03B-05(02-01~02-05)
02-01
旧エルフ星回復プロジェクトを進めつつのんびりとした時間を過ごすことに異論はなかった。
ただなんだか青年が日増しに老け込んでいくように見えたので、青年のまだ見たことないものがある場所に遠出するよう勧めてみたり、丁度良いタイミングで開くワームホールに接続口を繋いで旧エルフ星回復プロジェクトに有用なギフトを贈ったり、穏やかな日々が平坦過ぎないように配慮してみた。
正直、青年に何か贈るというそれだけで満たされるものがあるので自制するのが大変だ。
お姉ちゃんにあんまり貢ぐと飽きられるといわれなかったら危なかったかもしれない。
私が自分の欲求と戦っている間に旧エルフ星回復プロジェクトは完了し、区切りがついたということで青年が≪金剛城≫のクルーを集めてやりたいことはないかと意見を募った。
軽く皆の頭の中を覗いた感じ、特にこれと言って要望が上がる様子はなかったので私から1つ提案してみることにした。
ワームホールの向こう側に関して≪金剛城≫のクルーの皆はあまり知らない。この機会にちょっと調べてみるのはどうだろう。
≪金剛城≫の統括管理AIということになってる私が自主的にそんなことを言うのではなく、皆が私の後ろにいると推測しギフターと呼ぶ存在からの伝言という体をとっておいた。
私の提案はなかったことにされてしまったが、案の定幼馴染ちゃんがうっかりフラグを建築してくれたのでもちろん私は期待に応える。
なによりそんな一件があってすぐ近場にワームホールが開くんだから、きっと青年は運命に愛されているよね。
さ、未知を探索しようじゃないか。
02-02~02-05
私が提案した通りにワームホールの調査に乗り出してくれたのは嬉しいが、最初のところを除いて往復可能なところへ繋がっていないワームホールしか自然発生せずちょっと困ってしまった。
次元を超えて任意の空間同士を繋ぐワームホールを開けるには真っ当な理由が必要だ。あと手続きがちょっと面倒臭い。
同じ次元内のワームホールなら、この次元へ意識体を送り込む前に私が取得していた資格で好きに開ける。でもそんなものとっくの前にギフトで青年にあげちゃってるんだよね。いや、設計図のデータだけあげたんだったかな。
自然発生のワームホールが安全なところにつながるよう願いつつ、皆の気持ちが冷めるようなら安全なところに通じるワームホールを開く許可を申請しよう。
現地の恋人や家族と遊ぶのに開きたいって理由じゃ多分許可は下りないよね。何か理由を考えないと。
この次元におけるタイムスケールにもすっかり慣れた私なので、半年経ったくらいでそろそろ事態の打開に動こうかなと一度思案した。
でもなんか皆、だらだらしながらワームホールの調査にはなかなか前向きな姿勢のままだし、急いで結果を得ようと無茶をする様子もないし、とりあえずそのまま経過観察を決めた。
そんなこんなで1年も進展がないままとは驚きだ。
私がワームホールの調査をしようと誘導したというのに、≪金剛城≫クルーの皆には悪いことしてしまった。
青年のうんめいちからに丸投げする無計画は今後しません。
だが、逆を言えば青年のうんめいちからは、今になるまで調査を進展させる必要はないと言っていたと捉えることもできるのでは?
新しい切り口の可能性を見出した途端、幼馴染ちゃんにじとーっと見つめられてることに気づき、流石に責任転嫁はやめました。
以後は今回のような雑な見込みで計画を立てないように努力したいと思います。
有機械的知性船の往復実験は何事もなく終わり、お祝いとばかりに用意していた新しいギフトをワームホールを介して放出。
今回のギフトで異次元干渉技術を≪金剛城≫へ持ち込んだので、ワームホールの調査はこれまでより捗るはず。
そもそもこの次元から近しい次元にワームホールが開かないと調査も何もないのは、これからは適当な理由で許可を取って私がワームホールを用意すれば問題ない。
次元を超えて任意の空間同士を繋げるワームホールを開くための許可を申請したり、またあるかもしれない同じような事態に備えて許可申請の手間を減らすべく新しい資格取得に邁進したり、青年のそばで過ごす時間は減ってしまったが自業自得ということでぐっとこらえる。
≪金剛城≫に置いている意識体は暫くスタンドアロンにするしかないのがもどかしい。
≪金剛城≫クルーの皆を一挙に集めた、疑似恒星光のサンルームでのお昼寝会とか私もリアルタイムで参加したかったー。




