第96話
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杉山のバカが生徒会長に立候補して一週間。
今日は、生徒会長立候補者の受付締切日だ。
結局、今日まで杉山以外の立候補者は現れず、このままいけば杉山が無投票で生徒会長に選ばれることになるけど……本当に大丈夫か!?
「デュ、デュフフ……これは本格的に杉山生徒会長が誕生しますぞ……」
「おう……こいつは波乱しかないな……」
「ねー……」
佐々木と長岡が、腕組みしながらウンウンと頷き、環奈が肩を落とす。
ま、まあ、俺も環奈も部活とかしてないし、生徒会絡みで影響受けそうなモンはない……はず。
そう思っていた時もありました。
「セ、センパーイ! 大変ですー!」
昼休み終了間際、佐山が俺達の教室に飛び込んできた。
「一体何が大変なんだ?」
俺は息を切らす佐山に尋ねると。
「ハア、ハア……じ、実は……って、センパイ達コッチへ!」
「うおっ!?」
「キャッ!?」
佐山は俺と環奈の腕を引き、教室の外へと連れ出した。
「い、一体なんだよ!?」
「たた、大変なんですよ! ホラこれ!」
「ん? どれどれ……って、なああ!?」
佐山から渡されたものは、杉山の選挙公約……いわゆるマニフェストというやつだ。
そこには、とんでもない一文が掲げられていた。
『学外でアルバイトをする場合、事前に生徒会の許可を得るようにする』
「「はあああああああああ!?」」
俺と環奈は驚きの声を上げる。
「そうなんです! 今日になって急きょ選挙公約の差し替えがあって、その一文が加わってたんです!」
「ア、アノヤロウ……」
こんなの、完全に俺と環奈を狙い撃ちにした内容じゃねえか……。
つまり、俺達がステラでバイトできないようにするための。
「どうする……環奈……?」
俺はチラリ、と環奈の様子を窺うと。
「許せない……」
「……環奈さん?」
「許せない! 自業自得で自分の評判落としたくせに、逆恨みして私達に嫌がらせしてくるなんて! 絶対に許さないんだから!」
「「ヒイイ」」
佐山が持って来た紙をグシャリ、と握りつぶし、鬼の形相でクラスを睨む。
俺と佐山は、そんな環奈を見てただ震えるばかりだ。
「まーくん! 睦月ちゃん!」
「「は、はい!」」
「私、生徒会長に立候補する!」
「「イエス! マム!……って、はあああああああ!?」」
え? え!? 環奈、立候補しちゃうの!?
「あ、あのー……環奈さんや?」
「なあに?」
「あ、い、いえ……何でもないです……」
俺は怒りに満ちた環奈の瞳を見てしまうと、これ以上何も言えなくなってしまった……。
杉山よ、お前は怒らせちゃいけない奴を怒らせてしまった……。
◇
「もう! 本当にヒドイと思いません?」
ステラのバイト中、環奈がハルさんにずっと愚痴を言い続けている。
「え、ええ、そうですね……あははー……」
ハルさんもどう言っていいか分からず、顔を引きつらせながらとりあえず相槌を打っていた。
「ホント、迷惑な話よネー! 正宗クンとカンナちゃんが働けなくなったら、この店終わっちゃうじゃないの!」
なぜか店長が出てきて、環奈の話に同調してプリプリと怒る。
や、店長、需要ないです。
「それより……本当に大丈夫なのか? その、無理してないか?」
俺は改めて環奈に尋ねる。
環奈が副会長になって色々と苦労してたことは知ってるし、生徒会長になるつもりがなかったことも。
なのに、感情的になったとはいえ、そんな嫌な思いを環奈にさせることになるなら、俺は環奈の立候補を取り下げたいとも考えている。
だけど。
「うん……まーくんありがとう……だけど、大丈夫! 私、今回のことでちょっとだけ分かったことがあるんだ」
「分かったこと?」
俺は環奈の言葉の意味が分からず、つい聞き返した。
「うん……私、困った人がいたり、つらい思いをする人がいるんなら、全力で助けてあげたい。あのバカがこんな真似して、それがよく分かったんだ……だって、アイツのせいでまーくんが困ると思ったら許せなくて。だって……私は、まーくんの笑顔を守りたいから」
「っ!」
そう言うと、環奈がニコリ、と微笑む。
俺は、そんあ環奈の笑顔が眩しくて、胸が苦しくて……。
「へえ、さすがカンナちゃんね!」
「そうですね!」
店長とハルさんが環奈を手放しで褒める。
そのお陰で、俺は少しだけ我に返ることができた。
……あのままだったら、俺、間違いなく環奈を抱きしめてたかも……。
「環奈」
「なあに? まーくん?」
環奈がはにかみながら俺の顔を覗き込む。
「任せろ……俺が絶対に、環奈を生徒会長にしてみせるから……!」
「えへへ……うん、私を助けてね?」
「ああ!」
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