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なんかすごい性能の宇宙船を拾った  作者: 工具
04_Indestructible-Fortress

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04-06

 金剛帝国建国について皆がそんなに押してくるなら、まあそれはそれで良いかとオーケーを出した。あとはやりたい人に丸投げ。だって建国とかどうしたら良いか分かんないし……。


 そんな訳でちょっと≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーの皆さんが心無し忙しそうにしている。ウキウキしてるようにも見えるので悪いことではないだろう。

 俺はいつもと変わらず、大部分の複製身体と本体はパートナーな皆の内誰かと一緒に居て、フリーの複製身体は≪金剛城(こんごうじょう)≫をフラフラさせている。


 今通路ですれ違って軽くお辞儀した人誰だったんだろう。全員の名前は怪しいものの、帝国皇女さん達も含めて≪金剛城(こんごうじょう)≫に居る人は顔はちゃんと覚えてるつもりなんだけど。

 とうとう不正侵入者が≪金剛城(こんごうじょう)≫へもやって来たんだろうか――という冗談はさておき、建国どうこう関連で外の人がちょっと来てるとかそんなんでしょ。セキュリティ的に一般的悪人が≪金剛城(こんごうじょう)≫に侵入できるとも思えない。逆に≪金剛城(こんごうじょう)≫に無断侵入できるほどの人ならどうにもならないんじゃないかな。次に遭遇した誰かに話題提供がてら一応聞いてみよう。


「外から人を入れたなんて話あったかな」


 一人目。しなやかスレンダーさんは知らなかった。しなやかスレンダーさんをお供にフラフラと≪金剛城(こんごうじょう)≫を行く。しなやかスレンダーさんがくれた肉チップがポリポリと楽しい食感で美味しい。


「外の人? 知らないかな」


 二人目。ぎしゃーさんも知らなかった。ぎしゃーさんをお供に加えてフラフラと≪金剛城(こんごうじょう)≫を行く。ぎしゃーさんがそっとくれたこのジャーキーがブチッと噛み千切るとスッと抜ける爽やかな風味で美味しい。


「外から人が来ているかですか。ちょっと覚えがありません。でもここにいる誰も知らないなら万が一があり得るので、調べてみましょう」


 三人目。苦労人ぽい三女エルフさんも知らなかったが、≪金剛城(こんごうじょう)≫のイントラネットに接続してその場で調べ始めてくれた。

 ついでにくれた野菜クッキーが美味しい。と思ったらびっくりするくらい甘いのが混ざっていて、ビクッとして笑われてしまった。びっくりするくらい甘いのに、クッキーの材料に甘味を目的としたものはないそうだ。材料の野菜を機械的知性が持ってきてくれてそのまま食べたけど、そのままだと大して甘くないのにまたびっくりした。料理の過程で一工夫するとさっき食べたクッキーみたいにびっくりするくらい甘くなるとのこと。世の中は不思議がいっぱいだ。


 しなやかスレンダーさんが対抗心を燃やしてどこからか用意した蜜焼きとかいう何かの蜜がかかった肉の塊を皆で切り分けて食べたり、ぎしゃーさんが当人の好みで用意したスパイシーな肉の塊を皆で削いで食べたり、苦労人ぽい三女エルフさんには他三人で食べさせて調べるのを応援した。床に座り込んで飲み食いしてるここは通路のど真ん中なんですけどね。


「うぅん……電子的な――機械的知性さん達の記憶も含めて電子的な記録だと、現在≪金剛城(こんごうじょう)≫内に居るのはクルーのみですね。もし知らない人が入り込んでいるなら本格的にマズイのでは……」


 苦労人ぽい三女エルフさんの顔が心なしか青白い。調べた結果が理由なのか、それを聞いたしなやかスレンダーさんとぎしゃーさんがものすごく久しぶりにレディアマゾネスって感じの武闘派な空気をまとったからか。


