表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/108

第55話 坂崎環奈③

ご覧いただき、ありがとうございます!

■坂崎環奈視点


「か、環奈……もう家だから、その……」


 学校を早退した私達は、まーくんの家まで目と鼻の先のところまで来た。


 すると、遠慮しているのか、それとも、一人になりたいのか分からないけど、遠回しにここで解散しようとまーくんが提案する。


 だけど。


「今日はまーくんと一緒にいる。少なくとも、羽弥さんが家に帰ってくるまでは」


 私は絶対にまーくんの傍を離れるつもりはない。

 だって……だって、まーくんはこれ以上ないほど傷ついているはずだから。


「だ、大丈夫だって……」

「大丈夫じゃない!」


 なおもまーくんは私に心配かけまいと気丈に振る舞おうとするけど、そんな気遣い、私は絶対に受け入れはしない。


「私は! ……私は、まーくんの傍にいるから! まーくんの傍から絶対離れないから!」

「環奈……」

「わ、私は、アイツなんかとは違うんだから! 私は……私は……!」


 私はアイツの……優希のしたことを思い出し、お腹の底から声を出して叫ぶ。


 だけど、感情が高ぶり過ぎて、うまく言葉が続かない。


 あんな奴、まーくんの中から消え去ればいい!

 私なら、絶対にまーくんを突き放したりしない!

 私なら……私なら、まーくんとずっと一緒にいるんだから!


 そう言いたいのに、そう叫びたいのに……!


 私はそう言えないもどかしさに、思わず自分の胸襟をギュ、と握る。


「環奈……ありが、とう……」


 すると、まーくんは私に感謝の言葉を伝えながら、その瞳からまた涙がこぼれる。


「まーくん……おうちに帰ろ?」

「ん……」


 私はまーくんの身体を支え、まーくんの家へと帰った。


 ◇


 もうお昼が過ぎた頃だろうか。


 家に帰ってからずっと、まーくんはリビングのソファーで俯いたまま座っている。


 何とかしてまーくんを元気づけてあげたい。

 何とかして、笑顔が素敵ないつものまーくんに戻って欲しい……。


 ……そうだ!


「まーくん、冷蔵庫借りるね!」

「え? ……あ、ああ……」


 私の言葉にまーくんがキョトンとした表情を浮かべ、気の抜けた返事をした。


 まーくんの了解も得た私は、早速冷蔵庫を開けると……ええと、ネギに卵に……あと、鶏肉かあ……。思ったより食材がなかった。

 冷凍庫は……冷凍されたご飯が二つ……。


 うーん、せっかくまーくんに元気になってもらおうと、美味しいお昼ご飯を作ろうと思ったんだけど……あ、でも、まーくんも気分がそれほどすぐれないだろうから、優しめのほうがいいか。


 ピン、ときた私は、食材を冷蔵庫から取り出す、


 ええと……まず電子レンジでごはんをチンして解凍する。

 鶏肉は一口大に切って、ネギはみじん切りに。


 お水を入れた土鍋に火をかけ、そこに鶏肉と顆粒だし、そして、鶏がらスープの素を投入。


 鶏肉にしっかり火が通ったら、チンしたごはんとネギを入れて、塩で味を整えて、と。


「……あれ? いい匂い……」


 リビングからまーくんの声が聞こえる。

 どうやら私の作るお昼ご飯の匂いに反応してくれたみたい。やった。


 土鍋を軽く一煮立ちさせたら溶いた卵を流し入れて、箸でグルグルとかき混ぜる。


 うん! 玉子と鶏の雑炊の完成!


「まーくん、ご飯だよ!」


 私はそう叫び、土鍋をリビングへと持っていく。


「環奈、これ……」

「えへへ……簡単だけど、玉子と鶏の雑炊を作ってみました」


 嬉しい。


 まーくんが反応してくれた。


 心なしか、まーくんの顔色も少しだけ戻ったみたい。


「はい、まーくん」


 私は土鍋の雑炊を器によそい、箸と一緒にまーくんへと差し出すと、まーくんは少し戸惑いながらもおずおずと手を伸ばし、器と箸を受け取る。


「じゃあ食べよ? いただきます!」


 私は努めて明るい声で食事の挨拶をすると、息を吹きかけて冷ましながら、雑炊を口に含む。


 うん、味は悪くない。


 まーくんの反応は……?


「あ……美味い……」


 良かった!


 ポツリ、と呟いたまーくんの言葉に、私は心の中でガッツポーズした。


 それからまーくんは無言ながらも、ゆっくりと雑炊を口に放り込んでいく。


 ……うん、これならもう大丈夫、かな。


 私はそんなまーくんの様子を眺めながら、ホッと安堵した。


「……ごちそうさま」

「ごちそうさまでした」


 私とまーくんは雑炊を完食した。


 ご飯を食べた直後というのもあるが、まーくんの頬はほんのり赤くなっていて、顔色も大分良くなった。


「じゃあ、片づけるね」


 私はまーくんの器を回収し、土鍋と一緒にキッチンへ運ぼうとすると。


「……環奈」

「……ん?」

「その……ありがとう……環奈がいてくれて、良かった……」

「ん……」


 私は振り返ることなく、食器類を運ぶ。


 だけど、そんなまーくんの言葉を聞いて、思わず涙がこぼれたのは内緒だ。


 まーくん……私はずっと、まーくんの傍にいるよ?

お読みいただき、ありがとうございました!


次話は今日の夜投稿予定です!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 環奈がメインヒロインしているーーー!! これはちょっとわからなくなってきましたね。頑張ってほしいです。 [一言] 新キャラが何をしたのか……こわいなぁと思いながらも更新たのしみにしておりま…
[一言] 幼馴染の女の子の手作りご飯…… お……いし…そ………う……_:(´ཀ`」 ∠):
[一言] 環奈さん、よく言えばナイス嫁。悪く言えば重い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