第98話
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放課後になり、俺達は朝と同様チラ配りをする。
や、朝の反応を見たらそれ程効果がないかもしれないけど、こういった地道な活動をおろそかにしていいわけじゃないし。
なお、このチラシ配りには環奈は参加させていない。
顔を売るために環奈も加えるほうが得策かもしれないけど、あいつは生徒会の仕事もあるし、もっと生徒が集まる場……二日後に控えている選挙演説で大々的に顔を売る予定だ。
長岡がそのための仕込みもしてくれてるし、まあ、その時までのお楽しみってことで。
「坂崎環奈をよろしくお願いしまーす!」
向こうのほうでは、優希が一生懸命に叫びながらチラシを配っている。
そして、最も受け取ってもらっているのも彼女だ。
だけど。
「……なんでアイツは手伝ってくれるんだろう」
これまでのこととか、京都での一件を考えたら、俺達に協力する義理はないはずなんだけどなあ。
まあ、杉山のほうにはもっと協力しないだろうけど。
「ま、いいか」
俺はそれ以上気にすることもなく、黙々とチラシ配りに集中した。
で、帰宅する生徒達もまばらになってきたところで。。
「みんなー! そろそろ終わりにしよう!」
俺はチラシ配りしているクラスメイト達全員に聞こえるように大声で叫ぶと、わらわらと俺の元に集まってきた。
「それじゃあ、明日の朝も今日と同じようにチラシ配りをするから、よろしく頼む!」
そう言うと、俺はみんなに深々と頭を下げた。
「オイオイ、俺達は坂崎さんに生徒会長になって欲しくてやってんだから、いちいちお前が頭下げんなよ」
「そうそう、私達は坂崎さんのがんばってる姿、いつも見てるからねー!」
「みんな……」
俺はクラスメイト達の言葉に、思わずウルッとなってしまった。
「よ、よーし! 絶対に環奈を生徒会長にするぞ!」
「「「「「おー!」」」」」
俺達が玄関で気勢を上げていると。
「た、大変だ!」
部活があってチラシ配りに参加できなかったクラスメイトの一人が、俺達の元に慌てて駈け寄ってきた。
「? どうしたんだ?」
「す、杉山の奴、各部活のキャプテンの買収にかかってるぞ!」
「っ!? ど、どういうことだ!?」
クラスメイトは息を切らしながら、かいつまんで説明してくれた。
なんでも、杉山はサッカー部のキャプテンを通じて文書を回したらしい。
その内容というのは、今回の生徒会長選挙で協力してくれた度合……つまり、部員が杉山に入れた人数に応じて、部の活動費を融通するってことだ。
当然、最も杉山に投票した部員が多いところはかなりの額が配分されることになるし、逆に少ないところは当然額も少なくなる。
「ちょ、ちょっと待て! そもそも帳票は無記名なんだから、誰が誰に投票したかなんて分からねーだろ!?」
「そ、そこはキャプテンが部員に聞き取りをして、杉山に報告する形にするらしいけど……」
いやいや、それでもその作戦、穴だらけだろ。
キャプテンや部員が嘘言っても、それを確認する方法もないわけだし、そんなことで上手くいくとは思えねーんだけど。
「だけど、キャプテンは『杉山は確認する方法があるから、嘘ついても分かるって言ってる』って言ってたけど……」
「はあ!?」
や、どうやって確認するってんだよ。
だけど。
「ま、まあ、今は杉山のことは置いといて、とりあえず、俺達ができることをしよう!」
「お、おう、そうだな……」
「それと、杉山の情報、サンキューな!」
「ああ、また何か分かったら、すぐにみんなに教えるから」
うん、俺達の最大の武器はこのチームワークだな。
相変わらず、うちのクラスの連中はノリがいいっていうか、何というか……。
俺はみんなを眺めながら、気がつけば口元を緩めていた。
◇
「まーくんお待たせ」
生徒会の仕事が終わった環奈がクラスに戻ってきた。
まあ、俺も今日はステラには行かずに環奈を待っていたんだけど。
「それで、生徒会のほうは何か動きがあったか?」
「ううん、今日は特になかったかな……あ、そうそう」
思い出したかのように環奈が掌をポン、と叩いた。
「選挙管理委員会のメンバーの一人から、変な提案があったんだよね」
「変な提案?」
環奈の言葉を聞き、俺は妙な胸騒ぎを覚える。
「うん。今年は二人しか立候補者がいないし、あと不正防止のためにってことで、生徒会長選挙は候補者ごとに投票券を色分けしようって。そうすれば、無記名っていうこともないし、無効票もなくなるかららしいんだけど」
「はあ!?」
環奈の説明に、俺は驚きの声を上げた。
「そ、それで、本当に選挙では投票券の色分けするのか?」
「うん……選挙管理委員会では賛成多数で決定したけど……」
「マジかよ……」
やられた。
杉山の奴、あらかじめ選挙管理委員会のメンバーを抱え込んでやがったのか……。
「まーくん……どうしたの?」
「あ、ああ……実は……」
俺はクラスメイトから聞いた、部活動費の配分のことについて環奈に説明した。
「ええ!? そ、それって買収じゃない!」
「まあ……そういうことだ……」
「だ、だけど! そんなの不正だよ! 選挙管理委員会に訴えないと……!
「待て、環奈」
俺は慌てて教室を出ようとしたところを止めた。
「まーくん、何で止めるの!?」
「落ち着け環奈。そもそも選挙管理委員会の委員の一人が投票券の色分けを提案して、それを賛成多数で認めたわけだろ? つまり、その提案した委員だけじゃなくて、何人かは杉山の息が掛かってるんじゃないのか?」
そこまで説明すると環奈も気づいたのか、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「だから、これは訴えても聞いてもらえない可能性が高い」
「…………………………」
環奈は俯いて押し黙る。
「とにかく、ここで俺達二人が悩んでも仕方ない。明日の朝、みんなで対策を考えよう」
「……うん」
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また、本日新作を投稿しました!
「俺の理解者は、神待ちギャルのアイツだけ」
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なお、この「イケメン大学生」は引き続きしっかりと投稿しますのでご安心ください!
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