01-11
事前に約束していた日時にムチムチ美人さんとレディアマゾネスSPさん達一行が≪海老介≫にやって来た。
本当に一緒に深宇宙の探索するのか。
事前に荷物預かってる以上このタイミングで冗談でしたはないと分かってたけど、実感と一緒になんかよく分からない不安も込み上げてきた。
とはいえそんなものは≪海老介≫に初めて入って内装見てきゃーきゃー楽しそうにしてる女性陣を眺めてたらすぐにどこか消えていった。
巡洋艦だけあって俺含めて12人が生活してもまったく窮屈には感じない≪海老介≫で数日移動し、いよいよ≪金剛城≫をお披露目と気合を入れたら―
え?
あれアステロイドじゃなくて建造物なの?
本当に?
なんで擬装してるの?
擬装じゃないの?
頭大丈夫?
って表情を向けられた。
うん。当然の反応だった。
でもデザインの元にしたデータを見せたら、皆納得できなくはないという顔になったので俺の頭はおかしくない。センスがないだけだ。
≪金剛城≫の女性用居住スペースを案内したりそれぞれの侍女アンドロイドを登録してるうちに皆がなんかもにょもにょした表情になっていったり、じゃあとりあえず俺は当面ドックに収容した≪海老介≫に居るからと伝えたら珍獣を見るような視線を向けられたものの結局何も言われなかった。
もしかして俺の船に乗ったんだからお前らで酒池肉林だーとか言うと思われてたり……。
そんなこと言う人間性じゃないって分かる程度には信頼関係を構築できてるつもりだったんだがそうでもなかったりするのか。
へこむ。
あの視線に特に深い意味はなかったと思っておこう。
≪海老介≫に戻ってすぐ≪金剛城≫のコントロールシステムにつなぎ、わざわざ用意した超高精度のサイコロを振って雑に決めた方向の深宇宙へワープし巡航速度で発進させた。
各種センサーで周囲の宙域のデータを取得しながらなので最高速にはほど遠いのに光速の数万倍の速度で亜次元を航行するのだから凄まじい技術だ。
現行技術では亜次元から観測する手段がそもそも存在しないうえに光速で宙域の詳細なデータを収集するなんてできない。
トゥルーギフトに対して行政があんなに神経質になるのも当然だ。
しかし≪海老介≫の技術を使用したと言っても建造したのが俺であることに違いはない≪金剛城≫もトゥルーギフトということになるのだろうか。
ムチムチ美人さんと顔を合わせた時に思い出したら聞いてみよう。
特に目に着くものもなく深宇宙を人類の活動圏から遠ざかる方向へ進み続け、ムチムチ美人さんにちょいちょい呼ばれては一緒にご飯を食べたり≪金剛城≫の中を探索したりする日々は平穏そのものだ。
問題らしい問題はなく、強いて言えば航行時の周辺状況をホロウィンドウで眺めると、広大な宇宙を≪金剛城≫だけがポツンと進んでいるのは見た目的にさみしいのでその内収容してる船を展開させて艦隊行動とかやってもいいかもしれない。
ムチムチ美人さんもレディアマゾネスSPさん達も何かから解放されたように≪金剛城≫を満喫している。楽しんでもらえているようで何よりだ。
本来目的としていていた深宇宙探索とはほぼ無関係の部分で楽しんで居るが、まあきっと楽しければそれが正しい。
深宇宙の航行が3ヶ月ほども経てばムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達も溜め込んだストレスをある程度発散できたようで、持ち出せる限り持ち出したという表現が適切なデータ量のデータベースに目を通したり、≪金剛城≫に乗ってからは抑え気味だったらしいトレーニングの密度を上げたりとそれぞれの本来の日課を再開している。
あとは息抜きに≪金剛城≫のアステロイド擬きの表層を改善するべくあれこれとデザインしていたり、≪金剛城≫の目玉の一つである食料生産プラントで生育した各種食材で≪金剛城≫に乗って初めて経験したという料理に果敢に挑戦していたりする。
≪金剛城≫の食料生産プラントは何の変哲もない生成プラントと、超高コストで名高い生育プラントがある。
わざわざ植物なり動物を生育するなど惑星を領有するほどの貴族やその貴族と対等にやりあう上流階級でもなければ食べようとも思わない無駄の塊とあって、ムチムチ美人さんやレディアマゾネスSPさん達と一緒に生育された食材を使った料理を食べて意味もなく馬鹿笑いしたのはとてもいい思い出になるだろう。
既にいい思い出になっている。
そんな生育食材を食べて何人かが料理という趣味に目覚めたのは多分良いことだ。
摂取栄養素はそれぞれがサプリメントで整えるので作りたいものを作って欲しいし、趣味は非生産的であれば非生産的であるほど良いと言うつもりはないが≪金剛城≫で過ごす間くらい細かいことは忘れて楽しんでもらいたい。
クレジットに困ったら≪金剛城≫のプラントで何か作って売ればいい。それこそ生育食材とか。
トゥルーギフトの技術で作った食材とか言って売り出せば高く売れそう。




