第94話
大変お待たせしました!
連載、再開です!
翌日、俺はいつものように環奈と通学する……んだけど……。
ハルさん……今日は出逢わなかった、な。
あんなことがあったから、ひょっとしたらわざと時間をずらしたのかもしれない。
でも、それに少しほっとしている俺がいて。
……俺、最低だな。
「まーくん……」
そんな俺の様子を目ざとく見ていた環奈が、ポツリ、と俺の名を呟き、そして。
――ギュ。
俺の手を、そっと握った。
見ると、環奈は俺の顔を見つめ、ニコリ、と微笑んだ。
「環奈……」
そして俺は、そんな環奈に甘えるかのように、ただ、その手を握り返した。
学校に着き、俺と環奈は教室に入ると。
「堀口氏! た、大変でござるよ!」
「うおっ!?」
突然、長岡の奴が詰め寄ってきて、俺は思わずたじろぐ。
「ど、どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもないでござるよ! なんと、あの杉山氏が生徒会長に立候補したでござるよ!」
「「はあああああああ!?」」
長岡の言葉に、俺と環奈は思わず驚きの声を上げる。
ええ!? や、だって、アイツのクラスでの評価は最悪なのに、当選するわけねーじゃん!?
「多分、堀口氏はこう考えてるでござろう? “受かるわけがない”、と」
「「(コクコク)」」
俺も環奈も、長岡の言葉に全力で頷く。
「ところが、そうでもないでござる。杉山氏はサッカー部のエースで、部活のメンバーや下級生にはまだ人気があるでござるよ」
「ああ……」
確かにそうかもしれないけど、それでも二年の間じゃそれなりに評判落としてるだろうに……。
「それに」
「「それに?」」
意味深に言葉をつなげる長岡に、俺達は聞き返す。
「坂崎氏……今年の生徒会長選挙、まだ一人も立候補者がいないでござるな……?」
「う、うん、そうだけど……」
長岡の問い掛けに、環奈がおずおずと答える。
まてよ? それって……。
「オイオイ!? このまま行ったら、アイツが生徒会長になっちまうじゃねーか!?」
俺はそう叫ぶと、思わず席に座る杉山を見る。
すると杉山の奴、俺達の会話を聞いていたのか、ニヤリ、と口の端を吊り上げた。
「……絶対にアイツ、俺達に意趣返しする未来しか見えねーんだけど……」
「……例えばどんな?」
「おう……俺なら、今回世話になった俺や環奈、坂口さんを生徒会役員に指名するな……」
「ええー……私、絶対にそんなの受けないよ……?」
「だよなあ……だけど、それも含めてだけど、俺達が断ったことによって、あることないこと吹聴するんじゃね? 例えば、『せっかくこの学校を良くするために生徒会長になった俺に、嫌がらせするためにわざと断った』とか」
「「ああー……」」
俺の説明に、がっかりした顔で相槌を打つ環奈と長岡。
「で、さらには生徒会役員にならなかった俺達にとって不利になるような嫌がらせするだろうなあ……例えば、俺達と仲のいい奴が所属する部活だけ、活動費削ったり、来年の文化祭の会場の割り当てでも客も呼べないような場所……まあ、校舎裏とかにされたり……」
「……最悪」
環奈が杉山を睨みつけながら、ポツリ、と呟く。
「まあ、これはあくまで俺の予想だから、実際にアイツがそんな真似するかどうかは知らねーけど」
まあ、するだろ。
そうじゃなかったら、あんな下品な笑い方しねーし。
「はあ……頭痛い」
「デュフフ……」
……面倒だなあ。
◇
――キーンコーン。
放課後になり、俺は帰り支度を始める。
さて……ステラに行かないと。
俺はカバンを持って席を立とうとすると。
「……ん?」
見ると、杉山の奴がニヤニヤしながら同じく帰り支度をしていた環奈の席に近づく。
「あのヤロウ……環奈に一体何の用だよ」
俺は心配になり、環奈の元に駈け寄ろうとすると。
「っ!?」
なぜか長岡と山川が俺を行かせまいとして立ち塞がった。
「お前等……「まあまあ、まずは様子見するでござるよ」」
思わず叫ぼうとしたところで、長岡は暢気に俺を窘める。
「そうそう、むしろこのほうが、上手くいくかもしれないし」
「……どういうことだよ」
「「まあまあ」」
チクショウ、あれ以来すっかり仲良くなりやがって。
とにかく、二人には何か考えがあるようなので、俺も一緒に様子を窺うことにした。
「やあ、坂崎さん」
「……何?」
杉山の登場に、露骨に顔を歪める環奈。
「いや、ね……俺は、君の誤解を解きたいと思って……」
「誤解……?」
杉山の言っていることの意味が分からず、環奈がキョトンとする。
うん、俺にもよく分からん。
「そう……修学旅行でのことは、誤解なんだ。俺はみんなが平等に仲良くなれるように提案したんだけど、みんな勘違いしたらしく……」
頭を掻きながら苦笑する杉山。
や、ほんとコイツ、何言ってるの?
環奈もそうだが、長岡や山川も杉山の言っている意味が理解できず、ポカンとしている。
「それでね? 坂崎さんの誤解を解きたいと思ったのと、俺が生徒会長になったら、副会長として俺を支えてくれないか……そう思って」
「は?」
その言葉に、露骨に顔をしかめる環奈。
「俺を支えてくれる女性は君しかいない。君も、堀口みたいな奴なんかに振り回され……「ふざけるな!」」
杉山の言葉にキレた環奈が、これ以上ないほど怒りの表情で杉山に食って掛かる。
「言うに事欠いて、アンタみたいな人がまーくんのことを悪く言うな!」
「い、いや、そういうつもりじゃ……」
環奈の剣幕に、杉山の奴が思わずたじろぐ。
や、アイツ、本当に何がしたいんだ?
「俺はただ、君のように優秀で素敵な女の子に俺を支えて欲しい、そう思っただけだよ」
「断る!」
おお、ハッキリ宣言したぞ。
「ふう……そうかい、残念だよ……」
そう言うと、杉山がヤレヤレといった表情でかぶりを振った。
「……まあ、後悔しないでね」
それだけを言い残し、杉山はカバンを持って教室を出た。
「結局アイツ、何がしたかったんだ?」
俺は首を傾げながら、今度こそ環奈の元に駈け寄った。
「環奈」
「アイツ、本当に何なの! ……って、まーくん!」
プリプリと怒ってたのも束の間、環奈は俺を見るとはにかんだ。
くう……可愛い。
「とりあえず、アイツのことは忘れてステラに行こうぜ」
「そうだねー……」
「「はあ……」」
俺と環奈は仲良く溜息を吐くと、学校を出てステラに向かった。
お読みいただき、ありがとうございました!
また、お待たせをしてしまい、大変申し訳ありません!
「戦隊ヒロインのこよみさん」の結果が気になってソワソワしてたり、新作書きたい病が出てフラフラしたりと、大分回り道をしてしまいましたが、連載を再開いたします!
ただ、現在公募用に二作品同時に書いていることもあり、とりあえず更新は不定期とさせていただきます。
ですが、「イケメン大学生」は非常に思い入れのある作品ですので、必ず完結させます!保証します!
ですので、これからもどうぞよろしくお願いします!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!




