第49話
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「ふう……」
後夜祭も中盤に差し掛かり、グラウンドで大盛り上がりを見せる中、俺は校門の前に立っていた。
環奈は生徒会の仕事に戻り、今も本部で一生懸命がんばっているはずだ。
で、俺は校門前で何をしているかというと。
——ピコン。
『あと五分で着きます』
スマホ画面に表示されているのは、ハルさんからのメッセージ。
文化祭の打ち上げは、日を改めてするっていうのは決めたけど、やっぱり俺はハルさんに後夜祭も楽しんでもらいたくて、お誘いのRINEメッセージを送ったのだ。
で、その返事がこれ。
「あと五分かー」
などと呟いていると、道の向こうから手を振りながら駆け足でやって来るハルさんの姿が見えた。
「正宗くーん!」
「ハ、ハルさん!」
そして、校門前に到着したハルさんは息を切らしながら俯く。
「ハ、ハルさん、そんな急いで来なくても……」
「ハア、ハア……ふふ、正宗くんからのお誘いのメッセージが嬉しくて、つい慌ててきちゃいました」
そう言うと、ハルさんは顔を上げてニコリ、と微笑んだ。
あう……ハルさんの笑顔、すごく可愛い……。
「ハア……あ、そ、それで、後夜祭を一緒にってことですけど、部外者の私が入っても大丈夫なんでしょうか……?」
「あ、うん、それはまあ……」
「?」
俺の返事に、ハルさんが不思議そうな表情を浮かべる。
まあ、そうなるわな。
「まあまあ、それよりハルさん、もう息は苦しくないですか?」
「あ、はい、もう大丈夫です」
「良かった。それじゃ、行きましょうか」
「ええと、グラウンドに、ですか?」
「いえ、“特等席”に」
「“特等席”?」
やっぱりハルさんは訳が分からないといった表情で俺を見つめる。
「はは、行ってからのお楽しみってことで」
「は、はあ……」
ということで、俺とハルさんはその“特等席”へと向かうため校舎の中へと入る。
俺はスマホのライトをつけ、ハルさんを目的の場所へと誘導する。
そして。
「うわあ……!」
「特等席へようこそ」
連れてきた場所は、学校の屋上。
ここからは、赤々と燃えるキャンプファイヤーとそれを楽しそうに囲む生徒達の姿が見える。
そして俺達の耳には、少し音量が小さめのフォークダンスの音楽が流れている。
「正宗くん、その、こんな時間に屋上に来ても大丈夫なものなんですか?」
「はは、実は用務員のオッチャンと仲良くなりまして」
環奈に付き合って文化祭の準備をして帰りが遅くなり、生徒会室の鍵を返しに行った時に何だか分からないけど、用務員のオッチャンが俺のこと気に入ったんだよね。うん、いまだに謎だ。
まあ、そのおかげで、環奈を生徒会から抜けさせるために用意した鍵の返却記録をコピーさせてもらったり、今日も屋上の鍵を特別に貸してもらったりできたわけだけど。
「そうなんですね……」
ハルさんがなぜだか関心するようにウンウンと頷く。
「まあそういう訳で、この屋上は俺とハルさんの貸し切りです」
「うふふ……なんだか楽しいですね」
うわあ、はにかむハルさん、可愛いなあ……。
お、ちょうど曲が終わったところだぞ。
俺はスッとハルさんに右手を差し出す。
「ではハルお嬢様、僕と一緒に踊っていただけますか?」
「うふふ、はい」
そう言って、ハルさんは俺の手を取り、身体を寄せる。
「……なんて気取ってみましたけど、俺、フォークダンスはからっきしです……」
「ふふ、じゃあ私が正宗くんをリードしますね」
そして、曲がスタートする。
「ふふ、右手はこちら、脚運びはこうですね」
「は、はい」
俺はハルさんの身体の動きに合わせながら、見よう見まねでなんとかついて行く。
「ふふ、正宗くん上手ですよ?」
「ほ、本当ですか?」
「ええ!」
コレ、俺が上手というか、ハルさんのリードが上手いんだよなあ。
ハルさんが次の動きに合わせて、誘導するように手を引いたりしてくれているから。
心に少しだけ余裕が生まれた俺は、ハルさんの顔を見る。
「ふふ、あはは!」
月明りに照らされて楽しそうに笑うハルさんの顔は、遠くのキャンプファイヤーの明かりとも相まって、すごく幻想的で、透き通るようで、そして、とても綺麗で……。
そんなハルさんに見とれていると。
「あっ!」
俺は思わずつまづいてしまい、ハルさんにもたれかかってしまう。
あ……ハルさんの、優しくて甘い匂い……。
「ハルさん……」
「あ……正宗、くん……」
ハルさんの頬は少し赤く染まっていて、俺を見つめる瞳は潤んでいた。
ハルさん……俺……。
その時。
「ウプッ!?」
「っ!? 正宗くん!?」
「ウ……オエエエエエエエエ!?」
俺はその場にひざまずき、そして……盛大に吐いた。
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次話は今日の夜投稿予定です!
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