第6話
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※クラスメイトの名前を佐久間→佐々木に修正しました。物語に全く影響ありません。
「正宗くん……おはようございます!」
 
昨日に引き続き、今日もハルさんは最高の笑顔で朝の挨拶をしてくれた。
 
「ハルさん! おはようございます!」
 
ヤベ、テンション上がりすぎて声が上ずった。
 
「フフ、はい。今日も頑張ってくださいね」
「ハ……「ホラホラまーくん、学校遅れるよ!」」
 
そう言うと、環奈は俺の腕にしがみつき、思いきり引っ張る。
 
や、俺まだハルさんと話してるんだけど!?
 
「ええと、今日はいつもより早いですから、まだ授業が始まるまでは少し時間があると思っていたんですが……」
「え、ええと……そ、そう! 私達、朝の当番があるんで! ね! まーくん!」
 
ハルさんの鋭い指摘に、環奈は苦し紛れのウソを吐きやがった。
 
だが……俺はそのウソに全力で乗っからないといけないようだ。
 
なぜかって?
 
環奈が俺の足をグリグリと踏みつけながら、下から覗き込むように俺を睨みつけているからだ。
 
こういう時の環奈の心の内はこうだ。
 
『テメエ、乗らなかったらどうなるか、分かってるだろうな?』
 
そして、どうなるかについては想像に難くない。
 
学校でも一、二を争う美少女の環奈が軽く俺をディスれば、それだけで俺はクラス内カーストの最底辺に叩き落とされることだろう。
 
秋には文化祭、修学旅行と数々のイベントを控えている中、そんなことになれば俺のボッチが確定してしまう!
 
それだけは、断固阻止せねば!
 
「そ、そうそう、そうなんです!」
 
ハルさん、ゴメンナサイ……!
どこぞのボッチで陰キャなラノベ主人公と違い、俺は普通にアオハルを謳歌したいんです!
 
「そ、そうですか……」
 
あああああ……ハルさんがあからさまにしゅん、としちゃってる……。
 
「あ、で、でも、少しくらい……あ、ハイ」
 
環奈よ、分かったから脇腹つねるのはヤメロ。
 
「あ、そ、それでしたら……!」
 
ハルさんが俺にそっと近づき、昨日と同じように襟を直してくれ、そして。
 
制服の胸ポケットにそっと何かを入れた。
 
「そ、それじゃ、いってらっしゃい……」
 
そう言って、ハルさんは少し顔を赤らめながら、少し急ぎ足でその場を立ち去った。
 
……で、環奈さんはなんでそんなに頬を膨らませてるんですかね。
 
◇
 
「よう! 聞いたぞ堀口!」
 
教室に着いた途端、クラスメイトの佐々木が絡んできた。
 
「んあ? 聞いたって何を?」
「何って、あまりにモテなさすぎて、とうとうソッチの世界に旅立ったって話だよ!」
 
コイツ何言ってんだ?
 
「デュフフ、堀口氏が腐海に溺れたと、学校中で持ちきりでござるよ」
 
今度はクラス一……いや、学年一の変態野郎の長岡まで絡んできやがった。
 
「つーかオマエ等、言ってる意味が分かんねーぞ?」
「ほほう? 昨日に続いて今日もイケメン大学生に胸襟つかまれてドキドキだって話だぞ? 女子連中はみんな口をそろえて「尊い」だの「てえてえ」だの連呼してるし」
「何だと!?」
 
そ、そうか! 女子どもはハルさんが女性だってこと知らないから……!
 
「デュフフフ、しかもイケメンに平凡な男子高校生というカップリングだからこそ、なおコントラストがヤバスって言ってたでござる」
「なんで俺しれっとディスられてんの!? つーか長岡、オマエ女子の知り合いいねーのに、なんで女子の会話を知ってんだ?」
「デュフフ……そこはトップシークレットでござる」
 
コイツ……いつか捕まるんじゃないのか?
 
「まあいい……あのハルさんはなあ……あ」
「「?」」
 
俺はハルさんが女性だと二人に教えようとして、思い留まると、二人はキョトンとした表情を浮かべた。
 
アブねえ……そんなこと教えたら、コイツ等がハルさんに迷惑かけること必至だぞ。
佐々木はウザ絡みするだろうし、長岡に至っては下手するとストーカーまでやりかねん。
 
ハルさんを護るためにも、ここは俺だけの秘密ということにしておこう。うん、そうしよう。
 
——キーンコーン。
 
「お、チャイムだ」
 
ということで、今日もつまらない授業が始まった。
 
◇
 
「そういえば……」
 
俺は上の空で数学の授業を受けながら、ふと朝のことを思い出した。
 
確か、胸ポケットに……お、あったぞ。
 
ハルさんが襟を直してくれた時、そっと入れてくれた紙切れ。
 
一体なんなんだろう……。
 
俺は綺麗に折りたたまれた紙切れを開く。
 
「あ、これ……」
 
そこには、RINEのIDが記入されていた。
 
これってもちろん、ハルさんのID、ってことだよな……。
 
俺は誰にも気づかれないようにコッソリとガッツポーズをすると、先生にバレないように早速ポケットからスマホを取り出す。
 
「ええと……」
 
RINEアプリを開き、IDを入力したら検索ボタンをタップすると。
 
「あ……いた」
 
俺はすぐに追加ボタンをタップした。
 
——ブブブ。
 
すると、すぐにRINE通知が来た。
 
「ププ……変なネコのスタンプだなあ」
 
ハルさん、授業中にこんなスタンプ送って来るの、反則ですよ……!
 
俺も早速ハルさんに返事を返す。
 
『これからどうぞよろしくお願いします』
 
——ブブブ。
 
返事が速い!?
 
『こちらこそよろしくお願いします。また、RINE送ってもいいですか?』
 
そんなの決まってる。
 
『ぜひぜひ! お願いします!』
 
あ、チョットがっつきすぎたかな……。
 
——ブブブ。
 
やっぱりすぐに返事が来た。
 
『ありがとうございます! 講義中なので、お昼休みにでもまた送りますね!』
 
ハルさんからはそんなメッセージと、変なネコのスタンプが同時に送られてきた。
 
「昼休み……はは!」
 
このハルさんのメッセージだけで、俺は退屈な午前の授業が乗り越えられそうな気分になった。
お読みいただき、ありがとうございました!
次話は明日の夜投稿予定です!
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