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なんかすごい性能の宇宙船を拾った  作者: 工具
03B_本当はAIでもホログラムでもない彼女の日常

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 長かった。本当に長かった。この次元にアジャストした意識体では言語化できない、かろうじて言語化できても微妙に意味合いの変わってしまう、あの資格のあの試験とかあの集中合宿とかあの権利の購入とか様々なものに時間を始めとした様々な対価をつぎ込んで漸くの今この瞬間だ。


 お姉ちゃんや友人達に最初から完璧を求めすぎるのは良くないと言われても、最初に決めたラインを超えるまで考えうる限りのものを積み上げるのはやめなかった。

 一度中途半端なところで妥協してしまえば、現状維持と問題の先送りを重ねて望まぬところで破綻してしまうだろう自分の怠惰な気質くらいは理解できていた。

 だから『わたしのえがく、すてきなれんあい』とでもタイトルを付けられかねない、昔の自分が夢想した将来設計に必要なすべてをかき集めたのだ。


 とりあえずは、息抜きがてらパートナーを探すのとは無関係にギフトを放出してみよう。

 この次元では高位次元からの干渉物体をギフトと呼んだり、高位次元からの干渉者をギフターと呼ぶくらいには高位次元からの物的干渉が幾度も行われており、それらを受け入れられる下地が整っている。

 お姉ちゃんもこの次元に一時期入り浸っていたし、私にこの次元での活動を勧めたのもお姉ちゃんだ。何かあったときに調べてもわからなかったら相談すれば良い。最近は暇してるようなのでちょっとくらいは怒られないだろう。

 もしお姉ちゃんの助力を得られなかったとしても、多少のトラブルや失敗はこれからの未来に出会う恋人との生活に備えた糧となるから苦でもない。


 過去のギフトを参考にしようと確認してみると、予想を大きく外すほど奇抜なものは少なかった。

 宇宙空間に開くワームホールに接続口を紛れ込ませて物品を送る関係か、ちょっとした宇宙船をギフトにしている例が多いようだ。

 珍しいところだと高位次元存在のアバターだろうか。現地住民と恋愛したりしなかったりで子孫を残していたりもする。


 今ではギフトとしての利用を禁止されている物品も過去には放出されている。

 ぱっと目につくもので現在だと重罪になるギフトは3つかな。


 凶暴な宇宙怪獣の成体の群れ。

 玩具のように低性能の次元陥穽開口装置。

 恒星蒸発実験キット。


 私が今居るこの次元においてはいずれも危険物だ。禁止していなかったのは管理機構の不備が原因と断言できる。

 更には持ち込み禁止リストにて指定されていない生物だからといって、現地の環境を著しく破壊する恐れがあるほど凶暴な宇宙怪獣をギフト化するのはギフターの高位次元存在も悪質。明らかな愉快犯か故意犯だ。有人惑星を狙って食べ漁る性質の宇宙怪獣なんて、ダメって言われなくても持ち込んじゃダメだと分かるでしょうに。


 何かおかしいとそのギフト3件が集中している時期を少し調べてみると、低位次元軽視というか高位次元の存在は低位次元において神と呼んで差支えないのだから思うが儘に振る舞うべきとの思想が流行った頃のものだった。

 流行り病のようにたびたび蔓延するこの主義主張は、所詮は私たちも低位次元出身の流れを汲む人でしかないのだと再認識させてくれる。逆に言えばその程度の役にしか立たない性質の悪い風邪だ。私の出身次元では風邪に類する体調不良は技術の発展に伴い駆逐された分、思想の方がより厄介ですらある。でも周期的に言えば次の流行は大分先になるだろう。今は気にしない。


 現地の住人と友好関係を築けそうにないギフトの前例はさておき、逆に私の目的である恋人探しに役立つギフトはどんなものかと参考になりそうなものを探し始める。

 しかし、過去のギフト関連の資料を遡っていく形でじっくり浚ったが、これと言って決め打ちできそうなものがない。

 高位次元存在が低位次元でパートナーを見つけるまでの経緯には類似性を見いだせないし、相手を見つけてからは生活環境を整えるためだったり子孫のためだったりで様々なギフトを持ち込むケースが多い。

 これさえ押さえておけば現地の住人と友好関係を築けると断言できるギフトなど存在しないようだ。無念。


 事前の準備段階でできる限りを尽くした所為か、下手な失敗はしたくない思いが強い。

 同時に、この拘りを捨てられなければ自分は次の一歩を踏み出すまで凄まじく時間をかけてしまう予感がある。

 今、要るのは、思い切りだ。飛ぶか、飛ばないか……みたいな感じ。


 よし。


 ギフトにするなら何が良いかを悩みつつピックアップしていたリストから、ランダムで1つを表示させる。【自律汎用巡洋艦プラウン】だった。

 まあ、悪くないんじゃないかな。各種コンテナ式プラントを用意すれば、これから私が行く次元の宇宙で活動する人が思い浮かべる大体のことはできるはず。拾った人も、これを送った私に悪印象を抱いたりはしないでしょう。

 悪くないどころか良いんじゃないかな。もしかしたらこれを拾う人が私の将来的な恋人って可能性もあるんだし、プレゼントを気に入るってつまり贈り主に惹かれちゃったりもするんじゃないの?


 うん。ギフトとして放出しちゃおう。どこに送るかは目星をつけてたリストからランダムで――


 あ。接続口開くところ間違えた。


 リストからランダムじゃなくて完全にランダムにしちゃった。

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― 新着の感想 ―
PON
[一言] 素でしたか・・・
[一言] オマエノシワザダタノカ というか明らかにぽんこつですねこの人・・・
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