 何はともあれ、いざというときに備えてクルー全員が乗れる緊急脱出船と≪金剛城(こんごうじょう)≫の自爆をスタンバイさせておこう。≪金剛城(こんごうじょう)≫の出入管理とか監視のシステムで検知できない侵入者なんて、どれくらいヤバイのかも分かんないくらいヤバイもんね。

 最悪は≪金剛城(こんごうじょう)≫を失うことになってもクルーの生命を最優先に、次点でクルーの未来が大事だ。現時点でもどれくらいヤバイのかも分かんないくらいヤバイ人が≪金剛城(こんごうじょう)≫を自由にできるとなったら恐ろしいことこの上ない。


 そんなこんなで、今までは訓練でしか使われたことのないカモフラージュ艦内放送で≪金剛城(こんごうじょう)≫クルーを緊急招集することになった。

 しっかり集まっているかとクルーの面々を見渡すと、知らない顔の人が居た。なんでぇ……。どこに集まるか以前に、そもそもクルーに集まるよう呼びかけてることすら分からない内容の艦内放送だったのに、なんであの人ここにいるのぉ……。


 どうしたものか俺では判断できないので、近くに居た苦労人ぽい三女エルフさんにそっと例の侵入者が居ると伝える。苦労人ぽい三女エルフさんがその人物を確認して――緊急時警戒態勢を解除する宣言がなされた。

 ふむ……。つまり、俺があの人の顔を覚えてなかっただけで、あの人は≪金剛城(こんごうじょう)≫のクルーだったというオチかな。


「人騒がせだね」


 レディアマゾネスな雰囲気がなくなったしなやかスレンダーさんにほっぺをウリウリされた。穴が開きそうなほどでもないのであんまり怒ってない様子。


「みんな集まったし、バーベキューでもしよう。良いかな?」


 レディアマゾネスな雰囲気がなくなり、恥ずかし気にもじもじする肉食系女子なぎしゃーさん。ええ、はい。俺の勘違いで強引に集めちゃったんで、参加できない人はできないで無理させないように気を付けてください。


「あの……これ、えーっと……例の人のクルーIDです……」


 ものすごく気まずそうな苦労人ぽい三女エルフさんからデータを貰った。


「あと、そのですね、私も今更気づいたんですけど」


 ものすごく言い難そうな苦労人ぽい三女エルフさん曰く、いざという時の≪金剛城(こんごうじょう)≫の扱いも含めて、無機質美人のホログラムを頼ったらすぐに決着していたのではないかとのこと。

 それはね、そうね。俺は普段の何も考えてない状態から想像もしてなかった危険性を唐突に認識して、その所為で一気に危機レベルを引き上げられて何も考えてない普段並みに思考能力が低下してたから、そんな当たり前のこと全く思い浮かばなかったわ。普段思考能力ゼロで緊急時も思考能力ゼロとか、俺は一体どのタイミングで思考能力が稼働するのか自分のことながらちょっと疑問を覚えた。


 あれだ。今回の一件は避難訓練の一環だと思おう。結果的にそういうことになったと皆に言い訳したら、まあ無駄ではなかったよねで納得してもらえた。皆、心が広いな。


 バーベキューが始まるまでちょっと時間があいている。今回は全面的に俺が悪いと自覚があるし、さっき苦労人ぽい三女エルフさんがくれたデータに目を通しておこう。

 へぇ。あの人、帝国皇女さん達と一緒に≪金剛城(こんごうじょう)≫へ来たけど、その集団の中で唯一帝国の皇女ではなかったらしい。帝国生まれのギフテッドだとか。書いてある内容にどことなく既視感を覚えていたら、遥か昔にムチムチ美人さんがちょっと話してたギフテッドの人だった。今まで俺と対面した際は帝国皇女さん達の後ろにガンバって隠れるようにしていたとのこと。うむ。今回の件は俺だけが悪いわけじゃなかった。責任は俺と折半してもらおう。

 略歴とか自己アピールとかの項目がちょっと面白かった。今度ちゃんと話してみようかな。

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