の紫色の梱包材が今後再び研究対象とされる可能性は低い。他にやることなくなったら二週目始めるか的なノリでまたオモチャにされることはあり得る。


 ぼうっと流れるままに考え事してたら、顔すら覚えてなかったギフテッドの人からずいぶん意識が離れちゃってる。手元の資料にもう一回集中しよう。ああ、でも気づかないうちに始められていた悪そうな顔でフォークぺろぺろしてた子と奉仕過激派系の子による全身マッサージがやばいくらい気持ちよくて寝ちゃいそう。べつに資料読むの今じゃなくて良い気もしてきた。


 ひと眠りしてすっきり。さて顔すら覚えてなかったギフテッドの人の資料に目を通そう。


 所有してるギフトに関しては見たんだったかな。次は、ギフテッドってことで帝国から派遣された警護なんかも兼ねた人員に関して。より正確には、性的指向と性的嗜好。

 端的にまとめると、いつぞやムチムチ美人さんが言っていた通り、派遣された美男美女に囲まれていた彼女は男女どっちもイケる女性だが、根本的な問題として生身の人種(ヒトしゅ)は無理らしい。無機質美人のホログラムと性的指向の方向性が似てる。


 生身の男女は性的指向の枠外なので警護や諸手続きのお手伝いさんの派遣は断っていたが、俺の時とはまた違う感じの馬鹿がまた違う感じに馬鹿やらかして顔すら覚えてなかったギフテッドの人のデータが流出した。その結果として、直接的に身を守るにはもう自分の船から降りないのが確実くらい追い込まれて、立ち寄ったステーションやハビタットではその都度派遣された護衛チームを仕方なく頼っていた。

 帝国皇女リーダーさんに庇護されてからは、その後の帝国首脳部のゴタゴタまで短い間だが気を抜いて生活できるようになったので帝国皇女リーダーさんにとても感謝している。

 うーん……大変だったんだなぁ。


 次の見どころはギフトを使った時のエピソードかな。絡んできた傭兵が所有する微弱重力場発生浮標の所有権を書き換えて大損こかせたりした話とかちょっと面白い。

 微弱重力場発生浮標は知らない単語だが、注釈がついてるので理解できた。極小範囲に微弱な重力場を発生させることで宇宙空間において浮漂周囲の物体の拡散を防ぐ機器だった。なんか、遥か昔に宙賊を撃沈したらどうするかを教わった時に話に出てきてた気がする。気がするだけであって知らない単語だったと主張したい。


 ま、昔の話はさておき、この微弱重力場発生浮標を宇宙の一定範囲にバラまいて所有権を書き換える陣取り合戦みたいなゲームをちょっと考えてみよう。

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