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第8話

ご覧いただき、ありがとうございます!

 昼休みも終わり、自分の席に戻ると、俺はガックリとうなだれる。


 はあ……チクショウ、あんなくらいで機嫌悪くしやがって。


 大体、俺が誰とRINEしようが自由だろうに……。


 ま、まあ、そうは言っても、このまま機嫌損ねたままってのもアレだから、休み時間になったら環奈の機嫌でも取りにいくか……。


 などと考えていると。


 ——ブブブ。


 アレ? またハルさんから? ……ではなく、今度は環奈だった。


『ステラのイチゴショート奢れ』


 俺は慌てて環奈のほうを見る。


 すると、環奈はベーッと思いきり舌を出していた。


 チクショウ、何で俺がケーキを奢る羽目に……って、ハイ、分かりました。


 はあ……本当に環奈の奴、なんだってあんなにハルさんのこと目の敵にするんだろうか。

 ハルさん、あんなにおしとやかでいい人なのに。


 それにハルさんもハルさんで、昨日環奈に見せたあの表情……。


 ……これは一度、二人の話し合いの場を設けたほうがいいかもしれないな。


 ただし、俺にそんな勇気があれば、の話だけど。


 まあ、とにかく今日は環奈の望み通り、帰りにステラのケーキを奢ってやるか。


 ◇


「おーい環奈、帰るぞー」


 今日の授業が全て終わると、俺は帰り支度をしている環奈に声を掛けた。


「あ、まーくん、今……」

「あ、いたいた! 環奈さーん!」


 すると、俺と環奈の間に割り込むように、一人の女子生徒が環奈の前に駆け込んだ……って、なんだ、一年の“佐山睦月”か。


 コイツ、いつも面倒事を環奈のところに持って来やがるんだよなあ……。


「環奈さん、助けてください! あの生徒会長、また私に無理難題を押し付けてきやがったんですううう!」

「生徒会長が? 一体何を?」

「はいですう! アタシに、明日までに文化祭に向けた企画書を持ってくるようにって、あのクソ会長が!」


 その言葉を聞いた瞬間、環奈が頭を抱えた。


「……ねえ睦月ちゃん。その企画書って、確か会長が夏休み前にあなたに指示を出してたやつだよね……?」

「はい!」


 佐山は能天気にも、元気よく返事をした。


「ああもう! 何でやっておかないのよ! 夏休みの間、いくらでも時間あったでしょ!?」

「てへへ……ホ、ホラ、せっかくの夏休みだから、色々イベントとかがあって……」

「へえ……イベントって?」

「それはもう、コミケとか期間限定のレイドイベントとか……ハイ、ゴメンナサイ……」


 環奈の圧力に屈し、彼女は綺麗に土下座した。


「ハア……仕方ないなあ……まーくんゴメン、今日いけなくなっちゃった……」

「そっか、じゃあまたの機会にするか」

「うん……」


 環奈は見るからに肩を落とす。


 ……何だかちょっとかわいそうになってきたな。


「ハア……じゃあ生徒会室にいくわよ……」

「ヤッター!」


 足取り重く生徒会室に向かう環奈とは対照的に、佐山はゴキゲンな様子でその後をついて行く。


 そして。


「べー!」


 クルリ、と振り返った佐山は、俺に向かって思いきり舌を出した。


 何だアイツ。


 ◇


「ああもうチクショウ! 今日もパーフェクト取れねえええええ!」


 結局、放課後の予定がポッカリと空いた俺は、行きつけのゲーセンで某アイドル育成型リズムゲーの前でガックリと膝をついた。


「なぜだ……! 俺のアイドル達に対するプロデューサーとしての愛が足らないていうのか……!?」


 ならばもう一度……………………あ、財布の中身、残り千円しかねえ。


「くっ! 仕方ない、今日のところは撤退する……!」


 そんな捨て台詞を吐いて、俺はゲーセンを後にする。


「しかし、これで今月は資金難に陥ってしまった……」


 いや、俺も姉ちゃんからは高校生として充分なお小遣いをもらってはいるが、今月はあのリズムゲーに金を使い過ぎた。


 来月分を姉ちゃんに前借り……ムリだ、姉ちゃんが許すはずがねえ。


「となると、バイトかなあ……」


 どうせ帰宅部だし、前々からバイトしたいとは思ってはいたけど、ついついめんどくさくなって、お小遣いだけでやりくりしてたんだよなあ。


「はあ……どっかに綺麗なお姉さんのいる、毎日が楽しくなるようなバイト先ってないかなあ……」


 などとくだらないことを考えながら、俺は駅前にあるケーキ屋『ステラ』を目指す。


 ……まあ、アイツも大変な目に遭ったし、イチゴショートくらい奢ってもバチは当たらんだろう。


 そして、俺はステラの前に到着したんだけど。


「ア、アレ? ステラって、あんなに人気の店だったっけ?」


 ステラの前には行列ができており、多くの女性客で賑わっていた。


 こ、これ、結構待たされそうだな……。


 と思いつつ、俺はそそくさと列に並ぶ。


 け、決して環奈が頑張ってるからとか、環奈のためだとかじゃないんだからな!


 てことで、俺はスマホを弄りながらのんびりと待つ。


 そういや、あれからハルさん、RINE来てないな……。


 やっぱり大学生だから、色々忙しかったりするのかな。

 うちの姉ちゃんも、レポートだのなんだので忙しいっていつも言ってるもんな。


 そんなことを考えていると、どうやら次で店の中に入れるみたいだ。


 しかし……イチゴショート、まだ残ってたらいいけど……。


 俺の前で客が一人退店し、いよいよ俺は店の中に入る。


「いらっしゃいませ」


 …………………………ん?


「って、ハルさん!?」

「え!? 正宗くん!?」


 店に入り俺を出迎えてくれたのは、なぜかウェイター姿のハルさんだった。

お読みいただき、ありがとうございました!


次話は明日の夜投稿予定です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 環奈はイケメン煽りの件で大幅にマイナス抱え込んでいるんだから、ツンデレみたいなのすぐにでも止められないなら勝ち目ないでしょう。 個人的には「初手でミスったけど幼馴染の方も応援したい」と思える…
[良い点] 短編も好きでしたが、連載もいい感じ。 [一言] 更新お待ちしてますわ
[一言] メイドじゃなく…ウェイター姿だと…? 中性的な麗人のメイド姿。うん、宝塚っぽいのしか想像できませんでした(笑)
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